自ら運搬の場合のマニフェスト

 2010年改正により、少量の建設廃棄物を、下請業者が排出事業者として自ら運搬することが可能になりました。

 具体的には、
 新築・増築・解体工事を除く建築工事で、
 1回あたり1立方メートル以下の建設廃棄物を
 元請業者との工事請負契約で運搬先を指定されている 場合

 と、条件が厳しく限定されています。

 通常の産業廃棄物の運搬の場合、マニフェストの「運搬受託者」欄には、
産業廃棄物収集運搬業の許可を持った事業者の名称などを記載する必要があります。

 しかしながら、上記の条件にあてはまる下請業者の自ら運搬の場合、
 マニフェストの「運搬受託者」欄には、誰を記載するべきなのかという疑問がわきます。

 公式見解としては、環境省が既に下記のように回答をしています。

 http://www.env.go.jp/recycle/waste_law/kaisei2010/qa.html

Q11 法第21条の3第3項の適用を受けて下請負人が運搬を行う場合、処分の委託に係るマニフェストは下請負人が交付すればよいのですか。
A11 この場合であっても、元請業者がマニフェストを交付する必要があります。

Q12 Q11の場合、下請負人の氏名等を運搬受託者欄に記入すればよいのですか。
A12 この場合、元請業者と下請負人の間に委託関係はないため、運搬受託者欄は空欄となります。

 結論は、「運搬受託者欄には何も記載しなくて良い」ということになります。

下請が自ら運搬する場合の基本的マニフェスト記載例(クリックすると拡大)

 確かに、法律の条文上は、そのような解釈運用で違法性は無いと言えます。

 しかし、産業廃棄物の不適正処理という「全体最適」を実現するためには、そのような「部分最適」では、支障が生じるケースが考えられます。

 具体的に説明すると、前掲の環境省のQ&Aには、下請の自ら運搬の際の車両の表示内容について、次のとおり回答されています。

Q4 法第21条の3第3項の適用を受け、下請負人が自ら運搬する場合、車両表示はどのように行うのですか。
A4 この場合において、当該下請負人は、「事業者」の立場を有していることから、「事業者」としての車両表示を行うこととなります。

 「部分最適」だけを考えると、正論です。

 しかし、全体の流れに沿って考えると、マニフェストの交付者とは違う下請業者が産業廃棄物を運搬してくるのに、その下請業者は、マニフェスト上に一切記録されないということになります。

 中間処理委託契約書にも、下請業者の名称は一切出てきません。
(下請業者は、運搬の受託者ではないからですね)

 こうなると、記録に一切残らない事業者が廃棄物処理に介在することとなり、不法投棄などが発生した際には、行為者を突き止めることが少し困難になりそうです。

 いくら少量の廃棄物とはいえ、収集運搬の許可が不要で、マニフェストその他一切の記録が残らない、ということになると
 その気になれば、簡単に不適正処理が実行できます。

 あまり細かくその方法を解説すると、どこかで真似をする無法者が出ないとも限りませんので、メルマガでは手口の詳細を解説しませんが、遠くない将来に、この手の違反が報告されるように思います。

 法的な最低限の基準としては、環境省の回答どおりに実行すれば、少なくとも、元請業者に対し違法性が問われることはないと思われます。

 しかし、環境省推奨の部分最適手順では、無許可業者の不法投棄リスクを抑えることは困難です。

 記録に残らない事業者が、産業廃棄物処理の一翼を担うからですね。

 ではどうすれば良いのか?

 私としては、元請か下請が、次のようにマニフェストに記載をすることをお奨めします。

 それは、運搬受託者欄に、実際に運搬作業を担う「下請業者」を記載し、なおかつ業許可無しで運搬をしている根拠として、「法第21条の3第3項に基づく自ら運搬」と付記するというものです。

下請の自ら運搬する際のマニフェスト記載例(クリックすると拡大表示)

 下請の自ら運搬の場合は、運搬受託者欄に下請業者を書いたとしても、違法ではありません。

 本来書くべき必要が無い欄に、記録として下請業者名を記載しただけですので、マニフェストの虚偽記載には当たらないからです。

 こうして運用をすれば、マニフェスト上には下請業者の名称や、運搬終了年月日、運搬担当者の氏名などが記録として残りますので、元請・下請業者の双方にとって、適正処理の記録としてマニフェストを使用することが可能となります。

 どうせ使うなら、単なるつじつま合わせでマニフェストを運用するのではなく、適正な処理記録として、戦略的にマニフェストを使ってはどうでしょうか。

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