委託契約書に関する誤解集

今回は委託契約書に関してよく耳にする誤解についての特集です。

誤解1 「契約書」ではなく、「覚書」というタイトルで委託契約をするのは廃棄物処理法違反だ。

正解 契約書のタイトルが、「契約書」であっても、「覚書」であっても、当事者が合意をし、法定記載事項を満たした文書であれば、法的な効力は一緒です。
 肝心なのは、法定記載事項を網羅した文書を取り交わすことです。

誤解2 印紙を貼っていない委託契約書は廃棄物処理法違反だ。

正解 印紙の添付がないからといって、契約書の効力には影響がありません。そのため、印紙の添付がない委託契約書も、法定記載事項さえ満たしていれば有効です。
 ただし、契約書文書に印紙の添付がないということは、印紙税の脱税になります。

誤解3 排出事業者側のみで契約書正本を保存。処理業者側では正本のコピーのみを保存しているような場合、正本のコピーには印紙の添付不要だ。

正解 国税庁のタックスアンサーには以下のように記載されています。

 契約書は、契約の当事者がそれぞれ相手方当事者などに対して成立した契約の内容を証明するために作られますから、各契約当事者が1通ずつ所持するのが一般的です。この場合、契約当事者の一方が所持するものに正本又は原本と表示し、他方が所持するものに写し、副本、謄本などと表示することがあります。しかし、写し、副本、謄本などと表示された文書であっても、おおむね次のような形態のものは、契約の成立を証明する目的で作成されたことが文書上明らかですから、印紙税の課税対象になります。

(1) 契約当事者の双方又は文書の所持者以外の一方の署名又は押印があるもの

(2) 正本などと相違ないこと、又は写し、副本、謄本等であることなどの契約当事者の証明のあるもの

 なお、所持する文書に自分だけの印鑑を押したものは、契約の相手方当事者に対して証明の用をなさないものですから、課税対象とはなりません。
 また、契約書の正本を複写機でコピーしただけのもので、上記のような署名若しくは押印又は証明のないものは、単なる写しにすぎませんから、課税対象とはなりません。
 このように、印紙税は、契約の成立を証明する目的で作成された文書を課税対象とするものですから、一つの契約について2通以上の文書が作成された場合であっても、その全部の文書がそれぞれ契約の成立を証明する目的で作成されたものであれば、すべて印紙税の課税対象となります。

 重要なのは赤字の部分なのですが、処理業者のところで契約書のコピーを保存するのは、「契約の成立を証明する目的」であるはずです。
 そうである以上、「単なるコピー」ではなく、印紙の課税対象である文書ということになりますので、印紙の添付が必要です。

 「いや、処理業者には委託契約書の保存義務がないので、これはただの“趣味”でコピーを保存しているのだ!」という場合なら、印紙の添付が不要となるかもしれませんが、
 取引の当事者として、トラブルがあった時の証拠資料にするためにコピーを保存しているのが一般的ですので、そのような詭弁が成立するとは思えませんね。

 今のところ
 「契約書 コピー 印紙不要」というキーワードで検索をすると、
 「契約書の単なるコピーには印紙不要」と説明している税理士のHPがたくさんヒットします。

 しかし、それらのHPをよく見ると、「単なるコピー」=「印紙不要」と言っているだけですので、
 実務的にコピーを保存している実態とはかい離した机上の空論となっています。

 特に、「本契約書の成立の証として本書を1通作成し、甲乙記名捺印の上、甲(排出者)が原本を保有し、乙(処理業者)は本書の写しを1通保有する。」と契約書に記載しているような場合は、
 もろに上述した「契約の成立を証明する目的」に抵触することになりますので、コピーにも印紙の添付必要と自認していることになります。

 HPの情報や専門家の意見をむやみに鵜呑みにせず、1次情報(この場合は、国税庁のタックスアンサー)を参照するのが一番安全です。

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コメント

  1. たまお より:

    誤解3の解説を読むと、契約の成立を証明する目的で作成された、ただコピーした写しにも印紙を貼る必要があると記載している様に読み取れます。
    「契約書の正本を複写機でコピーしただけのもので、上記のような署名もしくは押印または証明のないものは、単なる写しにすぎませんから、課税対象とはなりません。」
    とありますので、契約の成立を証明する目的とするために、コピーした紙面に、相手方の署名、押印、又は写しであることの証明をする必要があり、その場合に印紙が必要なのでは?

  2. 尾上雅典 より:

    「契約書の正本」と「写し」の両方を保存している場合は、「写し」は印紙税の課税対象とならず
    「写しだけ」を「契約書の正本の代わり」として保存している場合は、「契約の成立を証明する目的」で文書(写し)を保存しているため、「写し」が印紙税の課税対象となる
    という趣旨で、記事を書いたつもりでありましたが、
    私の独りよがりな表現になっていたかもしれません。

    上記を補足として読み進めていただくと、言わんとする趣旨がさらにわかりやすくなるかと思います。

    ご指摘ありがとうございます。


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