「置いてただけ」が成立する要件

2022年10月31日付 NHK 「産業廃棄物118トンの不法投棄容疑で自営業者を逮捕

宿泊施設の解体工事現場から出た産業廃棄物合わせて118トンを読谷村の村有地やうるま市の山林に捨てたとして、沖縄市の自営業者が逮捕されました。

(略)

警察によりますと、(略)容疑者は去年10月から12月にかけて県内の宿泊施設の解体工事現場から出た石膏ボードなどの産業廃棄物合わせて118トンを、読谷村伊良皆にある村有地のほか他人が所有する読谷村儀間にある畑やうるま市兼箇段にある山林に捨てたとして、廃棄物処理法違反の疑いが持たれています。

警察や読谷村によりますと、去年11月下旬に農家から読谷村に「不法投棄がある」と通報があり、役場の職員が確認したところ、石膏ボードなどが入ったフレコンバックと呼ばれる大型の袋が捨てられているのを確認したということです。

通報を受けて警察が捜査を進めたところ、3か所で投棄したことが分かり、31日逮捕しました。

警察によりますと、調べに対し「運んだことは間違いないが、廃棄物を捨てたのではなく、とりあえず置いた」と容疑を一部否認しています。

自分の所有地、あるいは賃借地ではない他人の土地に、大量の廃棄物を長期間放置していますので、「とりあえず置いていただけ」という言い訳は通用しそうにありません。

容疑者である自営業者には、産業廃棄物処理業の許可が無いとのことです。

不法投棄実行者が「元請」だったのか、「下請」だったのか、あるいは「無許可業者でありながら、排出事業者から処分を受託した」のか、いずれに該当するかはわかりませんが、可能性としては、この3つのいずれかに該当しそうです。

このうち、唯一、合法的に「置いていた」と主張する余地がある立場は、「建設工事を発注者から受託した元請」の場合です。

もっとも、今回のケースでは、仮に逮捕された自営業者が元請であったとしても、他人の土地に廃棄物を「みだりに捨てている」以上、違法行為でしかありませんが、頭の体操として、「廃棄物の一時保管」が認められるケースを考えてみます。

具体的には、「排出事業者(元請)の自ら運搬と保管」が認められるための要件となります。

まず、元請自身が発生させた廃棄物を、元請が自ら運搬する場合は、「他者が発生させた産業廃棄物を業として運搬」しているわけではなく、「排出事業者の(自己)処理責任」に基づき、自ら運搬しているだけですので、産業廃棄物収集運搬業の許可は必要ありません。

ただし、この場合、産業廃棄物収集運搬業の許可は必要ありませんが、運搬車両側面に「産業廃棄物運搬車である旨の表示」を行うことは必要です。

具体的には、「産業廃棄物運搬車」「運搬者名(法人名等)」と、見やすい大きさの字で表記しなければなりません。

次に、廃棄物の保管場所には、「保管基準」がかかりますので、
・周囲に囲いを設置すること
・見やすい箇所に産業廃棄物の保管の場所である旨その他を表示した掲示板を設置すること
等の対応が不可欠です。

また、建設廃棄物を建設工事現場以外の場所で保管をし、なおかつ保管面積が300平方メートルを上回る場合は、あらかじめ都道府県知事に、産業廃棄物保管場所の届出を行う必要があります。
※1 逆に、保管面積が300平方メートル未満の場合は、上記の条件に該当しないことになるため、廃棄物処理法に基づく届出は不要となります。
※2 ただし、地方自治体によっては、条例によって300平方メートル未満の場所での保管であっても、条例に基づく届出対象としている場合が多々ありますので、実際に保管を行う際には、廃棄物処理法のみならず、関係する地方自治体の条例を必ず参照のこと。

このように、業許可不要となる排出事業者(元請)による自ら運搬と保管であっても、「運搬基準」や「保管基準」の規制はかかります。

他に、廃棄物処理法第21条の3第3項の「下請による運搬特例」もありますが、今回の記事は「排出事業者(元請)の責任」が本旨となりますので、ここではその詳細は記載しません。

事件報道に戻りますが、
「とりあえず置いた」とは、なかなか奇妙な日本語です。

「とりあえず」と付く以上は、いずれはその場所から搬出する意向があるということになりますが、放置する廃棄物の量が増えるにつれ、外部への搬出コストは跳ね上がっていきます。

しかし、そのような「一時的な保管」という意思があるならば、わざわざ他人の土地を選んで廃棄物を放置する訳がありません。

このように、今回の報道対象の事件については、法的にも、そして論理的にも、「とりあえず置いた」が成立する余地はありません。

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