泥棒も割引ポイントが欲しい?

廃棄物ではなく、専ら物に関する報道ですが、いささかの滑稽さが感じられる記事がありましたのでご紹介します。

2018年3月26日付 朝日新聞 「空き缶持参でポイントは「ダメ」 警察がスーパーを指導

 岐阜県内に本店があるスーパーマーケット2社が、アルミの空き缶を店に持ってきた客に、本数に応じて買い物に使える「エコポイント」をつけるサービスを始めた。ところが昨年、県警から「条例に抵触する」と指導を受け、ポイントの付与をやめた。「リサイクルの動機づけになればという思いだったのだが……」とスーパーの担当者。何が問題だったのか――。

 2社は愛知・岐阜両県に出店している岐阜市のスーパーと、高山市に出店しているスーパー。それぞれ昨年12月と11月に、県警から「県使用済金属類営業に関する条例」に抵触する可能性があると指導された。

 条例は2013年施行。当時、側溝のフタや消防ホースの筒先などの盗難が県内で相次いだことから制定され、盗難に遭った使用済み金属の流通防止などを目的に金属の売買などを規制している。「使用済金属類」には金、銀、ダイヤモンドなどに加え、アルミニウムが含まれている。

 県警生活安全総務課によると、アルミ缶を持ってきた人にポイントを付与する行為が「使用済金属類営業」にあたるため条例に触れるといい、付与を続ける場合は公安委員会の許可が必要だと指導したという。スーパーはアルミ缶と現金との交換はしておらず、本数に応じたポイントがたまると割引き券がもらえる仕組みだったという。

「使用済金属類」といっても、本年4月1日から施行される「有害使用済機器」ではなく、岐阜県条例でいうところの転売価値のある金属を指す用語です。

厳格に解釈をするのであれば、スーパーに持ち込まれるアルミ缶は、岐阜県条例の対象となる「使用済金属類」に該当すると思われます。

「県条例の許可が要るなら、素直に許可を得れば良いのでは?」と思いましたが、

 条例では「買い受け等」をする場合は相手の氏名、住所、生年月日を確認する必要があるが、スーパーのアルミ缶回収は無人のリサイクルステーションに缶を投入する形式。岐阜市のスーパーの担当者は「氏名などを確認するまでの人手は割けない」という。このスーパーはアルミ缶、ペットボトル、段ボールなどの回収にポイントを付与していたが、アルミ缶のみポイントの付与を中止した。

と、買い受け等を行うスーパー側に、持ち込んだ人の氏名・住所・生年月日を確認する必要があるとのこと。

現実的には、そのような個々の確認作業はほぼ不可能ですね。

笑ってしまったのが、下記の警察のコメント

 県警の担当者は「窃盗などの犯罪の防止を図るのが大前提。例えば『1缶集めても100缶集めても1ポイント』というように、差が出なければ問題ない。缶の本数によって受けられる利益に差が出て、それを目的とした盗難などが起きるのを防ぐのが最大の目的。窃盗犯がポイント欲しさにアルミ缶を盗んで集めてくる可能性もある」と話す。

厳密に仕事を進める真面目な方であるのはよくわかりますが、「ポイント欲しさにアルミ缶を盗んで集める窃盗犯」が果たしているのかどうかは疑問です。

もしいるとするならば、窃盗犯でありながら、わずかな割引ポイント目当てに、地道なアルミの回収作業を続けられる愚直で真面目な人間ということになります。

そういう人間が存在する可能性も無くはありませんが、そもそも、アルミ缶をどこから盗むのかという疑問があります。

自動販売機に付属した缶類の回収箱や、自治体の資源ゴミ回収からの抜き取りが考えられますが、いずれも「窃盗」には該当しないと思います。
※一部、条例によって、「資源ゴミは自治体の所有物」と定義しているところがありますが、そういった例外は除外しての話です。

真面目な人たちが、愚直に考えて、行動及びコメントするとき、時としてこのような滑稽な風景が現出しますが、
このままスーパーが単純にアルミ缶を回収するだけに徹し、ポイント付与を一切しなかったとしても、スーパーにとっては販促になるでしょうし、顧客も邪魔者のアルミ缶を処分できて大満足のはずです。

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