小口軽量の産業廃棄物なら宅配便で送っても良い?

2025年5月20日付「リサイクル目的であれば、誰でも廃棄物の無償引き受けができるのか?」は、当ブログにしては大きな反響がありました。

ブログ及びメールマガジン読者の方からいただいたフィードバックの中に、
「産業廃棄物を郵送や宅配便で送らせるサービスが増えたが、これは合法なのですか?」という質問がありました。

今回は、その可否について解説いたします。

小型で軽量の産業廃棄物をゆうパックで発送できれば、安価で楽と良いことづくしに見えます。

しかし残念ながら、「廃棄物処理法ではそのような発送方法は認められていない」と言わざるを得ません。

当ブログでも2013年に取り上げたことがありますが、宅配便で産業廃棄物を送付させた容疑で逮捕された実例があります。

  • エステ店で使用した脱毛用針の処分を無許可で請け負ったとして、大阪府警生活環境課は、廃棄物処理法違反容疑で、医療器具製造販売会社千葉営業所長を逮捕
  • 逮捕容疑は2月~5月、無許可で東京都のエステ店3店舗に針回収用のプラスチック容器計5個を計4100円で販売。容器に入った使用済み針約1万8600本を返送させて処分を請け負ったとしている
  • 府警によると、容疑者は15年間で全国のエステ店から使用済み針約74万本の処分を受託していた
  • 容疑者は針入り容器を宅配便で送らせ、品名欄には「裁縫道具」と記載するようエステ店に指示していた
  • 回収した針は1キロ280円で正規の業者に処分を依頼していたという

「『使用済の針』だと宅配業者が引き受けてくれない可能性が高いので、『裁縫道具』なら怪しまれないんじゃね?」という小手先の脱法行為で、15年間も無許可で産業廃棄物の処分受託をしていたことになります。

「回収用容器」として、1個当たり約800円のプラスチック容器を事前に販売していた点が肝です。

さらに、それを宅配便で配達させることにより、大阪から千葉への配送料約1千円という格安のコストで産業廃棄物を集荷していたことになります。

大阪府警に逮捕された人は、「無許可受託」をしていた医療器具製造メーカーの営業所長だけでしたが、
本来は、その営業所長に産業廃棄物処理を委託していたエステ店も、「無許可業者への委託」として逮捕されてもおかしくありませんでした。

また、産業廃棄物を宅配便あるいは郵送することの是非についてですが、
産業廃棄物であることを認識しながら、それを宅配便で発送あるいは郵送することは、明確な廃棄物処理法違反となります。

その理由は、排出事業者は、宅配便あるいは郵便局と産業廃棄物収集運搬委託契約を締結しておらず、産業廃棄物管理票(紙マニフェスト)を交付していない「委託基準違反」となるからです。

「では、郵便局や宅配業者と契約すれば良いのでしょ?」と考えた方がいらっしゃるかもしれません。

使用済みPCの処理や、一部の広域認定の中に郵便局や宅配業者が参画し、日本全国のそれらの物流網を活用した廃棄物回収が適切に行われている事実はありますが、それはあくまでも「環境大臣認定」その他の廃棄物処理法に基づく特例措置です。

郵便局や宅配業者はすべての産業廃棄物の回収・運搬が可能なわけではなく、環境大臣認定他の特例措置の対象に入らない廃棄物については、廃棄物処理法の原則どおり、「業許可の取得」「排出事業者との運搬委託契約」「産業廃棄物管理票(紙マニフェスト)の交付を受けること」が不可欠となります。

しかしながら、郵便局の場合は、

郵便法第12条(郵便禁制品) 
 次に掲げる物は、これを郵便物として差し出すことができない。
一 爆発性、発火性その他の危険性のある物で総務大臣の指定するもの
二 毒薬、劇薬、毒物及び劇物(官公署、医師、歯科医師、獣医師、薬剤師又は毒劇物営業者が差し出すものを除く。)
三 生きた病原体及び生きた病原体を含有し、又は生きた病原体が付着していると認められる物(官公署、細菌検査所、医師又は獣医師が差し出すものを除く。)
四 法令に基づき移動又は頒布を禁止された物

で、「廃棄物」については郵便物として出すことが禁止されています。

上述した「環境大臣の広域認定その他の特例措置」は、「廃棄物処理法に基づく認定を受けることで、原則禁止の状態が解除」されますので、例外的に郵便物として出すことが可能となっています。

宅配便各社の約款すべてを確認したわけではありませんが、業界最大手のヤマト運輸の約款では、「引受拒絶事由」として、「運送が法令の規定又は公の秩序若しくは警良の風俗に反するものであるとき」と、廃棄物の引受が拒絶事由として明示されています。

環境大臣の広域認定その他の特例措置の場合は、上記約款の例外となることは、郵便局と同様です。
※「小型家電リサイクル法に基づく認定」がその最たる実例です。

昨今、巷であふれている「宅配便で廃棄物を送ってください」という謳い文句は、廃棄物処理法その他の法令で認められた場合でない限り、法律違反となります。

試しにその事業を行っている企業にこう質問してみてください。

「宅配便で廃棄物を送ると廃棄物処理法違反ではないのですか?」と。

すると、彼らは「専ら物ですから大丈夫です!」「専用の容器を購入してもらっているので、廃棄物回収ではないです~」等の謎の理論で答えてくれるはずです。

「環境大臣の広域認定を受けています」等のしっかりした法律的な裏付けの無い返答であれば、廃棄物処理法違反をしている事業者として、色眼鏡で見る必要があります。

ちなみに、逆有償となる「専ら物」は「有価物」ではなく「廃棄物」なので、郵便や宅配便で送ることはできません。
※これは「逆有償となる専ら物」についての言及ですので、「有価物である古着」などは問題なく発送できます。

もっとも、昨今では、広域認定の制度趣旨を誤解して、「認定外の廃棄物でも自由に集められる」と勘違いしている実例が多々ありますので、「広域認定」というお題目のみならず、「認定の範囲」や「事業の実態」を精査する必要がありますので、ややこしいこと限りなしです。

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