「産業廃棄物管理票交付等状況報告書」を提出し忘れるとどうなる?
「産業廃棄物管理票交付等状況報告書」は、
廃棄物処理法第12条の3
7 管理票交付者は、環境省令で定めるところにより、当該管理票に関する報告書を作成し、これを都道府県知事に提出しなければならない。
廃棄物処理法施行規則第8条の27(管理票交付者の報告書)
法第12条の3第7項の規定による管理票に関する報告書は、産業廃棄物を排出する事業場(同一の都道府県(地方自治法第252条の19第1項に規定する指定都市又は同法第252条の22第1項に規定する中核市にあつては、市)の区域内に設置が短期間であり、又は所在地が一定しない事業場が2以上ある場合には、当該2以上の事業場を1の事業場とする。)ごとに、毎年6月30日までに、その年の3月31日以前の一年間において交付した管理票の交付等の状況に関し、様式第三号により作成し、当該事業場の所在地を管轄する都道府県知事に提出するものとする。
で、前年度分の交付実績を、翌年6月30日までに産業廃棄物の発生場所を管轄する都道府県知事等に提出する義務があることを、皆様ご存じのことと思います。
この義務に関して、過去の年度分の未提出が発覚し、テレビニュースで報道されるという実例が発生しました。
2025年6月9日付 青森テレビ 「リサイクル燃料貯蔵(RFS) 産業廃棄物の処理状況を青森県に報告する書類を提出していなかったことを明らかに 提出漏れは3年分「再発防止策を進める」」
リサイクル燃料貯蔵=RFSは、産業廃棄物の処理状況を青森県に報告する書類を提出していなかったことを明らかにしました。提出漏れは3年分です。
RFSによりますと、6月30日までが期限だった2024年度分の報告書を作成するにあたり、担当者が2023年度分の実績を確認しようとしたところ、報告書が見当たらず、提出漏れが発覚したということです。
テレビ報道では「産業廃棄物の処理状況(の報告)」とありますが、正確には、リサイクル燃料貯蔵が自ら発表しているとおり「産業廃棄物管理票交付等状況報告書」のことです。
青森テレビの報道では、RFS社が重大な廃棄物処理法違反をしたかのように表現されていますが、実際のところは、単なる「報告漏れ」でしかなく、刑事罰の直罰対象でもありません。
ただし、
廃棄物処理法第12条の6 (勧告及び命令)
都道府県知事は、第12条の3第1項に規定する事業者、運搬受託者又は処分受託者(以下この条において「事業者等」という。)が第12条の3第1項から第10項まで、第12条の4第2項から第4項まで又は前条第1項から第4項まで、第6項、第7項及び第11項の規定を遵守していないと認めるときは、これらの者に対し、産業廃棄物の適正な処理に関し必要な措置を講ずべき旨の勧告をすることができる。
2 都道府県知事は、前項に規定する勧告を受けた事業者等がその勧告に従わなかつたときは、その旨を公表することができる。
3 都道府県知事は、第1項に規定する勧告を受けた事業者等が、前項の規定によりその勧告に従わなかつた旨を公表された後において、なお、正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかつたときは、当該事業者等に対し、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。
という規定がありますので、報告義務違反を認知した都道府県から「(報告を行うよう)勧告」「公表」の対象となる可能性はあります。
勧告を受けた後もそれを無視し続け、報告書の提出を頑として拒んだ場合は「命令」が発出されることがあり、その命令にも違反した場合は、最終的に「1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(廃棄物処理法第27条の2)」の対象となります。
RFS社が、こうした“簡易な”事務ミスをあえて社外に公表した理由は那辺にあるのでしょうか?
もちろん、報告書の未提出は法律違反ではありますし、それほど難しくない(集計の手間は掛かる)書類作成であるため、同様の事象の再発防止を図ることは非常に重要です。
しかし、それは社内のみで徹底すれば事足りる話ですし、社外の人間にとっては無関係な事務ミスでしかありません。
個人的には、「とりあえず後ろめたいと思うことは何でも公表しておけ!」という思考硬直の印象を受けました。
もっとも、某省のような隠蔽体質よりも、その手の明るい(?)思考硬直の方が有害性が無いだけずいぶんマシではありますが。
さて、法的位置づけが今ひとつ中途半端な「産業廃棄物管理票交付等状況報告書」ですが、提出された都道府県はそれをどのように利用しているのでしょうか?
正解は、「とりあえず入力するが、ほとんどの自治体でまったく活用されていない」です。
「報告を忘れていたら、都道府県から督促されるのでは?」と心配していた方も多いと思いますが、そもそも、「報告書提出の義務者リスト」などはどこにも存在しません(物理的に作成できない)し、「A社は昨年提出していたのに、今年は提出していないゾ!」と、過去の提出データと照らし合わせて報告状況を管理する意味とリソースがありませんので、よほどの事情がない限り「産業廃棄物管理票交付等状況報告書を提出しなさい」と督促されることはありません。
このように、「報告を行う国民・事業者」と「報告を受ける都道府県」の双方にとって、「産業廃棄物管理票交付等状況報告書」は苦役の対象でしかないという、不条理極まりない状況を官民が切磋琢磨(?)して維持し続けていることになります。
なんだか童話の「はだかのおうさま」を地で行く話で、「これぞ日本社会!」と言うしかありません。
「産業廃棄物管理票交付等状況報告書を出す意味はどこにあるの?」と公然と疑問を呈してくれる子どもの出現を待つしかないのでしょうか?
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2025年6月17日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
カテゴリー:産業廃棄物管理票(マニフェスト)