灰買いの復活

江戸時代は、ほぼ日本国内の資源だけで回し続けるリサイクル社会であったことは有名です。

現代では厄介者でしかない「人間の排泄物」でさえ、肥料として有価買取されていました。

同じく、「灰」も「灰買い」という買い付け業者により、肥料その他の原材料として有価買取されていました。

もっとも、現代社会で発生する「焼却灰」の場合は、金属やプラスチック等を一緒くたに混焼せざるを得ませんので、肥料として使うどころか、重金属その他の有害物質を含む厄介者になり果ててしまいました。

そんな厄介者の「焼却灰」の「発生抑制」と「有価買取による収益増」を両立させる、現代版の「灰買い」取引が、滋賀県の一部事務組合で始まりました。

2021年10月22日付 毎日新聞 「焼却灰中の金属をリサイクル 自治体のごみ処理施設で近畿初 滋賀

 滋賀県長浜、米原両市で組織する湖北広域行政事務センター(長浜市八幡中山町)は焼却灰に含まれる金属のリサイクルを始めた。敷地内にある焼却施設「クリスタルプラザ」から出る「落じん灰」を利用する。自治体のごみ処理施設としては近畿圏で初の取り組み。

 落じん灰は、炉の中で可動する火格子の隙間(すきま)から落ちる重い灰のことで、金や銀、銅などが含まれる。同施設では、年間約13万5000トンの可燃ごみを焼却し、主灰4400トン、落じん灰100トンが生じる。落じん灰100トンから約1トンの金属が取れるという。

 2020年10月に静岡県の会社「エコネコル」からリサイクルの提案を受け、落じん灰中の金属を分析。すると1トン当たりの換算で、銅538キロ▽亜鉛253キロ▽鉛133キロ▽鉄52キロ▽アルミ11キロ――などを検出。銀も284グラムあった。可燃ごみのファスナーやボタン、混入したクギや小型家電などから出た金属とみられる。

買取り元の「エコネコル社」のHPによると、灰買い事業を本格化させたのは2018年からとのことで、東日本の自治体ではいくつかの成功事例が既にあったそうですが、近畿地方では、湖北広域行政事務センターが初事例とのことです。

同センターの落じん灰の買取価格は、「100トンあたり110万円」とのことですので、その分の最終処分費が不要になることを考えると、かなり良い取引と言えるのではないでしょうか。

科学技術が発達した現代で、江戸時代のビジネスが形を変えて復活したことが面白いと思いました。

次に復活する江戸モデルはどんなものになるのでしょうか?

個人的には、リユースの進展を経た上で、それによって触発された新たなデザインや、新たな組み合わせのリデザインが発達し、現在よりもさらに多様性に富んだデザインが増えることを期待しています。

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