むしろ感謝状を贈るべきでは?

大きな学びと笑い(?)を提供してくれた食品廃棄物の不正転売事件に関し、
事件発覚のきっかけとなった壱番屋が、ダイコーとその元代表者に損害賠償請求を行ったそうです。

2017年8月30日付 福井新聞 「カレーの壱番屋、産廃業者を提訴

 カレーチェーン店「CoCo壱番屋」を展開する壱番屋(愛知県一宮市)の廃棄カツ横流し事件で、放置された廃棄物の処理を肩代わりさせられたなどとして、同社は30日、委託先の産業廃棄物処理業「ダイコー」(同県稲沢市)と大西一幸会長(76)に約2千万円の損害賠償を求めて名古屋地裁に提訴した。

 事件では、廃棄カツがダイコーから岐阜県羽島市の製麺業者に横流しされ、その後スーパーなどに流通した。壱番屋側は事件発覚で社会的信用が損なわれたほか、ダイコーが処分せず放置していた廃棄物計約8トンの処理で費用を要したなどと主張している。

一般論としては、そのような訴訟戦術が有効とされる場合もありますが、
今回の壱番屋の提訴は、戦術と言うよりも、社内のどこか、あるいは誰かの意趣晴らしに見えて仕方がありません。

たしかに、事件が発覚した2016年1月中旬から2月にかけては、一瞬とは言え、壱番屋がゴミを市場に再流通させたかのような印象を与える報道がありました。

しかしながら、その後、他メーカーが委託していた食品廃棄物も同様に食品として再流通していたことが続々と発覚し、壱番屋を加害者であるかのように責め立てる報道は皆無になったと記憶しております。

もっとも、私個人としては、加害者とは言いませんが、ゴミが食品として再流通してしまった事実に対し、壱番屋その他のメーカーは少なくない責任があったと考えていますが。

これまた一般論としては、このような不祥事に見舞われた場合、企業としての社会的信用が失墜することにより、わかりやすい事象としては、売上高や経常利益が減少する傾向にあります。

しかるに、壱番屋の場合は、
2016年7月6日付の産経NEWS 「壱番屋、25%アップで過去最高益 廃棄カツ横流し“被害”乗り越え…海外出店に意欲」で報じられているとおり、

 カレーチェーン店「カレーハウスCoCo壱番屋」を展開する壱番屋(愛知県一宮市)が6日発表した平成28年5月期連結決算は、カレーの販売が好調で売上高が前期比2・0%増の449億円、最終利益は25・8%増の34億円と、いずれも過去最高を更新した。

と、セオリーがあてはまらない絶好調ぶりを示しています。

産経NEWSの見出しが、「廃棄カツ横流し“被害”乗り越え」と、「被害」をコーテーションマークで囲っている点が趣深くもあります。

これは、「引用」の意味なのでしょうか?それとも、「強調」の意味なのでしょうか?(笑)

上場企業にとっては大きな減損要因になってもおかしくなかった不祥事を難なく乗り切ったせいか、社長さんの口も軽やかです。

 名古屋市内で記者会見した浜島俊哉社長は「英国やインドに今後出店したい」と話した。壱番屋が廃棄した冷凍カツが横流しされた事件については「廃棄を委託する業者の選定方法などを見直した。同じことは起きないと思う」と述べた。

「廃棄じゃなくて、処理委託なんだよ」というツッコミは、一般的な知識レベルの方に向けるべきものではないのかもしれませんが、「同じことは起きないと思う」という甚だ頼りない希望的観測に、「のど元過ぎれば熱さ忘れる」に象徴されるリスク軽視の匂いを感じてしまいました。

信頼できる業者の選定ももちろん重要ですが、
それ以前に、マニフェストの記載をチェックするという、基本中の基本ができていなければ、また悪い業者に付け込まれることになりそうです。

報道では「誤記載」となっていますが、ダイコーは「有価物拾集量」を報告していますので、悪徳業者などではなく、希代の正直者だった可能性もあります(笑)。

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