措置命令違反で許可取消(佐賀県)

2013年8月29日 佐賀新聞 ドラム缶撤去できず 産廃業者許可取り消し

 佐賀県は29日、産業廃棄物の撤去を求める措置命令に従わなかったとして、廃棄物処理法に基づき、佐賀市大和町の産業廃棄物処理業「ニシカン」(原田修二郎社長)の許可を取り消した。

 ニシカンは2008年7月までに、唐津市厳木町の中間処理施設に廃油の入ったドラム缶約8千本を保管。廃棄物処理法の規定で、同社が保管できる廃油量は1400本までとなっている。同社は約2千本まで減らしたが、その後の処分が進まなかったため、県が昨年12月に撤去命令(今年6月10日期限)を出していた。

 同社は命令を受けた後、腐食しているドラム缶からの廃油の詰め替えなどは行ったが、撤去はできていない。

 県は原田社長ら元役員にも、9月17日を期限に撤去の措置命令を出している。県循環型社会推進課は「社長らが期限までに対応しなかった場合は、搬出事業者への処理要請なども検討する」としている。

新聞報道では事態の深刻さがあまり伝わってきませんので、佐賀県の公表内容を参照してみました。

8月29日付 佐賀県発表内容 廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づき産業廃棄物処理業者の許可を取り消しました

1 被処分者
  所在地:佐賀県佐賀市大和町大字川上153番地1
  事業者名:株式会社ニシカン
  設立:昭和54年6月1日

2 行政処分の内容
  (1) 産業廃棄物処分業の許可の取消し
  (2) 産業廃棄物収集運搬業の許可の取消し
  (3) 特別管理産業廃棄物処分業の許可の取消し
  (4) 特別管理産業廃棄物収集運搬業の許可の取消し
  (5) 産業廃棄物焼却施設の設置許可の取消し
  (6) 産業廃棄物最終処分場の設置許可の取消し

※代表者名のみ、佐賀県の公表内容から削除して転載しております。

収集運搬業のみならず、処分業、焼却施設と最終処分施設の設置許可、そして特別管理産業廃棄物に関する業許可までと、考えられる限りで取得できるすべての業許可が取消されたことになります。

措置命令違反である以上、業許可が取消されるのは当然のことですが、ここまで多彩な許可を持ちながら、経営破たんしたのはなぜなのでしょうか?

操業開始が昭和54年からとありますので、産業廃棄物処理業界の中でも老舗に入る業歴の長さとなります。

業歴30年以上で、かつ最終処分場を有する老舗処理企業の場合、
年商50億円以上という、この業界の中では大きな売上規模の企業群に成長したところが多い一方で、
経営権の譲渡を繰り返すうちに、施設の維持管理が非常に杜撰になっていき、不適正処理予備軍になったところも少なからず存在します。

今回問題となった処理業者は、はたしてどちらのカテゴリーに入っていたのでしょうか。

5 行政処分の理由
 株式会社ニシカンは、佐賀県知事から平成24年12月21日付けで、平成25年6月20日までに、佐賀県唐津市厳木町星領爪の元163番地1外4筆の中間処理施設内に残っている廃油等ドラム缶約2,000本のほか、廃プラスチック類、汚泥、動植物性残さおよび燃え殻等の未処理の産業廃棄物の全量を法に定める処理基準に従って適正に処理するよう措置命令を受けたにもかかわらず、その履行期限までにその措置を講じなかったもの。

新聞報道にもあるとおり、これだけ大量に未処理の産業廃棄物が放置されている以上、委託者への責任追及も厳しく行われることになります。

新聞では“撤去要請”とありますが、要請に協力しない委託者に対しては、生活環境の保全への支障を除去するための「措置命令」が出されてもおかしくないケースです。

産業廃棄物の保管場所は、現地確認(処理状況確認)の際に必ず見ないといけないチェックポイントですが、
逆に言うと、誰でも見さえすればある程度理解できる指標でもあります。

そこを見落として、あるいは現地確認をまったくせずに委託をしていた場合も、措置命令の対象になってしまいます。

今回の行政処分は、委託者が行うべき行動についても色々と示唆してくれるありがたい事例と言えますね。

6 事案の概要
 株式会社ニシカンは、昭和54年6月27日に佐賀県知事から収集運搬業の許可を受け、その後中間処理業や最終処分業等の許可を受けて産業廃棄物の処理業を営んでいる。

 県は、平成20年7月に同社の中間処理場(佐賀県唐津市厳木町星領)において、約8,000本の廃油等の入ったドラム缶が処理されずに大量に保管された状態であることを確認したことから、廃油の処分方法や処分先等の指導を行い、同年9月に改善計画書を提出させたが、撤去作業は計画どおりに進まず、その後も数回にわたり改善計画の延長を認めながら撤去作業を行わせてきた。

 しかしながら、株式会社ニシカンは、昨年7月から中間処理場の焼却施設を休止しており、依然として場内には廃油等の入ったドラム缶約2,000本をはじめ、廃プラスチック類、汚泥、動植物性残さ、燃え殻等が処理されずに残ったままとなっており、これは法第14条第12項の規定に違反する。

当該ドラム缶の中には金属腐食が進んでいるものも見受けられ、県としては、このままでは、当該ドラム缶の腐食による廃油等の流出や、廃プラスチック類、汚泥、動植物性残さの放置による衛生害虫・悪臭の発生、燃え殻の飛散・流出などの生活環境の保全上の支障が生じるおそれがあると判断し、昨年12月21日に法に基づく措置命令を行った。
 この措置命令を受け、株式会社ニシカンは改善に努めたが、燃え殻(全部)の外、廃プラ、動植物性残さの一部を処理しただけであった。

佐賀県としては5年前から事案の存在を認識していたようです。

当初は8,000本のドラム缶が放置されていたところを、2,000本まで減らすことには成功したものの、ドラム缶の腐食や動植物性残さの放置という悪臭がひどそうな違反が発生したため、昨年末に措置命令を出したという経緯。

措置命令をした以上、このまま行くと、佐賀県が場内に放置された廃棄物の撤去などを代執行することとなりそうです。

地下水汚染などが起こっていなければ、廃棄物の撤去費用として総額1~2億円程度の出費で済みそうです(高額なコストには違いないが)。

しかし、地下水や土壌汚染が起こっている場合は・・・

代執行費用は一気に10倍以上に跳ね上がりそうです。

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