過小評価

2021年9月15日付 岡山放送 「「廃棄量には誤りがある」と一部否認 産廃不法投棄事件で初公判【岡山・備前市】

備前市の山林に、家屋の解体工事で生じた産業廃棄物、約176トンを不法投棄したとして、廃棄物処理法違反の罪に問われている会社社長の初公判が、15日、岡山地方裁判所で開かれ、男は起訴内容を一部否認しました。

(中略)2020年7月と2021年5月、家屋の解体工事で生じた木くずなど、産業廃棄物、合わせて約176トンを備前市の山林に不法投棄した廃棄物処理法違反の罪に問われています。

事件の構造としては、建設廃棄物を大量に山中へ不法投棄という、絵に描いたような古典的不法投棄事件ですが、

被告は、「廃棄物を不法投棄したことに間違いないが、廃棄量には誤りがある」と起訴内容を一部否認しました。

というコメントに興味がわきました。

被告である社長の考える「廃棄量」が、検察が起訴事実として挙げた「176トン」よりも多いのか、それとも少ないのかが気になりました。

報道の後段で、

弁護側は、被告は廃材をみだりに捨てておらず、検察側が指摘する廃棄量には達していないなどと主張しました。

と、弁護士が主張している以上、社長自身が不法投棄したと考える廃棄物の量は、176トンより少ないという趣旨かと思われます。

しかし、岡山放送のサイトに掲載された画像を見る限り、176トンどころではなく、現場にはもっと多量の廃棄物が放置されているように見えます。

ゴミの置き方や積み上げ方にもよりますが、画像にある自動車の大きさから推測すると、
敷地はかなり広く、ゴミを積み上げた高さは数メートル程ありそうです。

ひょっとすると
「自分が捨てたのは1トンだけで、あとは全部外から無断侵入した他人が捨てたものだ」という主張なのかもしれません。

主張内容の真偽の程は他人にはわかりませんので、今回は「176トン」という数字の「算出根拠」について考えます。

検察は起訴事実として
「2020年7月」と「2021年5月」という、時間的には少し離れた不法投棄の時期を挙げています。

これはおそらく、産業廃棄物管理票等から、排出事業者名や、起訴された業者が確実に運搬したと認定できた時期が上記の2つであり、その時期に運び込んだ廃棄物の量が(少なくとも)176トンだったということです。

そのため、実際の不法投棄現場には、176トンを大幅に超える廃棄物が放置されているが、事件への関与が立証された176トン分の不法投棄で立件したということです。

不法投棄が刑事裁判で争われる際には、このような「起訴事実」と「実際の放置量」の乖離が著しいことが常です。

手続き上の問題として、実際に不法投棄した量が起訴事実よりも著しく少ないということはほぼあり得ません。

弁護士の方がこのような初歩的な立証手続きを知らないはずがありませんので、「そこしか主張する余地が無かったのね」と若干気の毒に思いました。

ただし、不法投棄現場に廃棄物を放置した、すなわち廃棄物を運び込んで置いた時点で、「『みだりに捨てている』ことになる」というのが判例ですので、「不法投棄じゃない」という主張は無理筋だと思いました。

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