こう考えてはどう?テナントビルの廃棄物(その2 実態)
※関連する連載記事
・テナントビルから発生する廃棄物の排出事業者は誰?
・こう考えてはどう?テナントビルの廃棄物(その1)
前回の「こう考えてはどう?テナントビルの廃棄物(その1)」では、環境省通知が文句なく適用できそうなケースについて考察しました。
ただ、通知と、通知ではない場で示された環境省の公式見解の両方を精査すると、通知と見解はどうやら両立できなさそうということもわかりました。
現実的には、通知の内容が適用できるケースは、テナントビルで発生する廃棄物のうち1割にも満たないレアケースと思われます。
今回は、残り9割の、いわば一般的な廃棄物の処理形態の実態を考えてみましょう。
大部分のテナントビルにおいては、ビルの地下や1階フロア等に共用の廃棄物保管スペースが設けられていることと思います。
あるいは、各フロアに、駅のホームに置いてあるような共用のゴミ箱が置かれていることも多いと思います。
このような共用の場に捨てられる廃棄物には様々な種類の物が含まれます。
地域によっては、細かな廃棄物の分別をせず、共用ゴミ箱で雑多な廃棄物を一緒くたに受け入れているケースもあろうかと思いますが、
捨てられる廃棄物の割合としては、
・ダイレクトメール等の「紙ゴミ」
・弁当ガラ等の「プラスチック製のゴミ」
の2つがもっとも多いと思われます。
これらのテナントビルにおける廃棄物の二巨頭のうち、産業廃棄物と成りえるのは「プラスチック製のゴミ」だけで、「紙ゴミ」は「事業系一般廃棄物」でしかありません。
近年では、「紙ゴミ」と「プラスチック製のゴミ」の混入及び搬入禁止をうたう地方自治体が増えてはいますが、
テナントビルで発生する廃棄物の半分以上は、産業廃棄物にあてはまらない「事業系一般廃棄物」と考えられます。
もちろん、産業廃棄物に該当する「廃プラスチック類」等も、少なからず混入することは確実ですので、厳密には「事業系一般廃棄物と産業廃棄物の混合物」となります。
しかしながら、「プラスチック製のゴミの混入絶対禁止」をうたっていない地方自治体の場合なら、そのような混合物であっても「あわせ産業廃棄物」として、正規の手数料を支払いさえすれば、問題なく受け入れてくれるのが通例です。
多くの(全部とは申しません)テナントビルの現状を整理してみましたが、
ここまでお読みいただくと、「そもそも産業廃棄物として処理委託契約されていないケースの方が多いのではないか?」とお気づきいただけたと思います。
テナントビルの廃棄物の行き先の大半が、地方自治体が運営している清掃工場である以上、運搬の過程でそれらが不法投棄される確率は限りなく低くなります。
一般廃棄物か産業廃棄物かという法的に厳密な整理をしなくとも、またマニフェストの交付という面倒な作業をしなくとも、不法投棄されずに、廃棄物も適正に(?)処理されるわけですから、誰もその現実に疑問を抱くことはありません。
環境省の通知は、「各テナントが産業廃棄物の処理委託を直々に行う」という前提の下で発出されたものですので、
「そもそも産業廃棄物として扱われていない」という現実との乖離が生じています。
今回の記事のまとめ
・そもそも、テナントビルから出る廃棄物は、「事業系一般廃棄物」として処理されていることが多い
・「事業系一般廃棄物」として処理する場合、排出事業者には契約書作成・保存の義務がかからない
・そのため、排出事業者が誰になるのかで頭を悩ませる人もいない
以上、今回は、「法的にはこう解釈すべき」という考察は一切せず、実際の廃棄物処理の状況について整理をしてみました。
念のために補足しておきますが、「産業廃棄物を事業系一般廃棄物と偽って処理」することを推奨しているつもりはまったくありません。
次回の記事では、今回整理した現状を踏まえたうえで、排出事業者を誰とすべきか(個人的見解ですが)について考察をします。
« 産業廃棄物処理施設の設置、産業廃棄物処理業の許可等に関する状況(平成27年度実績) 特別管理産業廃棄物の許可(平成5年3月31日付衛産36号より抜粋) »
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2018年4月19日 | コメント/トラックバック(2) | トラックバックURL |
カテゴリー:基礎知識
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コメント
毎度、メルマガを拝見させていただいたいます。
今回の内容で気になった点が1つあります。
テナントビルから出る弁当ガラ等の「プラスチック製のゴミ」ですが、
事業活動に伴って発生するものなら産業廃棄物に該当すると思いますが
通常の食事等で発生る場合は一般廃棄物になるのではないでしょうか?
コメントありがとうございます。
個人が購入して家庭で食べた弁当ガラでしたら、問題なく一般廃棄物になりますが
会社の従業員が食べた後の弁当ガラを、会社の責任で集めて廃棄委託する場合は、会社が発生させた産業廃棄物の「廃プラスチック類」として扱う必要があると考えております。