「保存」と「保管」の違い
「『保管』と『保存』の違いを教えてください」というリクエストがありました。
「保管」と「保存」は、日本語としては同じような意味を持ちますが、
「保管基準」や「マニフェストの保存」などと、廃棄物処理法は用語を使い分けています。
改めて考えてみると
産業廃棄物の保管とは言っても、産業廃棄物の保存とは言いません。
しかし、
委託契約書を契約終了後5年間保存というのが正解ですが、「契約書をなくさないように保管」というのも日本語としては意味が通っています。
廃棄物処理法の条文で、「保管」と「保存」がそれぞれ使われている回数を数えてみると、
法律では、
「保管」が23回
「保存」が11回
施行令では、
「保管」が47回
「保存」が 5回
施行規則では
「保管」が277回
「保存」が 12回
と、圧倒的に「保管」の使用回数の方が多いことがわかりました。
実務的な対処方法としては、マイノリティーの「保存」が使用される場面を先に理解すれば、その他はすべて「保管」という整理ができます。
廃棄物処理法で「保存」という用語を使うのは、
・委託契約書
・産業廃棄物管理票(マニフェスト)
・帳簿
・施設の維持管理記録
に対してのみとなっています。
ということは、
「保存」か「保管」か迷う場合は、上記の4種類の書類を置いておく「保存」以外は、すべて「保管」が正解ということになります。
用語が使われる場面はわかりましたが、これだけでは用語本来の違いがよくわかりません。
大辞林では、「保存」
そのままの状態でとっておくこと。
とあります。
同じく、「保管」の場合は、
金銭や品物などをあずかって,こわれたりなくなったりしないように管理すること。
これで2つの用語の違いがかなり具体的になりました。
廃棄物の「保管」であって、“保存”と言わないのも納得です。
廃棄物の“保存”だと、「そのままの状態でとっておく」だけですので、「飛散流出しても仕方がない」というニュアンスになります。
しかし、廃棄物処理法は、廃棄物の飛散流出や散逸を嫌いますので、「なくなったりしないように管理」させるために、廃棄物の「保管」と言っているわけですね。
もちろん、委託契約書やマニフェストも「なくなったりしないように管理」しないといけませんが、
これらの書類は通常なら「自然消滅」したり、「飛散流出」するものではありませんので、「そのままの状態でとっておく」だけで十分ということになりそうです。
もっとも、書類管理が悪い組織においては、マニフェストの自然消滅(?)が常態化しているかもしれません(笑)。
そのような組織においては、保存よりもさらに徹底した「保管」をするのだ!という意識づけをした方が良さそうです。
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2013年7月22日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
カテゴリー:基礎知識