分ければ資源、分ければ・・・

「再資源化事業高度化法の逐条解説」シリーズが続いておりますので、たまには違うテーマを取り上げようと思います。

2024年4月22日付神戸新聞 「小型家電の回収目標見直し 環境省検討、再利用増加で

 スマートフォンやデジタルカメラといった小型家電のリサイクル制度で、回収量の目標割れが続き、環境省が設定取りやめを検討する。貴金属やレアメタル(希少金属)を取り出して有効活用を目指したが、中古品を廃棄せずフリマアプリなどに出品、再利用するケースが増えてきたためだ。今後、有識者らで新たな指標づくりを議論する。

2013年4月に鳴り物入りで始まった「小型家電リサイクル法」

2023年11月7日現在の認定事業者数は66件と、リサイクラーの数としては、全国的に充実してきた感があります。

認定事業者および連絡先一覧
ただし、

認定番号第9号、第16号、第17号、第28号、第31号、第33号及び第40号は事業廃止に伴う欠番

とあるように、わずか10年で7社が撤退している事実からは、採算性を維持することが難しい様子がうかがえます。

再び神戸新聞の記事に戻りますが

 環境省は2023年度までに年14万トン回収するとした数値目標を掲げてきた。しかし、実際の回収量は20年度の約10万2千トンをピークに2年連続で減少。22年度は約8万9千トンだった。

 リサイクルを促す制度は13年度に開始。当初は、小型家電の廃棄量を年間約65万トンと見込み、うち約2割を回収すると想定して14万トンに設定した。15年度を目指していたが、回収量が伸びず2度先送りしてきた。

環境省は年間14万トンという数値目標自体を取り下げる方針のようです。

達成不可能な数値目標に固執することを止めること自体には賛成です。

しかし、小型家電の回収量が伸びない理由は、はたして本当に

中古品を廃棄せずフリマアプリなどに出品、再利用するケースが増えてきたため

なのでしょうか?

私は、それは原因の一つに過ぎず、もっと根本的な問題に焦点を当てる必要があると思っています。

その根本的な問題とは、先に紹介した「10年間で7社の認定事業者が事業廃止」という厳しい現実です。

もちろん、各社それぞれに個別の問題があったとは思いますが、「小型家電リサイクルの収益性の低さ」が解決されない限り、せっかく盛り上がった(?)機運が尻すぼみになる懸念があります。

現在の認定事業者は、どこも各地域での実績と信頼を積み重ねてきた企業ばかりですので、収益性の低さに耐えることが可能だっただけであり、「小型家電リサイクル事業だけで、右肩上がりの成長を続ける!」という企業はほぼ存在しないように思います。

唯一の例外は、パソコンの回収に特化したケースでしょうか。

別の言い方をすると、「パソコンやビデオカメラ等のIC基盤が大量に使用された製品以外は、処分費を徴収しないと儲けが出ない」と言えます。

認定を受けた家電量販店グループの実例としては、「パソコン、その他のIC基盤が使用された製品だけは回収費無料」で、「マッサージチェアや電子ピアノはリサイクル料金として4,400円(税込み)を徴収」と銘打っているところがあります。
※認定事業者なので合法

小型家電として、「パソコン」や「デジタルカメラ」ばかりが大量に持ち込まれるのであれば、どのリサイクラーも苦労しません。

実際には、特に市町村から一般廃棄物の処分委託を受ける立場のリサイクラーの場合には、パソコン等のお宝はほとんど入ってこず、「ドライヤー」や「マッサージチェア」といった資源としては価値の低いゴミ、もとい「小型家電リサイクル法対象品目」の方が大量に入ってきやすい構造となっています。

この場合、市町村からは「委託料」が支払われますが、「小型家電一個で4,400円」などという景気の良い金額にはもちろんなりません。

「では、入ってくる有象無象の不用物を選別して、価値の高い物だけを抜き取って集中して処理すればいい」という考えが出ますが、
まず、入ってきた物を選別する「時間」と「人件費」、そして「大量の不用物(換価価値が低い物)を保存するスペース」を考慮すると、この方法だけでは解決にならないことをおわかりいただけると思います。

現在のところ、各リサイクラーが一生懸命設備投資をし、機械による選別と分解技術を日々高めているところですが、その投資の負担に耐えられなくなった企業から撤退しているという状況になります。

「分ければ資源 混ぜればゴミ」とは誰もが知っているキャッチフレーズであり、真理でもありますが、
法律という理念の世界では、この真理が忘れ去られ、
「(事業者が)頑張ったらいけんじゃね?」
「機械選別なんて簡単じゃね?」
と、現実離れした夢想が横行する傾向にあります。

「味噌ク●一緒くたに小型家電ぜ~んぶ」ではなく、「有用金属確保という国家政策完遂のためにも、事業採算性が取りやすい機器に限定する」などの思い切った改善措置が必要になっているように思います。

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