千葉市が排出事業者に対して措置命令を発出
一月前の行政処分になりますが、それほど大きく報道されていませんでした(少なくとも関西では)ので、見落としておりました。
千葉市が排出事業者に措置命令を発出したのは初めてとのことですが、
撤去費用を負担した排出事業者の名称を伏せるなど、色々と工夫をされている様子が見受けられます。
緑区平川町の旧産業廃棄物中間処理施設に堆積されている産業廃棄物を撤去する行政代執行に関して、下記のとおり、廃棄物の処理及び清掃に関する法律第19条の5の規定により、排出事業者に対して産業廃棄物を撤去させる措置命令を発しましたので、お知らせします。 なお、本市が措置命令を排出事業者に発したのは、今回が初めてです。
1 措置命令の概要
(1)措置命令の対象となった排出事業者の数 9社
(2)撤去を命じた産業廃棄物の合計量 577.3m3※参考 自主撤去費用に換算した額 約1,318万円
2 措置命令の名宛人等、撤去を命じた産業廃棄物の量(m3)及び発出日
(略)3 措置命令を発した理由の概要
(1)産業廃棄物の適正処理に係る基準違反
産業廃棄物最終処分場にて埋め立てられることも再生されることもなく、旧産業廃棄物中間処理施設(緑区平川町)に放置されている。
(2)産業廃棄物処理委託契約書に係る規制違反
ア 作成義務違反
イ 法定記載事項記載義務違反
ウ 保存義務違反
(3)産業廃棄物管理票(マニフェスト)に係る規制違反
ア 法定記載事項記載義務違反
イ 保存義務違反
ウ 措置義務違反
例:返却されてきた産業廃棄物管理票の写し(E票)の最終処分場の欄に産業廃棄物中間処理業者であった株式会社千葉福祉建設公社の名称等が記載されていたにもかかわらず、処理状況を調査等の上千葉市長に報告しなかった。4 措置命令に至る経過
(1)自主撤去又は撤去費用の負担の要請
千葉市は、行政代執行の施工にあたって市税の投入を最大限に縮減するために、旧産業廃棄物中間処理施設に放置されている産業廃棄物の排出事業者延べ289社に対して、自主撤去又は撤去費用の負担を企業の社会的責任の履行として求めてきた。その結果、平成24年6月末現在で、次のとおり排出事業者の協力を得ることができた。
ア 自主撤去 64社 約1万400m3
イ 撤去費用の負担 45社 約850万円
(2)任意の協力依頼の拒否から法的責任の追及へ
しかし、平成22年10月から約1年半をかけて排出事業者に任意での協力を求めてきたにもかかわらず、なお、行政代執行に着手した平成24年1月31日の段階になっても応じない排出事業者が残った。
そこで、法的責任を追及することとし、証拠書類等を再精査して事実認定を疑わしきは排出事業者に有利となるように配慮して確定した上、措置命令を順次発することとした。
なお、旧産業廃棄物中間処理施設の設置者であった株式会社千葉福祉建設公社並びにその代表取締役1名及び取締役2名に対しては、措置命令を平成22年9月30日に発出済みである。5 今後の予定
(1)行政代執行費用の強制徴収
措置命令の名宛人に対しては、措置命令が履行されなかった場合に、行政代執行費用の納入命令を発し、当該納入命令も履行されなかったときには、強制徴収する。
(2)その他の排出事業者に対する措置命令等
今回の9社以外にも、13社に対して措置命令を発する予定である。
なお、本市としては、措置命令を発するまでに排出事業者から自主撤去又は費用負担の申出があった場合には、これを受け入れることとする。
上記の記者発表のうち、委託者(排出事業者)にとって重要なポイントは、下記の措置命令の理由です。
(2)産業廃棄物処理委託契約書に係る規制違反
ア 作成義務違反
イ 法定記載事項記載義務違反
ウ 保存義務違反
(3)産業廃棄物管理票(マニフェスト)に係る規制違反
ア 法定記載事項記載義務違反
イ 保存義務違反
ウ 措置義務違反
今回の措置命令の対象となったのは、地場の建設業者が中心のようで、さすがに上場企業は会社名が上がっていないようです。
※もっとも、措置命令の対象となる前に、自主撤去をした可能性もありますが
いつも講演では繰り返しお話しすることですが、
委託者に措置命令が出されるきっかけは、「委託契約書」と「マニフェスト」の不備です。
今回は、委託契約書を作成していなかった、あるいは保存をしていなかったという、非常に大雑把な委託基準違反が多かったようです。
法定記載事項の不備は、おそらく「委託料金」や「産業廃棄物の種類」の記載漏れではないかと思います。
マニフェストに関する違反も同様の傾向で、
法定記載事項の不備とありますから、おそらく「廃棄物の数量」や「産業廃棄物の種類」の記載漏れだと思います。
「零細企業だから法律を知らなくても当然」とお目こぼしを期待することはできませんので、産業廃棄物処理に少しでも関与する当事者は、最低でも、委託契約書とマニフェストの運用だけはしっかりと行うことが肝要です。
ちなみに、この現場での廃棄物撤去費用は、577.3立方メートルで約1,318万円になるとのことですので、
1立方メートルあたり22,830円という計算になります。
ここからさらに現場から処理施設までの運搬費や処理費を含めると、1立方メートルあたり3万円以上になると思われます。
委託先の選定を間違えると、これだけの実質的な損失に発展しますので、企業利益を守るためにも選定は慎重に行いたいところです。
« ヤマト運輸子会社が遺品整理事業に参入した理由と勝算 青森・岩手県境不法投棄事件に関する納付命令(再委託) »
タグ
2012年8月1日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
カテゴリー:排出事業者の責任