生活系一般廃棄物の無許可業者への委託の罰

2016年11月14日付 NHK 「2億円余売り上げか 家電製品無許可収集で逮捕

不要になった家庭用の電化製品を無許可で引き取っていたなどとして、神奈川県の自営業者らが逮捕され、警視庁は、違法な収集を繰り返しおよそ2億4000万円を売り上げていたと見て調べています。

逮捕されたのは、神奈川県大和市の自営業B容疑者(28)と51歳の元従業員で、警視庁によりますと、必要な自治体の許可を受けずに、東京・板橋区の女性から冷蔵庫1台を引き取り代金として6500円を受け取ったなどとして、廃棄物処理法違反の疑いが持たれています。

B容疑者は、従業員に会社や住宅にチラシを投かんさせるなどして廃品を引き取りますと宣伝し、集めたものは、リサイクルショップなどに売りさばき、利益を得ていたということです。調べに対して、B容疑者は容疑を認めているということで、警視庁は、従業員を使って違法な収集を繰り返し代金として、ことし3月までの3年余りでおよそ2億4000万円を売り上げていたと見て調べています。

事件自体はありふれた無許可営業事件です。

冷蔵庫の製造メーカーによって料金の詳細は異なりますが、冷蔵庫1台が6500円というのは、正規の家電リサイクル処理料金よりも若干高い金額です。

冷蔵庫の引取料のみならず、トラックへの積込み費用といった諸々の経費を上乗せし、10万円程度の請求を行うようなモグリ業者と比べると、良心的な(?)無許可業者だったのかもしれません。

もちろん、一般廃棄物収集運搬業の許可を持たずに、一般廃棄物の運搬を行うこと自体が犯罪ですので、良心的か否かは重要な要素ではありません。

さて、産業廃棄物の処理委託手続きに日々注意を振り向けている方の場合、産業廃棄物に関しては、「無許可業者への処理委託」が重罪であることは既にご存じのとおりですが、
今回の報道でいうところの、東京板橋区在住の女性は、「無許可業者への委託をした」として刑事罰の対象になるのか否か。

答えは、「ならない」となります。

先に補足をしておくと、正規の処理ルートで処理委託する方が安全、かつ安価になりますので、一般家庭に対しモグリ業者への委託を推奨するつもりは一切ありません。

これから書くことは、法律の条文構成に関する言及となります。

事業者の場合は、廃棄物処理法第6条の2第6項によって、

事業者は、一般廃棄物処理計画に従つてその一般廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合その他その一般廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、その運搬については第7条第12項に規定する一般廃棄物収集運搬業者その他環境省令で定める者に、その処分については同項に規定する一般廃棄物処分業者その他環境省令で定める者にそれぞれ委託しなければならない。

と定められているため、一般廃棄物収集運搬業者等に委託をすることが義務付けられています。

この条項に違反した場合、同法第25条第1項六号で定める

第6条の2第6項、第12条第5項又は第12条の2第5項の規定に違反して、一般廃棄物又は産業廃棄物の処理を他人に委託した者

に該当し、「5年以下の懲役若しくは1千万円以下の罰金、又はこれの併科」の対象となります。

しかしながら、事業系ではない、生活系一般廃棄物の排出者である国民には、委託基準なるものが課されていません。

生活系一般廃棄物は、それが発生する場所の市町村に回収してもらう以上、市町村以外に処理委託をする必要が無いからです。

※一般廃棄物収集運搬業者が生活系一般廃棄物を回収するケースもありますが、それは、市町村から一般廃棄物収集運搬業者に回収委託をしているのであり、国民一人一人が一般廃棄物収集運搬業者に回収委託をしているわけではありません。

そのため、生活系一般廃棄物に関しては、無許可業者へ委託をしたという理由だけでは、国民に刑罰を科すことができないということになります。

もちろん、「山にこのゴミを捨ててきてくれ」などと他者に依頼をした場合は、その国民自体が不法投棄の共同正犯となりますので、モグリ業者とお付き合いをする必要性はどこにもありません。

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