不起訴≠適法

当ブログ 2022年7月25日付記事 「現場の独断か、それとも親会社の指示なのか」の続報です。

2022年10月7日付 NHK 「サーモンの血液などの廃液を投棄した容疑 逮捕の社長を不起訴

ことし6月、養殖したサーモンの血液などが混ざった大量の廃液を今別町の海に捨てたとして、廃棄物処理法違反の疑いで逮捕された深浦町の養殖会社の社長について、青森地方検察庁は7日付けで不起訴にしました。

深浦町に本社があるサーモン養殖会社の社長は、ことし6月、今別町の漁港に水揚げされたサーモンをさばく際に出た血液などの廃液を適切に処理せず海に捨てたとして、廃棄物処理法違反の疑いで逮捕されました。

青森地方検察庁は、この社長について、7日付けで不起訴にしました。

不起訴の理由について「捜査の過程において収集した証拠などを検討し、総合的に判断した」としています。

社長個人が不起訴処分になった理由は色々と考えられます。

「社長自身は不法投棄を指示していなかった」とか、「不法投棄物が養殖会社が捨てた物と立証していなかった」とか、その他諸々の手続き的な不備。

あるいは、「ヤメ検の弁護士の介入」や「政治家の介入」等の、陰謀論的な理由が見え隠れするケースもあることでしょう。

今回の不起訴処分がいずれの理由に基づくものかが、検察によって公開されることは有り得ませんので、「下衆の勘繰り」はこれくらいにしておきます。

社長個人を罰するかどうかよりも、法人である養殖会社が立件の対象となっているのかどうかの方が重要と考えておりますが、今のところ、いずれの報道でも「法人は起訴された」という表現が見当たりません。

一般的なニュースの受け止め方としては、
「不起訴=無罪」と考えがちとなりますので、「不起訴処分」だけで報道を終えられてしまうと、違法行為の事実が伝わらないこととなり、報道の存在意義を問いたくなります。

報道内容に間違いはありませんが、核心部分に触れないままの報道では、
「起訴されないなら、これからは海に汚水を垂れ流し放題だぜ!」という、間違った認識を醸成するきっかけになるのではないでしょうか。

しかしながら、地元紙の東奥日報は、不起訴処分の報を受けた青森県警にも取材をしています。
※東奥日報のサイトは、登録者しか全文が読めませんので、リンク先の引用は控えております。

不起訴とした地検の判断について、県警生活保安課は「処分結果についてはコメントする立場にない。今回に限らず、同様の違反容疑があれば取り締まっていく」としている。

この一文により、青森県警としては、廃棄物処理法違反と考えていることが明確に分かります。

少なくとも、東奥日報の読者に限れば、「ヒャッハー!汚水は海に垂れ流しできるんだぜ!」と、曲解する人は現れないことでしょう。

ただし、同じく東奥日報の記事では、

養殖業者の親会社(青森市)によると、6月の県警による強制捜査を受けて以降、活け締めで生じた血を海に流すのをやめており、同市内にある同社浄化施設で処理しているという。

と書かれており、「同社浄化施設」の「同社」が、「親会社」なのか「養殖業者」なのかが気になって仕方がありません。

「親会社の施設」である場合は、いくら子会社であるとは言え、別法人の養殖業者の廃液を処理する行為に該当しますので、親会社に産業廃棄物処分業の許可が必要となります(汗)。

恥というか、違法行為の上塗りをするとは思えないので、きっと「養殖業者の施設」に相違ありません!ゼッタイ。

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コメント

  1. M.O より:

     いつも、楽しみに見させていただいております。

     業種は「養殖会社」とのことですが、1次加工をしているようですし、1日の排水量が50㎥にどの程度、達しているかどうかはわかりませんが、『水質汚濁防止法』の令別表1の3号の特定施設に該当し、青森県の水濁法の排水基準条例でも事業場の区分が「食料品製造業に係るもの(一)」の「冷凍すり身製造業及び生すり身製造業に係るもの(主として内臓の除去その他の魚介類の処理を伴うものに限る。)」に該当するように思います。
     BOD値(130mg/L)などでも適合しない(厳しい?)、おそらく把握もしていないだろうと思いますが…。ニュース素材だけでは、判断が付きにくいですね。
     法令解釈のほど、いかがでしょうか?

  2. 尾上雅典 より:

    詳細なコメントをいただき、ありがとうございます。

    私も、前稿の執筆時点で「水質汚濁防止法の特定施設じゃないのか?」と疑問に思いました。

    しかし、水質汚濁防止法の対象施設であれば、青森県が見過ごし続けるはずがありませんし、そもそも排水処理設備が設けられていなかったことから考えると、「届出の対象施設に該当しないのか」と納得しておりました。

    ご指摘いただいたように、届出対象か否かは報道や事業者HPの記載からは判別できませんが、今回の事件を機に、水質汚濁防止法の施行令改正につながる可能性はあるかもしれませんね。


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