車輪止めの活用に見る安全管理行動の基本

横浜市から粗大ごみ回収業務を受託していた業者が、粗大ごみ回収中に車両の安全な停止措置が不十分だったために、坂道でトラックを自走させ人に怪我をさせるという事故を起こしました。

2014年5月7日付 横浜市発表 委託業者の粗大ごみ収集車による自走事故について

 本日、港北区内において、本市が粗大ごみの収集運搬業務を委託している業者のごみ収集車(2t平ボディ車)が、収集作業中に無人の状態で走行し、自転車を引いて歩行していた女性に接触し、負傷させてしまいました。また、駐車中の普通自動車に衝突し、損傷させてしまいました。

1 発生日時、場所
 平成26 年5月7日(水)午前10 時45 分頃
 港北区新吉田町

2 事故の概要
 港北区新吉田町の坂道(斜度約6~7度)に排出された粗大ごみを、収集車を止めて収集作業を行おうとした際、収集車が動き出し、無人の状態で前方に約50m走行してしまいました。車両は歩行中の女性と女性が引いていた自転車に接触した後、Y字路交差点にある駐車場に侵入した後、駐車中の普通自動車に衝突して停止しました。

3 被害状況等
・接触した女性の怪我の状況については、外傷はなく、意識はあると聞いておりますが、現在確認中です。
・女性が引いていた自転車が全損しました。
・衝突した車両は前方の左ライト上部が20 センチほどへこみ、左ライト下部のバンパーに傷がつきました。
・被害の相手方へは、委託業者から謝罪を行い、補償・修理等の対応を行います。

4 収集業者
株式会社 ワイ・エス・ディ(運転手は50 代男性、助手は40 代男性)
※ 港北区内の家庭から排出される、粗大ごみの収集運搬業務の委託業者

5 事故原因
 サイドブレーキが十分にかかっていない状態であったこと及び車輪止めを設置しなかったことが原因です。

6 再発防止策について
 車輪止めの使用をはじめ、事故防止については、安全作業マニュアルを遵守した作業を行うよう、指導をしてきたところですが、今回の事故を踏まえ、改めて、事故防止の取り組みについて、全委託業者及び資源循環局収集事務所へ指導を徹底してまいります。

自走したトラックが接触した女性が重傷を負わなかったのが不幸中の幸いでしたが、
どの企業においても、あるいは日常生活レベルにおいても、同種の事故はいつ起こっても不思議ではありません。

また、「安全管理行動」という意味では、今回の事故は非常に多くの教訓を与えてくれます。

車輪止めの正しい方法

今回の事故では車輪止めが一切使われていませんでしたが、坂道で車両を自走させないために車輪止めを使うのは非常に有効です。

ただし、車輪止めをタイヤに対して斜めに差したり、タイヤからはみ出た状態で差すと、
車輪止めをしたまま車両を発進させた場合に、車輪止めをタイヤの周囲に吹き飛ばす可能性がありますので危険です。

車輪止めはタイヤの幅に収まるようにまっすぐ差し込むのが基本となります。

なぜ車輪止めを正しく使わないか?

その理由は単純で、「面倒くさいから」に尽きます。

人間は放っておくと楽な方法を選択する生物ですので、

・安全作業マニュアルを遵守した作業を行うよう、指導
・改めて、事故防止の取り組みについて、全委託業者及び資源循環局収集事務所へ指導を徹底

したとしても、長期的にその効果を持続させるのは難しいと言えます。

車輪止めを仕組みで運用させる方法

運送業界が全体的に車輪止めを正しく活用しているわけではありませんが、
車両に関した安全管理行動においては、一日の長がある企業が多々あります。

SBSロジコム株式会社が、2013年9月30日付でプレスリリースした 駐停車時に装着する車輪止めをオレンジ色に一新 で、車輪止めを効果的かつ簡易に活用する方法が紹介されています。

簡単でありながら、外部の人間からも安全管理行動を認識できるという点が秀逸な取組みですので、SBSロジコム社の発表内容を以下引用いたします。

当社は、トラックなどの事業用車両が駐停車時に安全のためにタイヤ部分に装着する車輪止めを、ブランド統一により決定した車体色「SBSドリームカラー※」に合わせオレンジ色に一新し、10 月より使用を開始しますのでお知らせいたします。

車輪止めを一新したのは、当社とSBSフレイトサービス、SBSトランスポートの3社で、車両台数は計1200 台です。新しいトラックキャビン(運転席)塗装と同じオレンジ色の車輪止めを特注し、今般、従前から装備されていた黒色のものとの交換を終えました。
車輪止めは、輪留めや輪止めとも呼ばれ、駐停車時に前輪等に装着して車両が万が一にも動かないように固定するくさび形の安全用具です。トラックには必ず備え付けてあります。
簡単に装着できますが、その徹底は難しく、車両が動き出す事故はなくなりません。
新しい車輪止めは、タイヤと同色の黒から鮮やかなオレンジ色に変わり、装着すると夜間や離れた場所からでも非常に目立ちます。社員同士、お客様、近隣住民の皆さんに「安全をお見せする」、「安全を見られること」で、装着の徹底を図ります。

sbs
※画像は上記のSBSロジコム社のプレスリリースから転載

安全を図るだけではなく、顧客や一般市民に対しても安全に取組む姿勢を見てもらうというのが良いですね。

目立つ色のロープでドアミラーと結びつけるという工夫も素晴らしい。

こうしておけば、車輪止めを差したまま車両を発進させるというミスをかなりの割合で減らせます。

車輪止め自体にはコストはほとんど掛かりませんので、廃棄物処理企業もすぐに始めることが可能です。

SBSロジコム社が素晴らしいノウハウを公開してくれていますので、是非参考にしてください。

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