矛盾
とあるインターネット広告の大手企業からメールが来ました。
いわく
「簡単に、安心で、低価格な処理業者を探せるプラットフォームを作りたいので、電話で30分ほど話を聞かせてチョ」
という内容でした。
メールの文章はもっと常識的なものでしたが、文章のエッセンス及び当方が受けた印象を要約してみました(笑)。
見ず知らずの人となぜ私が30分も電話で話をしなければならないのかが謎です(汗)。
さて、
インターネット業界の方が産業廃棄物処理事情を知らないのも無理はありませんが、
いやしくも、自社の事業戦略として位置づけをするのであれば、少なくとも、市場調査くらいはするべきではないでしょうか。
市場調査と言っても、「サンプルを無作為に1万ほど抽出して云々」という難しい話ではなく、
排出事業者数社と処理業者数社にヒアリングをすれば、ある程度の実態はすぐにわかります。
「簡単に、安心で、低価格な処理業者を探せる」
というキーワードを当方に投げつけてきたということは、
その簡単なヒアリングすらしていない「脳内戦略」であることが明白です。
賢明な読者の皆様には補足する必要は無いとは思いますが、
市場調査中(?)のインターネット関連業界の方向けに、蛇足の解説を加えておきます。
「簡単に」は良いとして、
「安心」と「低価格な処理業者」は、こと産業廃棄物処理市場においては両立しません(苦笑)。
もう当たり前すぎて書くのが憚られるくらいの常識ではありますが、
「低価格」だから「不法投棄する」のです。
「誠実に廃棄物を契約どおりに処理するけれど、他社よりも必ずお安くしまっせ」
という産業廃棄物処理業者が実在するでしょうか?
いや存在しない。
「産業廃棄物処理施設の設置、産業廃棄物処理業の許可等に関する状況(平成29年度実績)」で解説したとおり、最新の統計では、産業廃棄物処理施設の数が前年度よりも減少し、産業廃棄物の最終処分量は年々減少し続けています。
また、産業廃棄物の発生量自体もここ数年減少傾向にあります。
経済学的に言うと、「需要」と「供給」が同時に減少しているのが、現在の日本が置かれた状況です。
そして、今後人口減少の進展に伴い、この傾向はますます加速していくことになります。
需要と供給が同時に減少すると、価格はどうなるのか?
一般的な傾向としては、
「価格」は上がり、「数量(=発生量あるいは処理量)」は減少していきます。
その結果、さらに価格が上がり、数量は減っていくというスパイラルに入ります。
残念なことに、先述したとおり、日本は人口減少を免れることはできそうにないため、この減少スパイラルを断ち切ることは非常に難しそうです。
その実例として、最終処分単価については、全国的に年々じわじわと上昇傾向にあります。
産業廃棄物の発生量が減少していくのに、「産業廃棄物処理費用を値下げしましょう~」という戦略は、まともな処理業者であれば選択できません。
現実には、まともではないアウトローが存在するため、本来であれば有り得ない値下げ戦略(?)を取り、そのままメデタク不法投棄されているわけですが、
そのような犯罪者、あるいは犯罪者予備軍を集めたポータルサイトを作る意味ってあるのでしょうか?
いや ない!
今年一番の仰天アイディアが投げつけられたので、衷心から
「老婆心ながら、そのような構想は今後の時代に逆行する非常に筋の悪いお考えですので、今すぐ方針転換されることをお奨めします。」
と無料でご返信しましたが、インターネット広告屋さんからの返事はありませんでした(涙)。
「低価格」という下品なキーワードではなく、
「簡単に、お近くの、実績豊富な処理業者を比較検討できるサイト」の方が、世間から求められていると思います。
今回の記事が、真面目に社会問題を解決しようと努めるインターネット広告代理店の参考になれば幸いです。
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2020年6月10日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
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