市町村から民間事業者への委託手続き
前回の記事「舞台の緞帳(どんちょう)は産業廃棄物か否か」の続きです。
前回は、公営劇場で使っていた舞台の緞帳を処分する場合は、緞帳は産業廃棄物の繊維くずではなく、一般廃棄物に該当すると書きました。
では、地方自治体が一般廃棄物を産業廃棄物処理業者に処理委託すると違法になるのかどうか。
先日紹介した毎日新聞の報道内容だけでは、久留米市から産業廃棄物処理業者への具体的な委託方法がわかりませんので、以下は、一般論として、市町村が一般廃棄物の処理を産業廃棄物処理業者に委託する方法をまとめます。
答えは簡単で、然るべき手順さえ守れば、市町村が一般廃棄物の処理を産業廃棄物処理業者に委託できます。
もったい付けて言うほどのことではなく、清掃工場から発生した焼却灰等が、産業廃棄物処理業者が経営する管理型最終処分場で埋立処分されている例は多数あります。
市町村といえど、あらゆる廃棄物をすべて処理できるわけではありませんので、そうした手に余る一般廃棄物が現れた際には、民間事業者への処理委託が認められています(廃棄物処理法第6条の2第2項及び同法施行令第4条)。
市町村から処理委託を受ける民間事業者には、一般廃棄物処理業の許可は必要ありませんが、1日5トン以上の一般廃棄物を処理する能力がある機械の場合は、一般廃棄物処理施設としての設置許可も必要となります。
久留米市の緞帳は約1.3トンとのことでしたので、その処理のみで1日の稼働時間が終わるということであれば、日量5トン以下の設置許可不要な廃棄物処理施設として扱えそうです。
また、法第15条の2の5の規定により、「当該産業廃棄物処理施設において処理する産業廃棄物と同様の性状を有する一般廃棄物として環境省令で定めるものをその処理施設において処理する場合」には、事前に届出ることによって、その同種の性状を有する一般廃棄物の処理施設として扱うことができますが、
緞帳と同一の性状となりそうな産業廃棄物の「繊維くず」を処理する施設については、そもそも産業廃棄物処理施設設置許可が不要です。
残る問題は、施行令第4条第9号で定められている、「委託先民間事業者のある市町村への事前通知」です。
これを怠ったために大問題化したのが、昨年起きた、豊能郡環境施設組合が一般廃棄物の焼却灰を産業廃棄物と誤解して、神戸市の民間最終処分場に埋立委託していた件です。
もっとも、緞帳を例にすると、久留米市内にある産業廃棄物処理業者へ委託をするのであれば、久留米市から通知をすべき他の市町村が無いということになります。
手順さえ踏めば何の問題も発生しない簡単な手続きですので、市町村当局の方は、不用意に一般廃棄物を産業廃棄物として処理委託していないかどうかを、念のために確認しておいてください。
今回は、公営劇場から発生した緞帳なので、問題はほとんどありませんでしたが、
私営劇場から発生した緞帳の場合は、こう簡単に話は進みませんでした(苦笑)。
市町村が私営劇場の緞帳を引き取ってくれるならば、後は市町村の手続きとなりますが、現実には巨大な緞帳を気安く引き取ってくれる市町村はほとんど無いと思われます。
そうなると、産業廃棄物の繊維くずと称して(偽って?)、産業廃棄物処理業者に処理委託するしかないのかもしれません。
法律の詳細を知りすぎない方が世の中は円滑に回るのかもしれませんね・・・
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2017年5月31日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
カテゴリー:基礎知識