押印不要となった書類

少し古い話題になりますが、
2020年12月28日付で、「押印を求める手続の見直し等のための環境省関係省令の一部を改正する省令」が公布・施行されています。

翌年1月5日付で環境省から発出された事務連絡文書では、

1 改正の趣旨
 令和2年7月に閣議決定された「規制改革実施計画」(令和2年7月17日閣議決定)において、「各府省は、緊急対応を行った手続だけでなく、原則として全ての見直し対象手続(※1)について、恒久的な制度的対応として、令和2年中に、規制改革推進会議が提示する基準に照らして順次、必要な検討を行い、法令、告示、通達等の改正やオンライン化を行う」こととされている。

と、申請手続きのオンライン化が進むのではないかと、明るい未来を連想させる文言で始まっています。

ちなみに、「※1)見直し対象手続」とは、
『法令等又は慣行により、国民や事業者等に対して紙の書面の作成・提出等を求めているもの、押印を求めているもの、又は対面での手続を求めているものをいう。』
とされていますので、許可申請書や届出書類等の行政向けに必要な手続きのほとんどすべてが対象に入ってくるようです。

しかしながら、「すべての手続きを電子申請可能にする」とは言っておらず、
「必要な検討を行い」と、具体的に方向性を明言していないことと、行政機関の実態を考慮すると、日本において行政手続きの電子化が一挙に進むとはとても思えません。

余談ですが、元厚生省医系技官の宮本政於氏が著した1990年代のベストセラー「お役所の掟」では、「『役所の検討する』は『何もしない』という意味です」という記述がありました。

日本語って便利ですね。

今回の省令改正の主眼は、上記事務連絡の

廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(昭和46年厚生省令第35号。以下「廃掃法施行規則」という。)の様式で定める、事業者等に対して押印を求めている手続の押印(押印に代わって行うことが可能とされていた署名も含む。以下単に「押印」という。)を不要とすることとした。

にあります。

「大山鳴動して鼠一匹」の感がありますが、申請書類や産業廃棄物管理票に記されていた「押印欄(〇印の中に印)」が廃止されたというだけです。

今回めでたく押印が廃止された書類の一覧は下記のとおりです。

様式第2号の15 産業廃棄物管理票
様式第5号の2 新規申請書 一体的処理
様式第5号の3 資金調達・誓約書 一体的処理
様式第5号の4 変更申請書 一体的処理
様式第5号の5 変更・廃止届出書 一体的処理
様式第5号の7 報告書 一体的処理
様式第6号の2 産業廃棄物収集運搬業許可申請書添付書類

産業廃棄物管理票の押印欄は、収集運搬業者と処分業者が産業廃棄物を引き受けた時に押印する、担当者の認印になります。

改めて言うまでもなく、最初から必要なかったものですし、実態としては、手書きで姓をチャチャっと書き、〇でそれを囲むという、やはり意味のない記載情報でした。

あとは、2017年改正で始まった「二以上の事業者による特例認定」の申請書と報告書、そして産業廃棄物収集運搬業許可申請書類に添付する「誓約書」への押印が不要となりました。

実務的には、非常に地味ですが、この「誓約書」への押印が不要となったことで、収集運搬業の許可申請書類には押印がすべて不要となりました。

もっとも、行政書士へ申請代理を依頼する場合に添付する「行政書士への委任状」には、申請者の代表取締役印等を押印する方が無難であろうとは思います。

委任状への押印は法的義務ではありませんが、行政庁は申請者の意思が真正かどうかを確認する必要がありますので、
押印が無い書類(申請書や届出書を除く)については、

・他の添付書類(当該手続においてともに提出される住民票の写しなど)による確認
・本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、個人・法人の印鑑登録証明書等)のコピー、スキャンデータや写真の電子ファイルの提出による確認
・本人であることが確認されたeメールアドレスからの提出による確認(本人であることの確認には別途本人確認書類のコピー等の提出を求めることなどが考えられる)
・署名機能の付いた文書ソフト(電子ペン等を用いたPDFへの自署機能等)を活用した確認
・電話、ウェブ会議、実地調査等による確認

という手段を用いて、申請者の意思を確認することを環境省は推奨しています。

一番上の、「住民票の写し」があることをもって、「申請者には行政書士に委任した意思がある」と認めてくれれば問題ありませんが、ここで無用に頑張る必要はまったくありませんので、委任状には最初から申請者が押印をした方が無難というものです。

これでようやく、「押印」に対する呪術的で盲目的な信頼から一歩抜け出すことにはなりました。

時代はようやく幕末から明治になりました(笑)。

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