廃バッテリーから発生する粗芒硝液が廃棄物として認定される

2014年9月12日付で経済産業省から、
「廃バッテリーに含まれる粗芒硝液を芒硝液に加工する業務を委託する場合、粗芒硝液は廃棄物に該当する」という判断が示されました。

※経済産業省の公表内容
産業競争力強化法の「グレーゾーン解消制度」の活用! ~鉛バッテリーを原料とする粗芒硝液の廃棄物への該当性が明確化されました~

1.「グレーゾーン解消制度」の概要
産業競争力強化法に基づく「グレーゾーン解消制度」は、事業に対する規制の適用の有無を、事業者が照会することができる制度です。
事業者が新事業活動を行うに先立ち、あらかじめ規制の適用の有無について、政府に照会し、事業所管大臣から規制所管大臣への確認を経て、規制の適用の有無について、回答するものです。(本件の場合、事業所管大臣は経済産業大臣、規制所管大臣は環境大臣です。)

2.「グレーゾーン解消制度」の活用結果
現行の廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃掃法」という。)は、同法第2条において「廃棄物」を定義しています。また、同法を所管する環境省は、「行政処分の指針について(通知)」(平成25年3月29日付け 環廃産発第1303299号 環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課長通知)において、「廃棄物」への該当性の判断要素として、物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無、占有者の意思を挙げています。
今般、使用済み鉛バッテリーに含まれる鉛を精錬する事業者より、使用済み鉛バッテリーの電解液等を原料として生成される粗芒硝液(※)を市販工業薬品である芒硝液に加工する業務の第三者への委託に当たり、当該粗芒硝液が廃掃法における「廃棄物」に当たるか否か等について、照会がありました。
※「粗芒硝液」とは、主成分として芒硝(硫酸ナトリウム:Na2SO4)を、不純物として鉛等を含有する溶液をいう。
関係省庁で検討を行った結果、当該粗芒硝液は「廃棄物」に該当する旨の回答を行いました。
これにより、今回の照会における粗芒硝液を取り扱う際に、廃掃法に基づく処理基準の遵守等の必要な措置が明確化されました。

当ブログ2014年4月10日付記事 「化審法におけるグレーゾーン解消の動き」 で、グレーゾーン解消精度の簡単な紹介をしていましたが、

申請様式や実際の活用実績などが、下記のURLで経済産業省から公開されていますので、必要な方はご参照ください。
企業実証特例制度・グレーゾーン解消制度

battery
さて、肝心の粗芒硝液の廃棄物該当性の判断に関してですが、
実は、この発表内容だけでは、粗芒硝液が廃棄物に該当すると決めつけることはできません。

なぜなら、経済産業省の発表には、「誰が」そして「誰の費用負担で」、粗芒硝液を芒硝液に加工するのかが書かれていないからです。

また、そもそものバッテリーをどうやって集めるのかも非常に重要なポイントです。

そのような判断材料を抜きにして、粗芒硝液が廃棄物か否かを判断することはできません。

もっとも、「粗芒硝液は廃棄物である」と環境省が判断を下したことから察すると、判断の過程においては上記の情報が十分吟味されたものと思います。

今回の発表は、最終結論のみを公開したものと思われます。

しかし、実務的に重要なのは、最終結論ではなく、「最終結論に至るまでの論理展開」です。

その論理展開の空白部分を埋めるため、以下、筆者の独断と偏見で事業フローを想像してみますが、実例への適用は自己責任でお願いします(笑)。

A社 廃バッテリーの処理許可を持つ中間処理業者
B社 粗芒硝液を芒硝液に加工する設備を持つ事業者

1.A社が排出事業者より産業廃棄物として廃バッテリーを回収。
2.A社には粗芒硝液を芒硝液に加工する設備が無いため、粗芒硝液の加工をB社に依頼。
3.ここで問題。
 「A社が排出する粗芒硝液は産業廃棄物から抽出したものだが、B社に加工委託する場合は産業廃棄物として処理委託する必要があるのか?」
 「B社に加工委託をするが、加工後に廃液を全量A社に戻してもらうのだが」(注:←このあたりは完全に筆者の想像です)
4.環境省は、「そもそもが産業廃棄物から抽出した不要物(そのままではA社は使用できない)であるため、粗芒硝液は廃棄物である。」と判断。

という、論理展開があったのではないかと推測しています。

注釈ばかりで恐縮ですが、上記は筆者の想像に過ぎませんので、実際の当事者はA社だけかもしれませんし、逆にもっと複雑な事業フローである可能性もあります。

重要なことは、経済産業省の発表内容の結論を鵜呑みすることではなく、結論に至るまでの論理展開を理解し、他の事例に応用することです。

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