雨どいにたまった泥は産業廃棄物か一般廃棄物か

「廃棄物の定義に関する普及啓発のための寸劇か?」と思うくらいに、的確な問題提起(?)をしている事件が起こりました。

2013.12.9 17:48 汚泥500リットルを側溝に…産廃処理業者の社員逮捕

最近の報道機関は自社が配信したニュースをすぐ削除しますので、報道内容を全文転載しておきます。
氏名は名字のイニシャルに置き換えています。

 マンションの雨どいなどの清掃で出た汚泥を違法に捨てた疑いです。

 警視庁によりますと、産廃処理業者の社員T容疑者(42)とI容疑者(31)は9月、マンションの雨どいなどを清掃した際に出た汚泥約500リットルを東京・練馬区の道路の側溝に捨てた疑いが持たれています。警視庁によりますと、T容疑者らは、汚泥の回収作業中にトラックのタンクがいっぱいになってしまい、捨てていたということです。取り調べに対し、「捨てたのは産業廃棄物ではない」と容疑を否認しています。パトロール中の区の職員が見つけ、「勝手に捨てている」と通報し、事件が発覚しました。

民家やマンションの雨樋などから回収した泥を公道の側溝に不法投棄して逮捕された、という事件。

紛れもなく廃棄物の不法投棄事件ですが、容疑者の言っているコメントの「捨てたのは産業廃棄物ではない」自体は正しい主張です。

なぜなら、回収したのが民間の事業者であったとしても、民家やマンションの雨樋にたまった泥は一般廃棄物でしかあり得ないからです。

雨樋の泥は元々土だから、廃棄物じゃないのでは?という疑問を持たれる方がおられるかもしれません。

その疑問に対する答えは、大阪府が下記のように簡潔に解説しています。

大阪府FAQ

Q19 道路側溝の堆積物は産業廃棄物になるか?

A19
 道路管理者が道路側溝の堆積物を除去し排出する場合は、その性状により判断します。
 具体的には、道路側溝に堆積した泥状物は、産業廃棄物の汚泥となり、紙、木、草、落葉などは一般廃棄物となります。なお、一般家庭や町内会が清掃作業をして排出した場合は、泥状のものであっても一般廃棄物となります。
 ただし、泥状とはとらえられない土砂については、廃棄物処理法の対象外です。

(注) 「港湾、河川等のしゅんせつに伴って生ずる土砂その他これに類するもの」は、廃棄物処理法の対象とする不要物ではありません。これは、港湾、河川等で発生する浚渫土砂は、埋立て用の有用物として実際に使われているという実態があり、その物の性状からみて発生現場で適宜移動するものであり、廃棄物の概念にはなじみにくい性格を有していることから、運用上、廃棄物処理法の規制対象とはしないという取り扱いをしてきたものです。しかし、この考え方は、工場内の側溝や道路の側溝にまで適用されるものではありません。

FAQは道路側溝の堆積物に関するものですが、雨樋に溜まった泥も同様の性状を有するため結論は同様となります。

このように、雨樋の泥という一般廃棄物を回収していた以上、容疑者が所属していた会社が一般廃棄物収集運搬業の許可を所持していなければ、無許可営業にもなります。

報道では産業廃棄物処理業者としか書かれていませんが、実態はどうだったのでしょうか。

以上、廃棄物の定義に関する貴重な実例のご紹介でした。

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