なぜ問題は握りつぶされるのか?
昨日触れた新居浜市の不法投棄事件にまた続報がありました。
YOMIURI ONLINE3セク不法投棄、把握しながら「通報で」とウソ
愛媛県新居浜市の第3セクター「悠楽技(ゆらぎ)」(社長=佐々木龍市長)が同市別子山中に廃棄物を不法投棄した問題で、市別子山支所勤務の市経済部次長(59)が市民の通報前に事実を把握しながら、先月28日の記者会見で「市民の通報でわかった」と虚偽説明をしていたことがわかった。
事実上、放置していたことになり、次長は市に対し「支所で対応を検討中、市長から撤去指示が出たため、把握していたことを言いそびれた」と釈明しているという。
市によると、次長は同3セクの取締役を兼務し、昨年10月28日、同支所員2人と悠楽技が管理する市所有のゆらぎの森敷地内で不法投棄を確認。市民から市役所への通報は、約3週間後の11月20日だった。佐々木市長は7日、改めて市役所で記者会見。「私も含め、次長の処分を検討している」と謝罪した。
日本テレビの報道では「放置」だったものが、読売新聞では「ウソ」と書かれています。
同じ事実を前にしながら、かなり違った意味合いの言葉で評価されていますが、
捉え方によっては、新居浜市の次長の説明は「ウソ」や「隠ぺい」であったと言えなくもありません。
さて、次長さんの個人的責任を追及することに意義を感じませんので、
当ブログでは、問題がこのように隠ぺいされる背景について考えてみたいと思います。
問題が隠ぺいされる理由
問題が隠ぺいされる理由としては、
・隠ぺいがばれないと思った
・大した問題ではないと思った
という2つが考えられます。
どちらも正しくないということは、他人からすると自明なのですが、問題の渦中にある当事者の場合は、判断基準が自己にとって有利な方向に傾きがちです。
その方が楽だから。
昨日ご紹介した「これくらいなら」とか、「見つからなければ」というものですね。
しかし、「常識に従って判断せよ」と精神的に説くだけでは、問題の解決にもなりません。
なぜなら、「常識」という人によって判断がぶれやすい基準で、個人に判断を押し付けることになるからです。
やはり必要になるのは、「明文化された明確な判断基準」です。
それなしに、組織の構成員に自由な判断を許してしまうと、個人個人の判断基準は、個人にとって楽な方に収束していきます。
「やって良いこと」と「やってはいけないこと」をまず明確にし、
「どちらかわからないこと」は、組織内の特定の部署に相談すること をルール化する必要があります。
とはいえ、それらのルールをどう明文化するのかが、非常に難しい問題でもあります。
事細かに一挙手一投足を規制するような分厚いマニュアルでは、実務では役に立たないからです。
そのように不必要な情報まで網羅されたマニュアルでは、時間の経過とともに顧みられなくなり、また個人個人の勝手な判断時代に戻ってしまいます。
ではどうする?
結局のところは、
「絶対不変の判断基準というものはほとんどない」という前提に立ち、
問題点とチェックと判断基準のバージョンアップを、常に続けていくしかなさそうです。
その意味では、後付の言い訳になってはいけませんが、
結果よりも、「バージョンアップのプロセス」の方を重視した方が良いと思います。
リスクの発生をゼロにすることは不可能かもしれませんが、
バージョンアップを続けることにより、リスクの実害をかなりの割合で低減できるようになるからです。
そのため、形が整ってから走り出すよりも、
最初は無様かもしれませんが、まずは走りだし、走りながら問題点を見つけて、解決を図っていく方がはるかに有益です。
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2012年2月9日 | コメント/トラックバック(2) | トラックバックURL |
カテゴリー:日々考えていること
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コメント
う~ん。残念な事件ですね。
本件問題点は以下3点と思います。
①担当者が不法投棄することが悪いと認識していなかった
②報告を受けた上司がたいしたことないとおもった
③組織が外部に対してウソの報告をした。
自分なりに悪さ加減を採点すると③>>②>①と思います。
廃棄物の仕事をしていますとつくづく「人は悪いことをする動物で
ある」と思います。組織や社会はそれを常に監視し、間違ったことを
気づいた段階で、真摯に受け止め速やかに是正を図ることです。
それと上に立つ人は悪いことを受入る寛容さも必要と思います。
今回の事例は、その反面教師としていい題材です。そして、社会
(読売新聞)が糾弾してくれたことが、非常にありがたい。
そして尾上さんがこうして話題提供し、私も含め多くの方にすこし
立ち止まって考えさせる場を提供頂いたことを感謝します。
あっきん 様 コメントありがとうございました。
良い悪いではなく、システムとしては性悪説に立たないと、
このようなお粗末な不法投棄が起こってしまいますね。
読者の皆さんに問題意識を持ってもらうことが一番ですので、今後も話題を提供していきます。
よろしくお願いします。