象徴的な倒産

一月前のニュースとなりますが、個人的には2020年の産業廃棄物処理業界の行く末を象徴する事件と考えています。

東京商工リサーチ 熊本清掃社の倒産情報

 (株)熊本清掃社(設立1971(昭和46)年8月27日、資本金300万円)は12月10日、東京地裁に破産を申請し13日、破産開始決定を受けた。
 負債総額は約20億円。熊本県では今年最大の大型倒産で、九州・沖縄では5番目。

負債総額が約20億円ということですから、年間売上高とほぼ同等の負債があったようです。

負債の内訳については存じませんが、設備投資に伴う借入金が大部分を占めるものと思われます。

注目いただきたいのは、下記の転載部分の赤字のところです。

 生ごみのリサイクルを主力に産業廃棄物等の収集、処理を手掛けていた。環境省の登録再生事業者にも認定され、熊本市で廃棄物処理施設「バイオプラザくまもと」を運営。2007年には名古屋市にも「バイオプラザなごや」を開設し、熊本、愛知両県で産廃事業を展開していた。スーパーやホテルなど民間事業者のほか、官公庁などからも生ごみ処理を引き受け、2018年3月期には売上高19億8582万円をあげていた。
 しかし、2019年1月、バイオプラザなごやから産廃物を堆肥化する工程で出た汚水を処理せずに国の基準値を超える有害物質を海へ流したとして、前代表ら関係者が愛知県警に逮捕された。このため、現代表に交代し、事業継続を目指していたが、3月に熊本市から廃棄物運搬、処分業の許可を取り消された。その後、事業譲渡と当社の特別清算を模索していたが、取引先から損害賠償を請求されたこともあり、今回の措置となった。

「取引先」としか書いていないため、「排出事業者」なのか、「外注先」なのかはわかりませんが、
同社は、大手小売企業と多数取引していたことが、前社長逮捕時に報道されていたことを考慮すると、排出事業者から訴えられたのかもしれません。

いずれにせよ、産業廃棄物処理業の許可取消に伴い、取引先から損害賠償請求を起こされたことがとどめとなり、破産を申請せざるを得なくなったと思われます。

廃棄物処理業界は巨額の設備投資が必要となる局面があります。

その局面下では、自転車操業のように、粗利の大部分を借入金の返済に回さざるを得ないことがよくあります。

逮捕された同社の関係者が、「排水の垂れ流しくらいで許可取消になるはずがない」という認識だったのかどうかはわかりませんが、「法人に対する水質汚濁防止法違反の罰金刑」は、「産業廃棄物処理業の許可取消対象」ということが厳然たる事実です。

安全や信頼性に関する甘い認識が、「会社の倒産」という究極のリスクに発展した稀有な事例となりました。

「稀有」と書きましたが、今後の廃棄物処理業界では、こうした行政処分をきっかけとした倒産案件が増えるような気がしてなりません。

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