排出事業者の誤解

12月10日に配信したメールマガジンを転載します。

 先週は、1週間で講演を3回行うというなかなかハードな1週間でした。
 でも、講演は嫌いじゃないので、毎日でも大丈夫です!

 セミナー終了後にいただいた質問や、懇親会でお聞きした排出事業者の担当者の生の声には、不思議といくつかの共通点がありました。

 今回は、その生の声の中でも、いますぐ誤解を解いた方が良いと思われる内容についてシェアしたいと思います。

(誤解1)
 無料で業者が回収してくれるものは有価物なので、マニフェストの交付は不要なんですよね。

(尾上のお答え)
 廃棄物処理法では、「専ら再生利用の目的となる産業廃棄物」の場合は、マニフェストの交付は不要ですが、それ以外の産業廃棄物はすべてマニフェストを交付する必要があります。

 確かに、業者に有償で引き取ってもらえる、すなわち「売却できる物」の場合は、廃棄物ではなく有価物になりますが、

 有価売買が成立する条件を、無償引き取りにまで拡大解釈するのは危険です。

 無料回収されたからといって、「売れた」と言う人はいないのですが、なぜか「無償=有価物」と解釈する人が多いのが現実です。

 また、お金を出す価値がないからこその「無償引き取り」であるため、引き取り後に、何らかの原因で不法投棄などをされてしまう可能性が非常に高くなります。

 最近よく見られる「家電の無償回収」などがその典型例です。

 産業廃棄物である以上、無制限に有価物として拡大解釈するのではなく、産業廃棄物として正しい処理委託をする必要があります。

(誤解2)
 工場の増改築で発生した廃棄物は、発注者の廃棄物として、発注者の事業所で保管をした上、発注者が処理しなくてはいけないんですよね。

(尾上のお答え)
 同じ質問を、まったく違う場所で最近もらったところなので、大変驚きました。

 発注者があえてそのような選択をして、発注者の責任で処理(委託)をすることは違法ではありませんが、法律的な排出事業者は、発注者ではなく、「建設工事を発注者から受注した元請業者」です。

 もちろん、発注者には廃棄物処理費用を負担する義務がありますが、それは廃棄物の処理責任とは別の話です。

 発注者が処理費用を負担する義務というのは、「廃棄物処理費」か「施工費」かという名目上の問題ではなく、工事を発注する以上、施工費を負担するのが当然という常識の問題です。

 逆に言うと、発注者が廃棄物処理費を負担しないからと言って、廃棄物処理法その他の法律には、発注者を罰する規定はありません。

 「なぜそのような運用をしているのですか?」とお聞きしたら、

 「行政に質問したらそのように指導されました」とのことでした。

 ひょっとすると、その方の質問の方法がまずかったのかもしれませんが、複数の事業者から同じ相談をいただいたので、不勉強な行政担当官の間で流行している「都市伝説」なのかもしれません!?

 「行政担当官がバカになった」という笑い話ですむことではなく、
 「行政も間違う」というよりは、
 「前に座る担当者によって、知識の量に著しく差がある」という認識を持ち、

 質問者自身が回答の真偽を判断できるよう、基礎的な解釈程度は、事業者自身が身につけたいものです。

 メルマガのタイトルは「排出事業者の誤解」でしたが、
 結末は「行政担当官の誤解」になってしまいました(笑)。

 ただ、今回の内容は誇張ではなく、多くの自治体の窓口現場で起こっている現実です。

 「天は自ら助ける者を助く」ですので、最低限の自助努力が不可欠です。

このエントリーを含むはてなブックマーク

タグ

トラックバック&コメント

この投稿のトラックバックURL:

トラックバック

コメント

  1. 長江 洋次 より:

    地方自治体で廃棄物行政を担当している長江と申します。

    記載の建設工事であれば、発注者から受注した元請業者が法律的な排出事業者となるのは分かっているのですが、公園の草刈や剪定に伴って排出される刈草や剪定枝の排出事業者は誰になるのでしょうか?

    草刈事業活動に伴って発生する廃棄物、剪定事業活動に伴って発生する廃棄物だから、草刈をした事業者、剪定をした事業者という考えもあるのでしょうが、元々草を刈る、枝を切るのは発注者が不要(廃棄物)として処理することが前提で業務を依頼している気がするのですが・・・
    そう考えると発注者が排出責任者となり、発注者自らが収集運搬しない場合、一般廃棄物の収集運搬許可業者に委託をしなければ廃掃法違反になるように思えます。

    流木の話もありましたが、流木を集める(処理する)業務を請け負ったら、その請負事業者が排出事業者となるなんてことはないように思えます。

    上記のように建設工事ではない維持管理工事等の場合について、排出事業者(責任者)をどのように解釈したら良いかご教示いただきたく、お願い申し上げます。

  2. 尾上雅典 より:

    長江洋次 様 コメントありがとうございました。
    建設工事ではない、公園の維持管理などに伴い発生した廃棄物につきましては、
    長江様のご指摘のとおり、発注者が一般廃棄物の排出事業者になりますね。

    釈迦に説法で大変恐縮ですが、
    市町村の場合は、一般廃棄物処理業の許可を持たない事業者に委託することも可能ですので、
    別途収集運搬の委託をすれば、請負事業者に運搬してもらうことも可能となりますね。

