廃棄物処理制度専門委員会(第8回)の傍聴記

1月30日(月)に、東京で第8回廃棄物処理制度専門委員会(以下、「専門委」)が開催されましたので、前日から東京入りしたうえで傍聴してきました。

平成28年12月20日から平成29年1月19日にかけて、「廃棄物処理制度専門委員会報告書(案)」に対するパブリックコメントが募集されておりましたが、第8回専門委では、その時点ではまだ未公表の「パブリックコメント募集結果」と、パブリックコメントをごく一部反映させた「廃棄物処理制度専門委員会報告書(案)」の審議が行われました。

肝心の「報告書(案)」ですが、パブリックコメントを募集する際に配布したものを「ver.1」とするならば、ver.1の表現を一部書き換えた程度ですので、「ver.2」というよりは、「ver.1.1」と呼ぶ方が正確という印象です。

その書き換え例を一部挙げると、ver.1では「法」とだけ書かれていたところを、ver.1.1では「廃棄物処理法」と書き換えるといった、報告書の本旨とは無関係な表現の些細な変更がほとんどでした。

唯一、ver1とver1.1で大きく変わった点は、「バーゼル法との二重手続きの改善」の部分です。

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廃棄物を輸出入する際には、バーゼル法と廃棄物処理法の二法の規制を受けることになりますが、バーゼル法と廃棄物処理法が規制対象とする物が微妙に異なっているため、事前に、環境省と経済産業省の両方から審査を受ける必要があります。特に、廃棄物を輸出する場合には、環境省の審査が二度行われているため、そこを簡素化できるのではないかという提言です。

その他、バーゼル条約の手続きを踏んでいない廃棄物が日本に入ってきた場合に、輸出国に送り返すための「シップバック手続き」や、「試験分析を目的とした少量(25㎏程度)の廃棄物輸出入手続きの簡素化」についても提言されています。

その他の項目、たとえば「親子会社間における自ら処理の拡大」などは、ver1.1(新案)とver.1(旧案)の間に変更が一切無い項目もあります。

なお、パブリックコメントで最も多かったのは、「電子マニフェストの普及拡大」に対するもので、合計40個のパブリックコメントが提出されていました。
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その他の項目を合わせると、全部で289個のパブリックコメントがまとめられていますが、それに対する環境省の考え方として、「今後、環境省において検討されるものと考えます。」という表現が多用されています。

これは非常に不思議な日本語です(苦笑)。

「環境省において検討される」と考えるのは、他ならぬ「環境省」なのですが、この一文を素直に読むと、環境省は他人事のように考えているように見えます。

ここは、「今後環境省において検討します」と、ストレートに書いた方が良かったのではと思いますが、環境省には「他人事感」や、「検討しない可能性」を匂わせる必要があったのでしょうか?

さて、専門委の委員の方からは、こまごまとした意見が色々と出されましたが、どれも廃棄物処理制度の根幹ではなく、枝葉の部分と思われる御意見でしたので、ここに掲載するのは省略します。

最後の最後に、神戸大学大学院法学研究科の島村健教授から、「廃棄物処理制度の根本的な問題は、廃棄物の定義である。次に設置される廃棄物処理制度専門委員会では、そのテーマについて議論を深めるべく、今回よりももっと早い時期から専門委員会を招集してください。」という、有識者からもっとも聞きたかったコメントが出されました。
島村先生 第1回目の会合でそれを言っていただきたかった・・・

一方、島村先生の意見に対する環境省(課長補佐)の答えは、「PCB特措法の改正や福島での除染が忙しく、後回しになってしまいました」というものでした(残念)。

今後、大塚直部会長と環境省で細部を調整した後、「報告書(案)」が「報告書」となり、中央環境審議会から答申後、通常国会にて改正法の審議が行われるとのこと。

しかしながら、報告書(案)からは、その肝心の法改正の方向性がほとんど読み取れません。

事務方の資料への力の入れようからすると、「バーゼル法との二重手続きの改善」は、ほぼ確実に法律改正に入ってくると予想しています。

その他の電子マニフェスト運用が義務化される排出事業者の具体的な範囲などは、環境省自身も現時点では決めかねていると思います(笑)。

先に法律改正で「特定の事業者に運用を義務づける」ことだけは決めておき、後は施行令改正でそれを具体化するのではと思います。
多量排出事業者の決め方もそうなっておりますので。

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