必然の結末

2022年10月16日付 札幌テレビ 「【2.3トン不法投棄】町有地に産業廃棄物を捨てた男と処理を依頼した会社役員の男を逮捕 北海道当別町

札幌方面北警察署は10月16日、札幌市に住む50歳の男と43歳の男を廃棄物処理法違反の疑いで逮捕しました。

警察によりますと、50歳の男は2022年5月上旬ごろ、北海道当別町の町有地にがれきや廃プラスチック類などおよそ2.3トンを不法に投棄した疑いです。

また、43歳の男は、産業廃棄物などの処分業の許可を受けていない男(50)に金を払って処理を委託した疑いが持たれています。

2人は知人で、当別町から通報を受け警察が捜査したところ、男(43)が役員のリフォーム業などに携わる会社の事業活動から出た廃棄物が見つかり、犯行の特定に至ったということです。

事件としてはありふれた不法投棄事件ですが、こうした事件が無くならない背景を考えてみると、啓発上の注意点が見えたように思います。

排出事業者の認識の問題

報道にあるとおり、「無許可業者に委託した」ことが逮捕理由のすべてですが、そもそも「委託をした理由」は何なのか?

無許可業者に委託をしてしまった企業に再発防止に関するコンサルティングを行った経験がありますが、その時体験者の生の声として聞いた話は
「無許可業者に委託することが違法とは知らなかった」です。

「無許可業者」と字で書くと違法なニオイが漂いますが、
リフォーム工事の場面では、「無許可業者」というアウトローなイメージではなく、「便利な(言うことをよく聞く)下請業者」という認識しか持ち得ないのだろうと思います。

もちろん、それで良しとはしませんが、排出事業者としての責任を認識してもらうためには、通常の取引関係とは異なる当事者の視点や責任を認識させることが不可欠だと思いました。

無許可業者の認識の問題

本件の不法投棄実行者が下請だったかどうかはわかりません。

しかし、町有地にそのまま投棄するという杜撰な犯行からすると、おそらくは「非常に安い」金額で、「不法投棄」ではなく、「産業廃棄物の処分」を請負ったものと思われます。

そもそも無許可業者であるため、産業廃棄物の処分を請負う資格はありませんでしたが、それをした理由には、
「産業廃棄物の処分なんて簡単にできる」という思い込みがあったように思います。

現実はそうではないことは皆様ご存知のとおりですが、
産業廃棄物処理業従事者以外で、「廃棄物をこの世から消滅させる」ことにどれだけ手間が掛かるかを肌感覚で知っている人は、非常に少ないのではないでしょうか。

「廃棄物は目の前から消えると、物理的に雲散霧消するのだ」と信じている人はいないと思いますが、
日々報道されている無責任な行動を見ていると、「無自覚な雲散霧消説の信奉者」が社会の大勢をを占めているように思えてなりません。

このように、無自覚な、そして法律的には正しくない認識をベースとしている以上、
刑事罰を重罰化したり、不法投棄パトロールを重ねたとしても、
望ましい成果はそれほど得られないように思います。

当事者に、「顔なじみの下請は無許可業者かもしれない」「廃棄物の処分には手間とコストが掛かる」という認識を持たせるためには

違法云々という話をする前に、
・「排出事業者」と「処理業者」
・「元請」と「下請」
・「処理業者」と「無許可業者」
等の通常の生活・取引関係とは異なる、「関係性」や「責任」を意識させる必要があると考えるようになりました。

具体的には、
「日常だと思っていたことが実は非日常」であり、「必要性の認識すらしていなかった状況が、実は生きるべき現実だった」というパラダイムシフトを経験できれば、ひとまずの成功と言えます。

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