災害復旧のために野外焼却をした篤志家

最近、佐賀県内のニュースに反応する機会が増えていますが、今回のニュースは一幕のコントとして秀逸なものです。

2021年11月11日付 佐賀新聞 「廃棄物焼却「災害復旧のため」 廃棄物処理法違反 被告が無罪主張 佐賀地裁初公判

 台風の影響で損壊した建材などの廃棄物を燃やしたとして、廃棄物処理法違反(焼却禁止)の罪に問われた佐賀市富士町、会社役員の男性被告(61)の初公判が10日、佐賀地裁(今泉裕登裁判官)であった。男性被告は「災害復旧のために焼却した」と述べ、弁護側は「施行令で(例外規定として)定める風水害の復旧にあたる」として無罪を主張した。

たしかに、廃棄物処理法施行令では、野外焼却禁止の除外規定が置かれています。

(焼却禁止の例外となる廃棄物の焼却)
廃棄物処理法施行令第十四条
 法第十六条の二第三号の政令で定める廃棄物の焼却は、次のとおりとする。
一 国又は地方公共団体がその施設の管理を行うために必要な廃棄物の焼却
二 震災、風水害、火災、凍霜害その他の災害の予防、応急対策又は復旧のために必要な廃棄物の焼却
三 風俗慣習上又は宗教上の行事を行うために必要な廃棄物の焼却
四 農業、林業又は漁業を営むためにやむを得ないものとして行われる廃棄物の焼却
五 たき火その他日常生活を営む上で通常行われる廃棄物の焼却であつて軽微なもの

今回は、台風の後に行った野外焼却であるため、「風水害の復旧のために必要な廃棄物の焼却」という主張のようです。

たった一人で、地域で起きた水害被害に野外焼却で立ち向かうなんて、なんと気高い人なのでしょうか!

それにしても、どうすれば野外焼却が災害復旧につながるのでしょうか?

佐賀新聞の報道によると

冒頭陳述で検察側は、2020年9月の台風で、役員を務める会社の敷地内の事務所が壊れたため、修理して再度利用することは難しいと考え、12月下旬に事務所を解体。発生した廃棄物の木材や外壁材などをライターで点火し焼却したと指摘した。

燃やしたものは「自分の会社事務所の一部」とのことですので、それを燃やすことが災害復旧につながるという弁護側の論理がよくわかりません。

ただ単に、邪魔な不用物を燃やしただけなんじゃね?

あるいは、「汚物は消毒だ~!」的に、周囲の生活環境を害する不潔な物が存在し、自分の事務所を大至急燃やすことでしか、その不潔な物による被害を抑えることが困難だったのでしょうか!?

奇天烈な主張をするのであれば、第二号よりも、第三号の「宗教上の行事を行うために必要な廃棄物の焼却」で攻めた方が、さらに高得点でした。
例:
「『私が今この廃材を燃やさないと、地球が終わりを迎える』という信仰に基づく行動でした」

廃棄物処理法で言うところの「災害の復旧」とは、「災害によって受けた個人的損害を超法規的に回復させる」趣旨ではなく、「国民の生命・財産を災害から守る必要性がある場合に、やむを得なく行う緊急避難的な行為」ではないかと思うのですが、法曹関係者の方にとってはそうではないようです。

裁判官は施行令の解釈が争点になるとの認識を示し、慎重な対応が求められるとして次回以降について「合議体での審理を検討する」と明らかにした。

記事の最初から最後までツッコミどころがあるという面白裁判コントでした。

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