    事務分掌上は問題があるかもしれませんが、
    維持管理作業発注部局が、廃棄物部局と事前に協議のうえ、
    作業委託契約書によって、公園から廃棄物処理場までの運搬を委託する条文を作っておけば、合法的に運搬をしてもらうことが可能だと思われます。

    部外者の勝手な意見で恐縮ですが、ご参考になりましたら幸いです。

  3. 長江 洋次 より:

    早々にご回答いただきありがとうございました。

    廃掃法施行規則第2条の「許可を要しない者」で、市町村の委託を受けて収集運搬を行う者について規定されているので、尾上先生のご意見は十分に理解できます。

    現在、どのように判断すべきか困っているのが、国が河川流木の処理を委託しているケースです。
    ○○川維持工事の内 ○○築堤天端補修外工事 とし、その業務の中で河川流木の処理を含めて発注しています。
    受注した建設会社が建設廃棄物処理委託契約を結んで他者に河川流木等の処理を任せようとしています。
    建設廃棄物であれば産業廃棄物となりますが、河川流木は一般廃棄物のはず。
    そもそも、国が河川流木の処理を含めて発注するのであれば、維持工事部分と一般廃棄物の収集運搬部分を分けて発注するか、一体で発注するなら一般廃棄物の収集運搬許可業者を対象に発注しなければ、廃掃法第6条第6項に違反するのではないかと思われます。

    また、廃掃法施行規則第2条の「許可を要しない者」の規定の中で、第5号に国がありますが、これはあくまで国が一般廃棄物の収集運搬を業務として行う場合の規定であり、国が委託するときに市町村と同じように委託先が「許可を要しない者」に該当するわけではないと思います。

    国に対して、河川流木は一般廃棄物に該当するので、許可業者を対象に当該業務の入札に当たってくださいと言うべきなのか、建設工事に伴い産業廃棄物に該当するので、市としてはあずかり知りませんとすべきなのか、尾上先生のご助言をいただきたくお願い申し上げます。

  4. 尾上雅典 より:

    長江 様 コメントありがとうございました。

    ご指摘のような国発注の工事の場合、市町村主体の事業ではないため、一般廃棄物の処理問題が必ず発生します。

    長江様ご指摘のとおり、河川流木は建設工事に伴って発生したものではありませんので、一般廃棄物になりますね。

    廃棄物処理法に基づくと、一般廃棄物処理業者以外は運搬をしてはいけないというのが当然の帰結となります。

    しかしながら、現状では、圧倒的大部分の現場では、草や流木まで産業廃棄物として処理しているケースがほとんどではないかと思います。

    だからと言って、そのままの状態もやむなしというつもりはないのですが、
    ①廃棄物処理のルールを変えるか、②違法を承知で現状を黙認するか、はたまた③廃棄物処理法に忠実に処理するのか
    という三者択一が考えられます。

    地方自治体としては、③が一番提案しやすい内容だと思いますが、
    提案はしやすくとも、システムがそのように対応できるかどうかは別問題となりますね。

    ただ、現状を黙認するだけではいっこうに状況が改善されませんので、
    地方から正論の声を上げることで、政府に重い腰を上げさせるのも一興だと思います。

    とはいえ、そこに至るまでには大きな困難が予想されますので、長江様お一人にその重責を押し付けるつもりもありません。

    理想的な対応としては、
    >国に対して、河川流木は一般廃棄物に該当するので、許可業者を対象に当該業務の入札に当たってください

    という問題提起をまず起こすことだと思います。

    ただ、国土交通省の反応も鈍いでしょうから、結果的には黙認せざるを得なくなるのが残念なところです。

    歯切れの悪いお答えで申し訳ありませんが、どこかが最初の一石を投じる必要があるとも思っています。

  5. 長江 洋次 より:

    尾上先生

    早々のご回答、ありがとうございます。

    河川流木は一般廃棄物であるとの認識は国も持っているようです。

    ただ、維持管理工事にも関わらず建設工事と同等に業者が廃棄物排出事業者であるとの整理を行って、自ら排出、もしくは業務受託事業者が許可業者に委託することで業務受託事業者が廃棄物処理業の許可がなくても問題ないとしているようです。
    もしくは、その維持管理工事にかかる1事業のみの収集運搬なので『業』には当たらないと考えているのかもしれません。

    河川流木の排出責任者が国であるなら、無許可業者に委託、さらには再委託という問題が出てくるように思います。
    また、請け負う事業者が、『社会性をもって反覆継続して行う』ものではないので『業』には当たらないとの考え方はあるのかもしれませんが、発注する国は毎年『反覆継続して行う』業務であり、請け負う事業者が廃掃法違反に当たらなかったとしても、少々へ理屈が過ぎるように感じます。

    いずれにしても、一度国に対しては、維持工事部分と一般廃棄物の収集運搬部分を分けて発注するか、一体で発注するなら一般廃棄物の収集運搬許可業者を対象に発注していただけないか話をしてみたいと思います。

    いろいろとご助言をいただきありがとうございました。


コメントをどうぞ

このページの先頭へ