自爆型不法投棄

従業員の、従業員による、従業員のための不法投棄という、極めて珍しい自爆型不法投棄事件です。

2023年12月16日付 KSB 「工場から回収した廃油を配水管に投棄 同じ会社に勤める男2人を逮捕 岡山

工場などから回収した廃油を瀬戸内市の店舗の排水管に投棄した疑いで、廃棄物の回収などをしている会社に勤める男(64)と、同じ会社に勤める男(32)が廃棄物処理法違反の疑いで16日逮捕されました。

警察によりますと2人は12月15日の午前7時半ごろ、産業廃棄物の廃油約220リットルを瀬戸内市の飲食店の敷地内にある排水管に投棄した疑いが持たれています。廃油は瀬戸内市の工場などから回収したもので、勤務する会社のバキュームカーを使って排水管に流したとみられています。

「工場で回収した廃油」を「飲食店の敷地内の排水管に不法投棄」とは、聞いたことが無いレベルの荒っぽい不法投棄です。

通常、「飲食店の敷地」とは、リゾートホテルのレストランでもない限り、「公道に面したそれほど広くない土地」だと思いますが、そんな目立つ場所でバキュームカーのホースで排水とは、発覚することをまったく恐れていない大胆不敵さです。

「2人が過去にも投棄したと話している」とのことですので、方々で同様の不法投棄を実行していた可能性まであります。

個人的に首をかしげざるを得なかった部分は

警察の調べに対し2人は容疑を認め、動機について「会社で決められている廃棄物の処理施設に搬送するのが面倒だった」などと話しています。

たしかに、「中間処理業者に運ぶのが面倒」だった可能性はあったと思いますが、
従業員という立場で、不法投棄で運搬の効率化(?)を図るメリットがまったくありません。

働く時間にかかわらず、その日の朝に日給を全額支払いという太っ腹な支給システムでも採用していない限り、「車を運転するのが面倒だから捨ててしまえ」というインセンティブは生じないからです。

ひょっとすると、「会社に無駄な労働時間分の給料を支払わせるのが申し訳なさ過ぎる~」という、資本家思いの気の良い労働者だったのか?

いずれにせよ、収集運搬業者の立場であったならば、産業廃棄物管理票(マニフェスト)の回付や、排出事業者への運搬終了日の報告が必須ですので、それらの事務処理をどうこなしていたのかも疑問です。

もしも、排出の段階から、排出事業者が産業廃棄物管理票を交付せず、委託契約書すら締結していなかったのであれば、排出事業者は廃棄物処理法第19条の5に基づく措置命令の対象になります。

このように考えると、
「排出事業者」「収集運搬業者(会社)」「収集運搬業者の従業員」の三者全てに知識や責任の欠如がない限り起こりえない、奇跡的な犯罪だったように思えます。

問題は、現実の商取引現場においては、これが奇跡的瞬間ではなく、日常茶飯事であることの可能性の方が高いことです。

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