優良認定業者が措置命令を受けたらどうなる?

昨年末、福岡県からある行政処分事例が公表されました。

2023年12月28日付 福岡県発表 「嘉麻市の産業廃棄物中間処理施設に係る排出事業者に対する行政処分について

 嘉麻市の産業廃棄物中間処理業者が事業場内において、産業廃棄物を過剰に保管し、平成29年5月に火災が発生した事案について、これまで当該中間処理業者に対する措置命令や、当該中間処理業者に処理を委託した排出事業者に対する産業廃棄物の撤去要請を行ってきました。

 この度、撤去要請に応じていない排出事業者8者に対し、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「法」という。)第19条の5第1項の規定に基づき措置命令を発出しましたので、お知らせします。

※筆者注:企業名と地番については転載省略

中間処理場の産業廃棄物保管場所から発生した火が27日間にわたって燃え続けたという、悪夢のような不適正処理事案ですが、原因者の中間処理業者は既に廃業していますので、排出事業者に残置物撤去のお鉢が回ってきました。

通常ならば、排出事業者への残置物撤去の要請は、「行政指導」あるいは「要請」という法的強制力の無いソフトな呼びかけで始まり、大部分の排出事業者はこの時点で何らかの廃棄物撤去や撤去費用の負担を行うことを承諾し、それを履行することで、排出事業者としての責任を法的に全うした状態となります。

しかしながら、排出事業者の中には、強制力の無い呼びかけに従うことを良しとせず、「残置物撤去の要請には一切応じない」という方針で臨むケースがたまにあります。

今回の福岡県の発表は、そのような「残置物撤去要請には一切応じない」という排出事業者のうち、「委託基準違反がある」と福岡県が判断した8社に対して発出された措置命令となります。

 被命令者は、委託基準に違反する委託を行った者及び産業廃棄物管理票(以下「管理票」という。)に係る義務について違反がある者と認められる(法第19条の5第1項第2号及び第3号に該当)。
・委託基準違反:委託契約書における法定記載事項の不記載
・管理票に係る義務違反:管理票の交付者が講ずべき措置違反(虚偽の管理票の送付を受けた等にもかかわらず、適切な措置を講じていない)、管理票法定記載事項の不記載等
よって、法第19条の5第1項の規定に基づき措置命令を発出するものである。

さて、福岡県が命令発出先として公表した8社のリストを見てみると、優良認定を取得している産業廃棄物処理業者の名称が挙げられていることに気がつきました。

ここで、「措置命令を受けた優良認定業者には、どのようなデメリットがあるのだろうか?」という疑問がふと湧きました。

「優良認定」を受けると、許可の有効期間が5年間から7年間に延びる等のメリットがありますが、それを受けるためには、HP上で情報公開を行う等の一定の対応が必要となっています。

また、優良認定を受けるための条件としては、「従前の許可の有効期間内に特定不利益処分を受けていないこと」が「遵法性」の基準として設定されています。

「特定不利益処分」には、「許可取消」や「事業停止命令」の他、「改善命令」や「措置命令」も含まれます。

また、「特定不利益処分」は、優良認定の申請先の自治体から受けた処分限定ではなく、全国の産業廃棄物所管行政と環境省を含めた「オール行政」から受けた不利益処分すべてが対象となります。

つまり、「措置命令」を受けた産業廃棄物処理業者は、次の許可更新申請時には、全国の自治体から優良認定を受けられないということになります。

ここで、「不利益処分を受けたことで、現在取得している優良認定は取消されてしまうのではないか?」と不安に思った方が多いかもしれません。

安心してください(笑)。

自動車運転免許のいわゆるゴールド免許と同様に、措置命令を受けただけで、「優良認定」と付記された業許可(証)自体が取消されることはありません。

ただし、上述したとおり、廃棄物処理法第19条の5に基づく措置命令は、「委託基準違反のある排出事業者」にしか発出されませんので、行政から措置命令の対象者として公表されるという事態は、極めて不名誉な状況と言わざるを得ません。

会社の規模によっては、顧客である排出事業者から、一定割合で契約解除されるリスクを覚悟しなければならないでしょう。

また、たとえば環境省の広域認定の「処理を行う者」として認定されている処理企業の場合は、不利益処分を受けてしまうと、環境省から「処理を行う者から当該業者を外すように」という行政指導が行われることもあります。

このように、産業廃棄物処理業者としては(優良認定業者であればなおさら)、措置命令その他の不利益処分を受けると、会社の売上に直接するダメージを受けることとなりますので、極力そのような行政処分を受けないことが肝要です。

もちろん、「我が社は法律違反をしていない」という確信がある場合は、それを主張していくことも大切だと思いますが、「委託基準違反」という厳然たる事実があるのであれば、事前の「撤去要請」という行政指導に粛々と協力することが、産業廃棄物処理企業としては最適解と思います。

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