e-文書法と産業廃棄物処理委託契約書の関係

平成16年12月に制定された法律ですので、今更ながらの感もいたしますが、実務的には(地味に)重要なトピックであるため、はじめて取り上げます。

通称「e-文書法」、正式な名称を「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」と言いますが、
保存するのにかさばる契約書などを、書面ではなく電磁的記録として保存するのを認める法律です。

廃棄物処理法では、産業廃棄物の委託契約書などを書面として作成・保存する義務が定められていますが、
「e-文書法」と、「環境省の所管する法令に係る民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律施行規則(←長! (-_-;)」に基づき、委託契約書を書面ではなく電磁記録で運用保存することが認められています

大手の処理業者になるほど、膨大な委託契約書の作成保存が必要となりますので、e-文書法のメリットを受けることができそうです。

ただし、e-文書法の適用対象は、上記の施行規則によって限定列挙されていますので、全ての書類が電子保存可能というわけではありません!

具体的に施行規則で電子保存が認められている文書は下記のとおりです。

電子保存可能な文書(上記施行規則第3条及び別表1)

    一般廃棄物処理業者の帳簿
    産業廃棄物処理業者の帳簿
    産業廃棄物処理施設の設置事業者の帳簿
    特別管理産業廃棄物排出事業者の帳簿
    情報処理センターの帳簿
    一般廃棄物を船舶で運搬する際に備え付ける書類
    産業廃棄物を船舶または車両で運搬する際に備え付ける書類
    産業廃棄物処理委託契約書とその添付書類(許可証の写しなど)
    産業廃棄物の再委託承諾書、再受託者に渡す文書

※2011年2月1日追記
1月28日の上記施行規則改正により、「処理困難通知の写し」も追加されました

実務上のポイントとしては、上記の9種類の文書のみが、電子保存可能な文書であることです。

上記の9種類には、産業廃棄物管理票(紙マニフェスト)が含まれていないことに注意が必要です。

紙マニフェストを電子化して運用する人はいないと思いますが、
「保存スペースがかさばるから」という理由で、交付後5年未満の紙マニフェストをスキャン後に捨て、PDFデータでしか保存しないというのは、廃棄物処理法違反になります!

紙マニフェストは返送後5年間(A票は交付後5年間)の保存義務があるからですね。

廃棄物処理法の規制趣旨からいっても、
紙マニフェストはそれぞれの当事者が保存する唯一無二の記録になりますので、万が一電子データが消失した場合、産業廃棄物を適切に処理したという記録が一切残らないことになります。

委託契約書の場合は、排出事業者と処理業者の双方が同じ文書を保存しているため、万が一のバックアップも可能ですが、紙マニフェストの場合はそうもいきません。

応用問題として、返送後7年を経過したマニフェストの場合はどうなるでしょうか?

この場合は、本来の5年間の保存義務の対象からは外れるため、スキャン後にPDFなどで保存しても何ら問題ありません。

え? 保存義務がないなら保存しなくてもいいんじゃないのか? 

確かに法律的な義務としてはそのとおりですが、行政処分の対象には時効がありませんので、過去の不法投棄が新たに発覚した場合、5年以上前の委託状況を報告聴取される可能性は十分あります。

そのような場面で、「5年前の書類だから全部捨てました<`~´>」では、措置命令の対象には絶対にならないとは言い切れません。

数万円で便利なスキャナが買える時代ですので、法律の保存期間を超えて、できるだけ長期間マニフェストや委託契約書は電子保存しておきたいものです。

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