取引先処理業者が合併された場合の委託契約書の取扱い

単なる社名の変更ではなく、産業廃棄物処理業者が他の企業に吸収合併され、産業廃棄物処理業許可の新規取得が必要になった場合は、かなり複雑な対応が必要となります。

吸収合併にせよ、新設合併にせよ、合併される側の処理企業の法人格は消滅することになりますので、産業廃棄物処理業許可は合併日の前日までに廃止することになります。

会社法では、合併後に残る会社(存続会社、新設合併の場合は新設会社)が、「消滅会社の権利義務を包括的に承継する」と定められていますが、
産業廃棄物処理業許可の場合は、合併に伴い許可を承継させることを認める規定がありませんので、合併後に残る会社が、産業廃棄物処理業許可を改めて取得する必要があります。

産業廃棄物処理施設に関しては、相続や合併に伴う譲渡手続きがありますが、肝心の業許可にはそのような譲渡に関する規定は無いのです。

そのため、消滅(する)会社が許可を廃止した時点で、その日以降は消滅会社には委託ができないということになります。

一般的な商取引行為とは異なり、産業廃棄物処理委託先は許可業者(あるいは法律で許可業者と同等に位置づけられている相手)でなければなりませんので、委託先業者が許可を失った時点で契約解除をする、またはその日以降は委託をしないようにしないといけません。

契約当初は許可を所持していた委託先が許可更新を怠たり、許可を失効させた場合と同様の状況となります。

契約書に一工夫

なお、一般的な産業廃棄物処理委託契約書の雛型においては、委託先業者の許可喪失が契約解除条件として挙げられていない物が多いため、注意が必要と思います。

暴力団等の反社会的勢力の排除条項を加えている雛形は多く、しかも相手方が暴力団関係者であることが判明したら、「催告なしに解除する」とかなり強い規定が置かれています。

その一方で、業務委託契約書の雛型には必ずと言っていいほど盛り込まれる、相手方の「破産」や「小切手の不渡り」等の約定解除条件が盛り込まれていない雛型がほとんどです。

委託先業者の許可喪失の場合も、契約の成否に直結する非常に重要な事項なので、「催告なしの解除」対象とした方が望ましいでしょう。
委託者と受託者の双方の手間を省くという意味でも。

排出事業者の場合

委託先処理業者が合併をされる場合は、新規許可取得日に合わせ、新たな産業廃棄物処理委託契約を行う必要があります。

当然、契約書には、新しい産業廃棄物処理業許可証の写しの添付も必要です。

処理業者の場合

契約の締結に先立ち、存続会社(あるいは新設会社)による新規許可取得が不可欠です。

そのため、許可権者である行政とは綿密に打ち合わせをし、許可取得にかかる期間を極力短縮してもらうことが必須となります。

また、許可日と合わせて、顧客と契約書を改めて交わす必要がありますので、顧客の数が多ければ多いほど、迅速かつ確実な対応が必要となります。

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コメント

  1. 波多野 より:

    いつも拝見させていただいております。

    この文書の合併する側の会社は産廃許可を持っていない会社の仮定でよろしいでしょうか?
    合併する側(存続会社)が産廃許可を持っているかつ吸収する側の許可をすべて持っている場合は、廃止会社の委託契約書の変更は必要ないと考えても差し支えないと思いますがどうでしょうか?

  2. 尾上雅典 より:

    波多野 様 コメントいただき、ありがとうございました。

    契約の要否に関する理解が進みやすいご質問だと思いました。

    ただ、やはり、業許可の承継を認める規定が無い以上、消滅会社との契約は消滅会社の廃業と同時に無効になりますので、存続会社が同一自治体の許可を所持していたとしても、新たに存続会社と契約をし直す必要があると考えております。


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