日本でAppleと同様のPCリサイクル事業ができるか

Appleが無料のPCリサイクルを開始 の続編です。

今回は、
国土の広いアメリカでPCリサイクルができるなら、日本でもすぐできるんじゃないのか?
を検証します。

Apple社は、回収費と処分費用のすべてを無償回収しています。

日本で同等の事業を行う場合は、回収側が要求する諸経費が無償か有償かで、必要な許可が大きく異なります。

回収側がPCを買い上げたり、完全に無償で引き取る場合は、PCは廃棄物ではなく古物になります。

Appleのように、回収側が引取りの対価として金銭を支払う場合は、そもそも不用物ではありませんので、廃棄物ではありません。
これはわかりやすいと思います。

問題は、「完全に無償で引き取る」の「完全」の部分。

日本でも、引取り費用は無料ですが、PCを回収事業者側に送る際の宅配便の料金は自己(元々の所有者)負担
という宣伝文句を並べている、回収業者がたくさんあります。

この場合、引取り費用 0円 - 宅配料金 ●●●円 = ▲ ●●●円 で
元々の所有者はPCを処分したことで、お金が増えることは無く、逆に運送費を負担することになります。

こうなると、不用品を処理するために、他者に有償で処理を委託しているのと同様になりますので、
回収事業者には、廃棄物処理業の許可が必要となります。

別の言い方をすると、
運賃を差し引いてもPCの買取価格の方が高くなるようにするか、
Appleのように送料まで回収事業者が負担するような場合のみ
廃棄物処理業の許可取得は不要です。(古物商の許可は別途必要)

Appleのように、MacやiPadを買ってもらうために、PCを無償回収するという目的がある企業は別ですが、
PCの部品取りやリユースにしか関心が無い大部分の企業の場合、運賃まで自社で負担していては赤字になってしまいます。

そのため、Appleのやり方を完全踏襲しない限り、日本で同内容の事業をやる場合は、廃棄物処理業の許可が必要となります。

しかしながら、各都道府県ごとに廃棄物処理業の許可を全部受けるのは事実上困難です。

そこで、製造事業者のみへの特例として、「産業廃棄物処理の広域認定」という制度が作られました。

広域認定制度とは
環境大臣の認定を受けた事業者は、地方自治体から産業廃棄物処理業の許可を取得せずとも、日本全国で廃棄物の回収・処理ができるというものです。

PC製造メーカー等は「一般社団法人パソコン3R推進協会」を組織し、協会が広域認定を取得しています。

協会が公表している 使用済みパソコンの回収及び再資源化実績 を見ると
産業廃棄物となる事業用PCの回収実績は、平成22年度で約44万台(デスクトップ、ノート、ディスプレイの合算)とのことです。

1年間で出荷されるビジネス向けPCは約700万台だそうですので、半分が買い替え需要だとすると、
300万台程度は廃棄に回ってもおかしくないはずです。

協会の処理実績の44万台も立派な数字かもしれませんが、広域認定ルート以外に、
中古市場その他に相当量のPCが流れているということになります。

広域認定に流れる量が少ないのは、「引取り依頼の手間」と「回収料金」「処理料金」の負担のせいだと思われます。

Appleの日本法人も、上記の協会の一員としてPC処理をしていますので、
メーカー単独では、PCの完全無償回収は困難ということなのでしょう。

ひょっとすると、いずれは中国や韓国企業が、日本でもPC無償回収事業を立ち上げるかもしれません。

そうなると、日本国内のシェア比率も大きく変化することになると思いますが、
日本メーカーの備えはいかに?

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