処理業者が合併されたら委託契約書はどうなる?

当ブログ2015年12月21日付記事 「取引先処理業者が合併された場合の委託契約書の取扱い」で、既に結論は書いておりますが、今回は、法律に明るい方ほど陥りやすい落とし穴とその原因について考察します。

ちなみに、委託先の処理業者が合併された場合、吸収合併した会社との新たな委託契約が必要となります。

その理由を簡単におさらいしておきます。

  1. 廃棄物処理法には、業許可の譲渡承継を認める規定が存在しない。
  2. 吸収合併にせよ、新設合併にせよ、合併される側の処理企業の法人格は消滅することになり、産業廃棄物処理業許可は合併日の前日までに廃止することになる。
  3. 許可を廃止した時点で「無許可業者」になるため、その日以降はその業者に処理委託をできなくなる。

しかしながら、企業法務に明るい方ほど、会社法の「合併後に残る会社(存続会社、新設合併の場合は新設会社)が、消滅会社の権利義務を包括的に承継する」という規定に引きずられ、「産業廃棄物処理企業が合併された場合も、通常の合併手続きである以上、契約書の再作成は必要無し!許可証の写しも消滅会社のままで良い」という判断をする傾向にあります。

もしもその判断のとおりに行動すると、
とっくの昔に廃業した業者との契約書しか保存していないこととなり、委託者は廃棄物処理法第26条の罰則の対象(委託基準違反)となります。

そのため、新規許可を受けた存続会社と、新しい許可証の写しを添付した上で、改めて産業廃棄物処理委託契約を締結する必要があるのです。

何も難しいことは言っておらず、ある意味廃棄物処理法の基本原則を述べたにすぎませんが、なぜ企業法務に明るい方ほど間違った判断を下すのかが長年の疑問でした。

その理由の一端は、「銀行の相次ぐ合併」にありそうです(笑)。

一般社団法人全国銀行協会 平成元年以降の提携・合併リスト より一部を転載。

「いつの間にか取引銀行が他行と合併し、急に銀行名が変わった」という経験は、ほぼ全員の方がされたことと思います。

銀行が合併したとしても、預金者の預金額が変化することはありませんし、引き出しもそれまでと同様の方法で行えますので、「合併は、預金者である我々とは無関係なのだな」という思いを強くしがちです。
※話を分かりやすくするために、思い切り表現を簡略化しております。

もっとも、銀行業を営む場合は、銀行法第4条に基づき、内閣総理大臣から免許を受けなければなりませんので、行政の許認可に服するという意味では、産業廃棄物処理業と共通面があります。

ただし、銀行法では、「合併に関する認可」と「みなし免許」の規定があり、合併に関する認可を事前に受ければ、合併と同時にみなし免許で銀行業が行えるという明文の規定が置かれています。

銀行法
(合併、会社分割又は事業の譲渡若しくは譲受けの認可等)
第三十条 銀行を全部又は一部の当事者とする合併(当該合併後存続する会社又は当該合併により設立される会社が銀行であるものに限るものとし、金融機関の合併及び転換に関する法律第三条(合併)の規定による合併に該当するものを除く。以下この章において「合併」という。)は、内閣総理大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
2~4 略

(みなし免許)
第三十二条 第三十条第一項の認可を受けて合併により設立される銀行業を営む会社は、当該設立の時に、第四条第一項の内閣総理大臣の免許を受けたものとみなす。

産業廃棄物処理業に関しても、銀行法のような「合併の認可」や「みなし許可」制度があれば、もっと円滑な企業合併が進むかと思いますが、「無いものは無い」以上、煩わしいことではありますが、新設会社との新たな契約が必要となります。

なお、産業廃棄物処理業者には、各企業ごとに個別の許可番号が環境省によって割り振られており、吸収合併をしたとしても、消滅会社の番号をそのまま承継するわけではありません。
(通常は、廃業した場合、その業者の許可番号は永久欠番となります。永久欠番なんてカッコいい!?)

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