愛媛県の快挙

一月前のニュースになりますが、重要性を改めて思い出したのでご紹介しておきます。

2022年9月28日付 NHK 「愛媛県 全国初、廃棄物の置き場協定

南海トラフ巨大地震など大規模災害に備えて、愛媛県は、県内の砕石業者で作る組合と協定を結び、砕石場の一部を災害廃棄物の仮置き場として活用することになりました。廃棄物の仮置き場の確保について都道府県と砕石業者で作る組合が協定を結ぶのは全国で初めてだということです。

愛媛県は、南海トラフ巨大地震の際最大でおよそ3500万トンの災害廃棄物が発生し、処理するまでの仮置き場が不足するおそれがあり、場所の確保が大きな課題となっています。
このため県は、県内の砕石業者で作る「愛媛県砕石工業組合」と協定を結び、災害廃棄物の仮置き場として砕石場の一部を活用することになりました。

協定では、災害時に市や町からの要請を受けて県が廃棄物の仮置き場を提供するよう求めた場合、組合は砕石場の空きスペースを提供することが盛り込まれています。

以下に挙げた理由から、「砕石場跡地」は、「廃棄物置き場」あるいは「廃棄物処分場予定地」として、理想的な場所と言えます。

第一に、一般的には近隣に住居が非常に少なく、新たに廃棄物の置き場所になったとしても、生活環境の支障となることが少ない。

第二に、砕石を大型ダンプで運び出す必要性から、大型車両が通行可能な道路が既に確保されている。

第三に、谷間の場所に広大な平坦な土地が空いている。

第四に、歴史的に、地盤が安定している場所であることが多い。

近年、公共関与型の管理型最終処分場の予定地として、砕石場跡地が選ばれる事例が非常に多くなっている理由は、「市街地にはまとまった広さの空き地が無い」という現状の他上記の4つの利点が考慮された結果であろうと思います。

このように、「最終処分場予定地」としては事業者や自治体に有望視されていた砕石場跡地が持つ、「災害廃棄物の一時保管場所として活用できるのではないか?」という新たな可能性に気づいたことは、愛媛県職員の快挙と言えましょう。

「コロンブスの卵」の例えのように、簡単な方法ではあっても、常人はなかなかその可能性に気がつかないものです。

最初に思いついた人が一番偉いのであります。

愛媛県は今後、組合とともに災害廃棄物の処理のしかたを確認する訓練に取り組むなどして、連携強化を図ることにしています。

協定締結の報道から約2週間後には、愛媛県内市町職員と愛媛県職員、そして愛媛県砕石工業組合関係者が一堂に会した図上訓練が実施されています。
※2022年10月13日付 NHK 「災害廃棄物処理の図上訓練

計画の実効性を高めるべく、迅速に関係者一丸となって訓練に取組む様子は、行政機関に期待される理想を体現したものと言えます。

「素晴らしい」の一言に尽きます。

他の都道府県にも是非参考にしていただきたい取組みです。

愛媛県砕石工業組合の岡寛理事長は「ほとんどの砕石場は山あいにあり津波のおそれがない場所なので災害時にも活用できると思います。今後、訓練も重ねいざという時に備えていきたいです」と話していました。

これも、「コロンブスの卵」的な指摘でした。

たしかに、ほとんどの砕石場は山間部に位置していますので、津波が届くおそれはほぼありません。

地震や津波災害が発生した際には、「大型車両がアクセスでき」「広さとしても十分なスペースがある」砕石場は、災害廃棄物の一時保管場所として非常に有望な場所ですね。

ただし、「大型車両がアクセスできる」といっても、やはり狭い山道を通ることになるため、災害発生時に搬入車両が殺到することになると、「搬入まで5時間待ち」といったおびただしい車両渋滞が発生してしまいます。

そのため、砕石場へは「被災住民の直接搬入」よりも、「市町村が確保した一時保管場所で受けた物を大型車両で移し替える」方が現実的かもしれません。

砕石場は、「最後の切り札」として、災害被害の沈静化まで鎮座いただくという存在になりそうです。

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