措置命令規定の変遷

「昭和54年11月26日環整128号 環産42号」という通知に掲載されている疑義解釈に、下記のようなものがあります。

問109 収集、運搬業者の持つ保管施設(廃油タンク)から廃油が流出し、付近の河川に流れ込んだ。この業者は他に同様のタンクを3基有しており、これらのタンクも破損及び廃油流出のおそれがあるので、法第19条の2第1項(注:現行法では第19条の5)に規定する措置命令をかけたいがどうか。
答 当該保管が処分行為と認められるものであれば法第19条の2(注:現行法では第19条の5)第1項に基づき、施設の修繕を命ずることもできる。

昭和54年当時の法律に則った解釈であるため、現行法とずれが生じているのは仕方がないことですが、
当時の法律からしても、このような解釈が導けるかどうかは疑問に思います。

昭和54年当時の措置命令規定(昭和51年改正で追加された条文)

第十九条の二 次の各号に掲げる場合において、生活環境の保全上重大な支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認められるときは、当該各号に定める者は、必要な限度において、当該処分を行つた者(第六条第二項の規定により当該処分を行つた市町村及び第十条第二項又は第三項の規定によりその事務として当該処分を行つた市町村又は都道府県を除くものとし、第十二条第四項又は第十四条第七項の規定に違反する委託により当該処分が行われたときは、当該処分を委託した者を含む。)に対し、その支障の除去又は発生の防止のために必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。

一 第六条第三項の政令で定める基準に適合しない一般廃棄物の処分が行われた場合 市町村長
二 第十二条第一項の政令で定める基準に適合しない産業廃棄物の処分が行われた場合 都道府県知事

当時の法律では、「処分」としか書かれていないため、保管用のタンクから漏れ出すような場合は、保管基準違反ではありますが、「タンクを壊して廃油を垂れ流そう」と思って実行しない限り、処分基準違反とは解釈できないからです。

逆に、昭和51年改正で加わった措置命令規定では解釈できない場面が多すぎたからこそ、その後の度重なる法律改正で現在の第19条の5のような形に落ち着いたとも言えます。
直近では、平成22(2010)年改正で、さらに措置命令の対象者が拡大されたところです。

第十九条の五  産業廃棄物処理基準又は産業廃棄物保管基準(特別管理産業廃棄物にあつては、特別管理産業廃棄物処理基準又は特別管理産業廃棄物保管基準)に適合しない産業廃棄物の保管、収集、運搬又は処分が行われた場合において、生活環境の保全上支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認められるときは、都道府県知事(第十九条の三第三号に掲げる場合及び当該保管、収集、運搬又は処分を行つた者が当該産業廃棄物を輸入した者(その者の委託により収集、運搬又は処分を行つた者を含む。)である場合にあつては、環境大臣又は都道府県知事。次条及び第十九条の八において同じ。)は、必要な限度において、次に掲げる者(次条及び第十九条の八において「処分者等」という。)に対し、期限を定めて、その支障の除去等の措置を講ずべきことを命ずることができる。

一  当該保管、収集、運搬又は処分を行つた者(第十一条第二項又は第三項の規定によりその事務として当該保管、収集、運搬又は処分を行つた市町村又は都道府県を除く。)
二  第十二条第五項若しくは第六項、第十二条の二第五項若しくは第六項、第十四条第十六項又は第十四条の四第十六項の規定に違反する委託により当該収集、運搬又は処分が行われたときは、当該委託をした者

現行法の第19条の5であれば、タンクからの流出という事態に対して、問題なく措置命令がかけられます。

ちなみに、保管基準違反が措置命令の対象になったのは、平成22(2010)年改正からです。

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