これは面白い!「プロジェクトマナティ」

報酬を支払うのではなく、参加費を負担した上で、参加者が自発的にゴミ拾いをするという、沖縄発の興味深い取組みが、徐々に各地に広がりつつあるそうです。
2022年4月8日付 日本経済新聞 「参加費払ってごみ拾い 1人500円観光ツアーにも 岡山、処理費用などに活用

岡山県で地元の住民や観光客らが1人500円の参加費を支払って海岸のごみを拾う活動が進められている。参加費はごみの処理や活動の運営に充てる。環境の改善、地域交流の創生、地域経済の活性化という一石三鳥の効果が期待される。

参加費を支払う形でのごみ拾い活動は、沖縄のベンチャー企業が2020年に始めた。その後、東京や大阪、長崎でも実施され、各地で広がりを見せる。

岡山県では、沖縄の活動に関心を持った中国銀行(岡山市)がゲストハウスの運営事業者に呼び掛けて昨年7月に実現。初回は同県瀬戸内市の牛窓海水浴場で地元の親子連れら約20人が参加し専用の黄色いごみ袋(90リットル入り)や軍手、トングを借り受け、浜辺に散乱したペットボトルやプラスチック容器など15袋分を1時間かけて回収した。

参加者が手にするゴミ袋に書かれた「MANATHII」というキーワードから遡ったところ、プロジェクト考案団体のHPがすぐに見つかりました。
プロジェクトマナティ

上記のサイトを閲覧したところ、
1.地域の事業者が「ホスト」として、ごみ拾い参加費を徴収し、用具一式を貸与
2.ごみ拾い終了後、「ホスト」がゴミ袋を預かる
というところまでは理解できました。

そこから先は明確に記載されていませんので、個人的な想像でしかありませんが、
回収したゴミ袋は、「ホスト」が「事業系一般廃棄物」として市町村に処理委託
しているのではと思います。

私見では、その方法は廃棄物処理法違反ではないと考えています。

「500円の参加費」は、「用具一式の賃貸料等」とみなせますので、他人が発生させた廃棄物の処理を受託していることにはなりません。

また、本来は、漂着廃棄物はホストが発生させたものではありませんが、「道その他の公共用地に落ちている廃棄物を拾い集める」ことは、生活環境の保全に資する行為ですので、その行為自体を禁止する法律はありません。

漂着ごみの場合、法的には、それが漂着した市町村が処理すべき「一般廃棄物」に該当しますので、実務的には、以下の3点が解決すべき大きな課題となっています。

1.誰が漂着ごみを集めるのか?
2.回収した漂着ごみを誰が運ぶのか?
3.漂着ごみの処理費を誰が負担するのか?

今回ご紹介したプロジェクトの場合、「1」については、自発的に参加費を払って漂着ごみの回収を担う参加者が集まっているため、解決できています。

現実には、「2」と「3」の部分を、市町村がすべて負担していることがほとんどです。

「ボランティアの皆様が善意で回収してくださった漂着ごみを、後は市町村で処理させてもらいます」ということですね。

この場合、市町村にとっては、塩分多めの廃棄物を燃やすことに伴う修繕費その他のコストアップ要因となりますので、諸手を振って歓迎というわけにもいきません。

今回の報道対象のプロジェクトにおいても、その構造自体に大きな変化はありませんが、私の想像どおりに「ホスト」が事業系一般廃棄物として市町村に処理委託している場合は、「2」と「3」の市町村負担が少しだけ低減されることになります。

まず「2」については、
「市町村の焼却炉で燃やせるものしか出さない」ことが大前提ではありますが、
事業系一般廃棄物として出した場合、市町村か許可業者が通常どおりの回収をすることになりますので、市町村側の負担は一切増えません。

次に「3」については、
一般的な市町村丸抱えの処理コストではなく、事業系一般廃棄物の場合、排出事業者(今回の場合は「ホスト」)がごみ処理手数料を負担しますので、市町村の処理コストは市町村丸抱えの場合よりも必ず低減します。

低減するコスト自体は、ごみ処理費全体からすると微々たるものかもしれませんが、漂着廃棄物と無関係な人たちが、社会的便益のコスト負担を担ってくれるという発見には、今後の社会変革にもつながる可能性を感じました。

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