テナントビルから発生する廃棄物の排出事業者は誰?

標題は少し勉強した方なら誰でも知っている疑義解釈ですが、改めて再考したいと思います。

果たして、「テナントビルから発生する廃棄物の排出事業者は誰なのか?」

常識的な見解としては、
「そんなの簡単。各テナントでしょ。環境省が通知でそう言っているから。」となります。

かのアインシュタインが言ったとされる名言の中に

常識とは、18歳までに身に付けた偏見のコレクションである。

というものがあります。

テナントビルに関する常識は、18歳以降に身に付けた知識であるのは確実ですが、一度その成り立ちや意義を疑ってみるのも一興かと思い、あえての取組みです(笑)。

世の中に多数いらっしゃる“賢い人”の中には、「本当に賢い」ほんの一部の人を除くと、「環境省の通知」=「法律」と思い込んでおられる方がほとんどです。

しかしながら、行政法の“常識”からすると、「環境省の通知」は「ただの通知」であり、「法律と同じ効果を持つ」と真剣に主張する人がいたとすると、逆に正気を疑われることになります。

とはいえ、環境省の通知に従えば、社会が円滑に回るのであれば、それに従う方が合理的と思いますが、テナントに関する通知の内容は、およそ現実的なものとは思えないものです。

平成23年3月17日付環廃産発第110317001号

管理票の交付については、例えば農業協同組合、農業用廃プラスチック類の適正な処理の確保を目的とした協議会又は当該協議会を構成する市町村が農業者の排出する廃プラスチック類の集荷場所を提供する場合、ビルの管理者等が当該ビルの賃借人の産業廃棄物の集荷場所を提供する場合、自動車のディーラーが顧客である事業者の排出した使用済み自動車の集荷場所を提供する場合のように、産業廃棄物を運搬受託者に引き渡すまでの集荷場所を事業者に提供しているという実態がある場合であって、当該産業廃棄物が適正に回収・処理されるシステムが確立している場合には、事業者の依頼を受けて、当該集荷場所の提供者が自らの名義において管理票の交付等の事務を行っても差し支えないこと。なお、この場合においても、処理責任は個々の事業者にあり、産業廃棄物の処理に係る委託契約は、事業者の名義において別途行わなければならないこと。

通知文としてはこれだけですが、
当ブログ 2013年7月31日付記事 「テナントビルのビル管理会社への契約委任の可否」でご紹介したとおり、
環境省は実際の契約形態として、「ビル管理会社にテナントから委任状を交付すれば、一括契約しても良い」という見解を公的に示しています。

・契約締結に関し、委任状を交付し委任するのであれば、各テナント会社はその排出事業者責任までをも転嫁しうるものではないが、ビル維持管理会社等が一括して委託契約を締結することは可能である。
・なお、廃棄物処理法上、産業廃棄物の処理を委託する場合には、当該産業廃棄物の処分の場所や、受託者の許可の範囲等を記載した委託契約書により行うことを義務付け、委託者である排出事業者に、受託者が適切に当該産業廃棄物の処理の事業を行えるかどうかを確認させ、排出事業者責任の徹底を図っているところであり、この趣旨からは、委託者である排出事業者が受託者と自ら直接契約を締結することが望ましい。

実務的には、全テナントからビル管理会社への委任状を提出させ、それを産業廃棄物処理委託契約書に添付するということは、現実離れした話となります。

テナントの数が増えれば増えるほど、テナントの出入りも激しくなり、出入りのたびに委任状の管理ができるのかという話です。

おそらく、と言うよりは普通は無理です。

考えてみてください。

テナントがたった10社だったとしても、一括契約の場合は、そのうちの1社が入れ替わるだけで、契約の当事者に一部変更が生じることになりますので、変更契約が必要となります。

およそ無理な話ですし、一般的には、テナントの入れ替わりに付随して、産業廃棄物処理委託契約に関する委任状まで取得している、廃棄物処理法に異常に熱心なビル管理会社など無いものと思われます。

「それでもウチは環境省の見解どおりにやってます!」というビル管理会社がいらっしゃったら、表彰をしたいと思いますので、是非名乗り出てください(笑)。

このように、最初の形式的な契約書はいざ知らず、その後の契約書のメンテナンスは誰もやっていないと思われます。

おそらく、環境省の出先機関である地方環境事務所も、テナントとしてそのような直接契約はしていないのではないでしょうか?
※やってたらゴメンナサイ。

これでは、誰も守る気が無いのに、建前だけで前例踏襲を続けているだけとなります。

ではどうするのが良いか?

次回、私見ではありますが、「廃棄物の形態」や「処理料金の負担者」によって、望ましい排出事業者が誰かを定義したいと考えております。

このエントリーを含むはてなブックマーク Buzzurlにブックマーク livedoorクリップ Yahoo!ブックマークに登録

タグ

トラックバック&コメント

この投稿のトラックバックURL:

コメントをどうぞ

このページの先頭へ