廃棄物処理法関連の規制体系

口頭や文章のみで、廃棄物処理法と地方自治体の独自規制の関係性をわかりやすく説明するのは大変なため、1枚の図にまとめてみました。

基本的な情報でありながら、多くの人が誤解をしている内容ではないかと思います。

houkisei

国の法体系

まず、最も中心、そして最も最上位に位置するのが、「廃棄物処理法(法律)」です。

国会の議決を経て制定された法律ですので、廃棄物処理関連の基本法となります。

法律ですべての規制内容を規定できるのが理想なのかもしれませんが、
弾力的に規制の内容を変化させたり、急な社会情勢の変化に対応するためにも、
法律の委任を受けて規制内容の詳細を規定するのが「施行令」と「施行規則」。

国会が制定した法律(法律からの委任を受けた施行令・施行規則を含む)に違反した場合には、法律が定める罰則に基づいて罰せられることになります。

「告示」も法律の委任を受けて行政が定めるもので、物質の検定方法や基準値、最終処分場での埋立基準など、技術的な詳細を規定するものです。

そして、一番誤解されやすいのが「通知」。

環境省が都道府県知事などに発出する文書ですが、通知には法的効力がありません。

それはなぜか?

通知は、環境省から都道府県知事への単なる「技術的な助言」に過ぎず、その助言を聞くかどうかは、都道府県知事の裁量に任されているからです。

また、仮に、都道府県が法律ではなく通知でしか書かれていないことを事業者に強制しようとしても、通知は法律(あるいは法律の委任を受けた施行令等)ではないため、事業者は通知に従う義務を負いません。

混同している方が多いのが「通達」と「通知」の違い。
「通達」とは、上位の行政庁(例 環境省)が下位の行政庁(例 地方環境事務所)に対して示す判断基準です。

下位の行政機関としては、通達に従って行動する義務がありますが、通達によって国民や事業者を縛ることはできないという意味においては、通知も通達も同様の性質を持ちます。

地方自治体独自の規制体系

地方自治体の議会も住民から負託を受けた機関ですので、国会と同じように、地方自治体独自のルールである「条例」を制定することができます。

法律の下には「施行令」と「施行規則」がありましたが、条例の詳細を規定するのは「施行規則」となります。

条例の規定に違反した場合も、条例が定める罰則によって罰せられることになります。

先ほどの「通知」と同様に、これも誤解している人が非常に多いのですが、
「指導要綱」や「指導要領」も、行政(地方自治体)が自ら作ることができる“判断基準”や“指針”ですので、国民や事業者はそれに従う義務はありません。

指導要綱などは行政が好き勝手に定めることができるものですので、国民や住民の代表が制定したルールとは異なり、行政以外の当事者にそれを強制できないためです。

もちろん、事業者の任意で、指導要綱等の行政指導に協力するのは自由です。

最後に、条例の特徴として、地方自治の観点から一定の限度内で、法律の水準を上回る規制(上乗せ)や、規制の対象を拡大(横出し)することが認められています。

ただし、法律の規制趣旨を逸脱するような上乗せや横出し規制を条例で行うことは認められていません。

具体的に条例の規制が法律の趣旨を逸脱するかを判断するためには、その自治体独自の条件や社会情勢等、日々変化する要因を考慮する必要があります。

法律で規制が行われていない分野を条例の規制対象としていく以上、地方自治体としては、条例規制が認められるギリギリのラインを狙っていかざるを得ません。

法律の規制趣旨を逸脱せず、最大限の独自規制ができる条例を作れるかどうかに、地方自治体の法規担当者の腕の見せ所があります。

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