捨て得を阻止するためには

「正義」の概念からすると、許せない背信行為でしかありませんが、このままでは残念ながら「捨て得」になりそうな不法投棄事件です。

2022年10月29日付 神戸新聞 「がれきを町有地に放置 加古川の業者、契約切れても産廃搬入 上郡町は法的措置を検討

 兵庫県上郡町議会は、同町赤松の町有地の採石場跡地で、事業者が契約期限後も野積みしたままの産業廃棄物(約3300立方メートル)の撤去方法を協議するため特別委員会を設置した。町は事業者に対して12月末までに撤去するよう求めており、応じない場合は法的措置を検討する。

 採石場跡地は約4400平方メートル。町は2020年1月、この跡地を2月から年間約70万円で2年間貸し出す賃貸契約を同県加古川市の建設工事会社と結んだ。使用目的は解体工事で出る建設廃材の仮置きなどとしていた。契約期限の今年1月末を迎えたところ廃棄物は搬出されず、契約を半年間延長したいという同社の申し出に町は応じた。

 町が新たな期限の7月末を控えて調査したところ、廃棄物が増えていることが判明した。町は不法占拠であるとして同社に対し、12月末までに撤去する誓約書と原状回復の計画書を8月に提出させた。ところが、同社の関係者2人が9月、同県加西市の山中で80トン余りのがれきを不法投棄したとして同県警加古川署などに逮捕された。

得られた「賃料70万円」で、約3千立方メートルの不法投棄物を処理することを考えると、明らかに割に合わない取引です。
※現状では「廃棄物の放置状態」ではありますが、今後当事者によって撤去される見込みが非常に少ないため、以降「不法投棄」と表現します。

町有地である以上、不法投棄物の完全撤去を目指すしかありません。

もちろん、法律上の原則は、「不法投棄の実行者」や「排出事業者」による撤去が大前提となりますが、町有地に廃棄物が放置された状況をいつまでも黙認し続ける訳にはいきませんので、いずれは、土地所有者の町役場の負担で撤去せざるを得ない状況となります。

「作業費」や「運搬費」、「処分料」の諸々を考慮すると、
不法投棄物の撤去単価は、1立方メートルあたり1万円を下回ることは無さそうです。

しかしながら、賃貸借契約に連帯保証人でも付けていない限り、撤去費用を当事者から回収することは極めて困難です。

なぜなら、不法投棄実行者の大部分は、逮捕された段階では、まともに金を持っていないことがほとんどだからです。

部外者からすると、

使用目的は解体工事で出る建設廃材の仮置きなどとしていた。

という賃貸借契約の目的からは、きな臭さしか感じられません(苦笑)。

廃棄物の仮置き場所として、
通常は4千平方メートル超の土地は必要ありませんし、
そんなに広大な敷地をフル活用してしまうと、置いた廃棄物を改めて外部へ搬出する費用が膨大となり、零細な事業者が一時に支払えるコスト上限をすぐに上回ってしまいます。

「賃借人の分を超えた仮置き場」は、不法投棄への誘惑となる可能性が高いと言わざるを得ません。

廃棄物は一度放置されてしまうと、他の廃棄物を引き寄せる誘引にもなりますし、時間が経過するにつれて、撤去コストが増大する傾向にあります。

売買ならまだしも、土地の賃貸借では、土地の所有者は廃棄物を放置されるリスクを完全に免れることはできませんので、そのリスクをにらんだ事前の対策が不可欠と言えます。

廃棄物置き場として、
「安い賃料」で「広大な土地を貸し」、「特段のリスク対策を取らない」ことは、「無策」と言うべき非常に危険なリスク管理姿勢です。

(町有地に放置された)廃材のうちスレートの破片などからはアスベストが検出されており、町は周辺の河川に有害物質が流入していないか水質検査も行う方針。

とのことですので、事業者による自主撤去を気長に待てる状況でもありません。

町役場は膿を出し切るつもりで、果断な判断と行動をしていく必要がありそうです。

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