漂着廃棄物に関するなんちゃって政策提言
日刊工業新聞のサイト「ニュースイッチ」に、長崎県対馬市しまの力創生課の前田剛さんが寄稿された記事
『日本一海洋プラゴミが流れ着く対馬に学ぶ「無駄を富に変える力」』を読みました。
日本で最も海洋プラが漂着する離島において、一自治体が孤軍奮闘している様子が端的に描写された良記事です。
個人的にインスパイアされた部分は
対馬市では美しい海を取り戻すため、漁業者などの協力を得ながら回収事業に取り組んでいる。予算などの関係から全量を回収することはできず、年間約8000立方メートルにとどまる。山がちな対馬では、急峻(きゅうしゅん)で複雑な地形条件が相まって、海岸へのアプローチや搬出作業は容易ではなく、細々としたゴミまでも回収するのは極めて困難だ。
海ゴミの約7割がプラスチック類であり、放置状態が続けば、プラスチックの劣化が進み、温室効果ガスの排出やマイクロプラスチック化につながる。マイクロプラスチックが堆積している海岸もあり、海がしければ海中に流出し、日本海沿岸に影響を及ぼす恐れがある。だからこそ対馬での早期回収は、対馬だけのためでなく、わが国の海洋プラゴミ問題にとって重要な取り組みなのである。
「日本全体のためにも、プラごみの防波堤という立場を余儀なくされている対馬に漂着する廃棄物を回収することが重要」という視点は、恥ずかしながら、これまで考えたことがありませんでした。
現行の廃棄物処理法では、海岸に漂着した廃棄物は「一般廃棄物」でしかないため、海岸を管理する自治体の負担において、一般廃棄物として処理するしかありません。
河川や湖沼においても、漂着廃棄物の処理は同じルールとなります。
しかしながら、漂着物の大半が海外からの物である以上、
対馬市民が払った税金で、国外からの漂着廃棄物を処理し続けることは「理不尽」と言えます。
誰もこのような過激な表現を取りませんが、対馬の場合は、避けることのできない災害に常に遭遇していることになります。
ここで提言と言いましょうか、発想の転換と言う方が正確かもしれませんが、
このような漂着廃棄物については、従来の「一般廃棄物」「産業廃棄物」とは異なる、新たな廃棄物の種類を創設し、国の責任で処理をすべきと考えました。
最初は「国際廃棄物」という指名手配犯のような名称を思いつきましたが、
そのものズバリで「漂着廃棄物」の方が、誰でもわかる用語になりそうです(笑)。
もはや、漂着した海洋プラごみの処理は、国防としても位置付けられるテーマですが、
財源やマンパワーに限りがある地方自治体に国防まで押し付けるという状態は、
末期の江戸幕府と同じなのではないでしょうか?
ただし、国が直轄で廃棄物処理に乗り出すと、今までろくなことがありませんでしたので、
「国は金だけを出す」という状態がよろしいかと思います。
具体的には、国が「漂着プラごみの回収費」に「若干の上乗せ」をして、買い取る
そして、買い取った後の漂着プラごみの処理については、地元市町村の選択に任せ、国はその処理費を負担する
とすれば、国が新たな設備投資をせずとも、わずかな財源で効率的な処理が進むものと(無責任に)考えます。
漂着ごみのデポジットのような政策ですが、
デポジットが最強の廃棄物回収システムであることは、数々の事例で証明されている事実です。
「財源はどうするのだ~」という反論が容易に予想できますが、
漂着ごみの買取費が、国全体の予算に占める割合は微々たるものです。
「財政均衡」へのこだわりを捨てれば、財源は容易に捻出できるものと(これまた無責任に)思います。
組織の肥大化を企図している環境省の参考になれば幸いです。
« 川崎市が一時多量ごみの受入れを開始 協同組合の施設(平成5年3月31日付衛産36号より抜粋) »
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2020年8月3日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
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