「元請」に関するよくある問答

「当社が元請として受けた業務で発生した廃棄物の処理について」というご質問をよく受けます。

廃棄物処理実務においては、元請として受けた「業務」が何か?が非常に重要なテーマとなりますので、
「元請なら排出事業者として云々」と即断することは早計でしかありません。

そこで、「具体的にはどのような業務を請け負うのですか?」と聞き返すことになります。

ちなみに、広辞苑では、

元請
(元請負の略)注文主から直接仕事を引き受けること。また、その業者。

下請
(下請負の略)請け負った人から、その仕事の全部または一部をさらに請け負うこと。又請。

請負
ある仕事の完成を全責任を持って引き受けること。建築・土木工事で多く行われる。

と定義されています。

多くの方がご存知のとおり、
廃棄物処理法で「元請」という表現が出てくる条文は「第21条の3」です。

(建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理に関する例外)
第21条の3 土木建築に関する工事(建築物その他の工作物の全部又は一部を解体する工事を含む。以下「建設工事」という。)が数次の請負によつて行われる場合にあつては、当該建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理についてのこの法律(第3条第2項及び第3項、第4条第4項、第6条の3第2項及び第3項、第13条の12、第13条の13、第13条の15並びに第15条の7を除く。)の規定の適用については、当該建設工事(他の者から請け負つたものを除く。)の注文者から直接建設工事を請け負つた建設業(建設工事を請け負う営業(その請け負つた建設工事を他の者に請け負わせて営むものを含む。)をいう。以下同じ。)を営む者(以下「元請業者」という。)を事業者とする。
2~4 (略)

「第21条の3」のキモは、
「元請」の定義もさることながら、
「土木建築に関する工事(建築物その他の工作物の全部又は一部を解体する工事を含む。以下「建設工事」という。)が数次の請負によつて行われる場合にあつては」という、冒頭に示された「第21条の3の適用対象の範囲」にもあります。

すなわち、世の中には数多くの「請負業務」が存在しますが、廃棄物処理法は、「建設工事に関する元請」だけを「排出事業者」と明示し、「その他の元請」については、排出事業者となるかどうかを明言していないことになります。

「明言していない」ということは、「具体的な取引行為ごとに、産業廃棄物の排出事業者が誰になるかを慎重に判断する必要がある」とも言えます。

ここで冒頭の「元請として請けた業務は何か」という話に戻ります。

ここは具体的な業務ごとに考えた方がわかりやすいと思いますので、いくつかの具体例を挙げてみます。

例1 「脱水設備の保守清掃業務」

「脱水設備から発生した汚泥」は、「脱水設備設置者が発生させた産業廃棄物」ですので、その回収と運搬を請負業者が行う場合は、請負業者には「汚泥」の収集運搬業許可が必要です。

「元請」という単語のみに脊髄反射して、「元請だから収集運搬業の許可不要だね」と解釈してしまうと、法律違反となります。

例2 「機械設備の修理やメンテナンス業務」

メンテナンスにも色々な種類がありますが、ここは「経年劣化した部品の交換」を例とします。

そもそもは、「劣化した部品を含めた機械設備全体」が「発注者の所有物」ではありますが、
「劣化した部品」を「新品の部品」と交換しないことには、機械設備全体が稼働しませんので、「部品の交換を含めたメンテナンス業務」として発注されることが常です。

また、「部品を交換」しないことには、メンテナンス業務を完遂させることは不可能ですので、部品交換とメンテナンスは不可分一体と言えます。

こうしたケースは、「部品交換によって発生した劣化部品」を「メンテナンス業者が請負業務中に発生させた産業廃棄物」と考える方が合理的です。

ただし、具体的なメンテナンス行為や請負う業務の内容によっては、「工作物の除去に該当する」等の理由から異なる結論になる可能性もありますので、くれぐれも牽強付会で脱法的な解釈はなさらないようにお願いします。

例3 「工作物の除去と設置を伴うメンテナンス業務」

定期的な保守管理業務以外に、何かの数値を測定するための古い工作物を除去し、新しい測定用の工作物を設置するといった行為を想定しています。

この場合は、「工作物の除去と設置」を行っていますので「建設工事」に該当し、そこで発生した産業廃棄物については、元請が排出事業者となります。

以上のように、「請負った業務が建設工事か否か」と「請負う業務の具体的な内容」によって、結論が大きく異なることとなりますので、慎重に判断をしていただきたいテーマの一つとなっています。

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