2017年廃棄物処理法改正案の解説(Vol.5 マニフェストの罰則強化)

今回は、「マニフェストの運用義務違反に対する罰則強化」について解説します。

ちなみに、17年改正法の解説はあと2つ続く予定です。

※関連記事
2017年廃棄物処理法改正案の解説(Vol.1 電子マニフェスト関連)
2017年廃棄物処理法改正案の解説(Vol.2 グループ企業による廃棄物処理の特例)
2017年廃棄物処理法改正案の解説(Vol.3 処理業者への通知の義務づけ)
2017年廃棄物処理法改正案の解説(Vol.4 雑品スクラップの規制)

個人的には、17年改正法の中では、今回解説する罰則強化が一番重要と考えています。

改正案の内容はいたってシンプルです。

環境省が示した法律案要綱によると

第七 罰則
産業廃棄物管理票及び電子情報処理組織を使用した産業廃棄物に関する情報の登録に係る罰則を一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に引き上げること。(第二十七条の二関係)

とあります。

現行法では、マニフェストの運用義務違反に対する罰則は、第29条の「6月以下の懲役または50万円以下の罰金」ですが、
「第27条の2」という条文が新設され、そこに「現行法の第29条第三号から第一二号」がそのまま横滑りする形となります。

「なんだ、6月以下の懲役刑が1年以下に伸びるだけか」と思った方が大半だと思いますが、
処理業者の場合は、この罰則強化が経営に及ぼす(かもしれない)影響は非常に大きいと考える必要があります。

その理由は、同じ法律違反であったとしても、法改正後は罰則強化に伴い、行政処分も重くなることが予想されるからです。

廃棄物処理法では行政処分の重さまで規定はしていないのですが、実際に地方自治体が行政処分を下す際に基準とするのが、環境省が発出した平成23年3月15日環廃産発第110310002号「廃棄物の処理及び清掃に関する法律第14条の3等に係る法定受託事務に関する処理基準について」という通知です。

同通知では、廃棄物処理法の罰則条文に対応して、機械的に行政処分を割り振り、法律違反に対する行政処分の目安を示しています。

たとえば、不法投棄(法第25条違反)なら「許可取消」相当とされており、
「マニフェストの虚偽記載」や「紙マニフェストが交付されていない産業廃棄物の引受禁止義務違反」の場合は、先述した「法第29条違反」になりますので、「事業の全部停止30日間」が相当と示されています。

「法第27条の2」という条文が新設された場合、現在の同通知では「法第27条」というカテゴリーは無いものの、「法第28条第二号(土地形質変更の計画変更命令・措置命令違反)」には、「事業の全部停止90日間」が相当と示されていますので、現行法第28条第二号よりも罰則としては重くなる「新設第27条の2」にも、「事業の全部停止90日間」が相当と示される可能性があります。

もちろん、今までどおりの「事業の全部停止30日間」に据え置かれる可能性もなくはありませんが、行政処分も強化される可能性の方がより高いと思います。


↑画像をクリックすると拡大表示されます。

企業規模が大きくなるほど、事業ができない期間が延びると、それだけ資金繰りの悪化が加速します。

「マニフェストの運用義務違反」は、もっとも行政処分の対象になりやすい要因です。

別の言い方をすると、悪意なく違反を起こしてしまいやすい実務ですので、法改正を待たずに、いますぐ自社の運用が間違っていないかを確認し、間違っている場合は早急に是正する必要があります。

一人でも多くの処理企業関係者の方に、今回の記事を、他人事ではなく「自分事」として受け止めていただくことを期待しております。

このエントリーを含むはてなブックマーク

タグ

トラックバック&コメント

この投稿のトラックバックURL:

コメントをどうぞ

このページの先頭へ