壱番屋の提訴は吉か凶か

ダイコー事件に巻き込まれたにもかかわらず、壱番屋の2016年5月期の決算は過去最高益でした。

産業廃棄物の不適正処理に巻き込まれた企業としては非常に稀なケースと言えます。

連日繰り返されたダイコー事件の報道により、「CoCo壱番屋」の名称が消費者にすり込まれたのかもしれません(笑)。

最高益に鼻息が荒くなったのか、
それともダイコー事件関係者の刑事責任がほぼ明らかになったために攻勢に転じたのかはわかりませんが、
刑事裁判の決着が見えた段階で、ダイコーの元会長に対し、損害賠償請求を起こす方針になったようです。

2017年1月23日付 読売新聞 「壱番屋、ダイコー側を提訴へ 廃棄カツ不正

 廃棄冷凍カツの不正転売事件を巡り、放置された廃棄食品の処理で追加の費用が生じたなどとして、大手カレーチェーン「壱番屋」(愛知県一宮市)が産業廃棄物処理会社「ダイコー」(同県稲沢市)の大西一幸氏(76)に損害賠償を求める訴訟を起こす方針を固めたことが、壱番屋への取材で分かった。事件の1審判決が出そろう27日以降、名古屋地裁に提訴する。壱番屋は「刑事裁判で明らかにされなかった問題もあり、民事訴訟で全容を明らかにしたい」としている。

 大西氏は、ダイコー会長として壱番屋から廃棄処分を請け負った冷凍ビーフカツ約6万3000枚を全て処分したと虚偽報告し、委託料約28万円を詐取したなどとして、名古屋地裁で懲役3年、執行猶予4年、罰金100万円の有罪判決を受け、確定した。

 壱番屋によると、虚偽報告分以外にも、ダイコーは未処分の廃棄食品を大量に放置。壱番屋は事件発覚後にこれらの廃棄物計約5・7トンを引き取って処理し、数十万円の追加費用が発生したという。訴訟では、追加費用やだまし取られた委託料を請求するほか、信用を毀損されたことに対する損害賠償請求も検討中で、請求額を精査している。

「問題点を明らかに」 大西氏は被害弁償を申し出たが、壱番屋は「問題は解決していない」などとして拒否していた。壱番屋は「国から食品リサイクルの優良業者に認定されていたダイコーを信用していたが、裏切られた。訴訟を通じ、行政も含めて何が問題だったのかが明らかになれば」としている。

自社には排出事業者としての過失がまったく無かったとでも言いたげな、なかなかに鼻息荒いコメントが載せられています。

「国から食品リサイクルの優良業者に認定されていたダイコーを信用していたが、裏切られた。訴訟を通じ、行政も含めて何が問題だったのかが明らかになれば」とは、後ろめたい気持ちを持った人間にはなかなか言えない台詞ですので、一点の曇りなく、自社の正当性を確信されているものと推察します。

記者の作文ではなく、本当に壱番屋の人間が話したコメントであるならば、実に見事な自己陶酔の表現です。

私に言わせれば、ダイコー事件は、ダイコー等の詐欺実行者のみならず、「壱番屋その他の排出事業者の怠慢」が無ければ、起こり得なかった不祥事です。

すなわち、自身は一般廃棄物か産業廃棄物の区別さえつかない状態であるにもかかわらず、ダイコーを“優良業者”と盲信し、その処理実態を確かめることさえしなかったという怠慢です。

行政の責任を云々する前に、排出事業者として当たり前の行動ができていなかったことをまず反省するべきかと思います。

当ブログ 2016年4月14日付記事「犯罪の自白
でも指摘したとおり、社員食堂の残飯という一般廃棄物に他ならない廃棄物を、一般廃棄物処理の許可を持たないダイコーに委託をしていたのは、壱番屋自身でした。

まさか、このことについても、「無許可業者に委託をしてはいけないと行政が我が社に情報提供しなかったのが悪い」と思っておられるのでしょうか?

「行政の問題を明らかにする」というあっぱれな姿勢には、このような厚顔無恥な言い分が見え隠れします。

さて、記事中の壱番屋のコメントのみに過剰反応しただけかもしれません。

壱番屋側は実際にはそのような表現をされておらず、メディアが針小棒大に拡大した可能性があることも追記しておきます。

訴訟の目的たる、追加の産業廃棄物処理費を賠償請求すること自体は、上場企業としての説明責任を果たすためには必要な行動とも言えます。

他者や社会に責任転嫁することなく、淡々と「民事訴訟を起こしました」とスマートに語られていたならば、逆に壱番屋の対応に好感を持ったと思います。

壱番屋の一連の広報対応を見ていると、「あまり練れていないな(=法務との連携不足)」と最初から感じていましたが、あながちその感想も間違いではなかったと確信しました。

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