採算性を示さないではなく、「示せない」

5月12日付 四国新聞 「都市鉱山」発掘途上/県内、新リサイクル参加

 眠っている「都市鉱山」を掘り起こせ―。使用済み携帯電話などを再資源化する小型家電リサイクル制度に、香川県内すべての市町が参加することが四国新聞社のアンケートで明らかになった。埋め立て処分していた廃棄物が“お宝”になる制度に各市町とも異論はない様子。だが、先行する自治体は回収量不足などの壁に直面しており、事業の見通しは必ずしも明るくない。

出だしから記事はかなり飛ばしていますが、
“お宝”になる廃棄物は、国が法律を作らずとも、最初からお宝として流通しているはずです。

本気でそのように思っている自治体の担当者はいないのではないかと思います。

それに、問題は回収量不足だけではありません。
回収量が増えれば、回収コストも増大しますので、下手をすれば回収量を増やせば増やすほど、市町村の持ち出し(赤字)が増えるかもしれません。

「事業の見通しは必ずしも明るくない」という表現だけは正しいと思います。

■売上金7万円
 箱いっぱいに積まれたゲーム機やデジタルカメラ、コード類。別の箱の携帯電話はどれも画面や電源ボタンなどが砕かれている。「回収後は起動できないようにハンマーで確実に壊す。個人情報の取り扱いには細心の注意を払っています」。丸亀市クリーン課の担当者が説明する。

 丸亀市は2011年11月、四国で初めて使用済み小型家電のリサイクルを始めた。市役所やコミュニティセンターに回収ボックスを置き、市民に使わなくなった小型家電を投入してもらっている。

丸亀市はモデル地区として小型家電のリサイクルを始めたためか、個人情報の取扱いにかなりの注意を払っているようです。
他の先行自治体でも同様の注意が払われているようですが、人件費の高い行政職員が一個一個手作業で破壊というのは、持続困難なリサイクルモデルと言わざるを得ません。

伝統工芸なら、匠の技術によって製品の付加価値が大いに高まりますが、
非効率的な個人情報の消去や破壊に、市民の血税を突っ込む意義は少ないからです。

本来の意味からすると、個人情報を含んだ廃棄物を捨てる場合は、自分自身で情報消去をするのが当然です。

廃棄物を回収する行政側も、処理コストを安くするためにも、その原則を詳しく広報するべきです。

 ただ、各自治会の協力にもかかわらず、回収量は伸び悩んでいるようだ。12年度の総量は約336キロ。このうち半分を引き取り業者に売却したところ、売り上げは約7万円だった。残りを売っても十数万円にしかならず、事業としては小規模と言わざるを得ない。

 回収量不足の要因の一つは対象品目を絞っていること。国は小型家電を「28分野100品目以上」とするが、丸亀市が回収するのは中でも小型で、有用な金属を多く含む15品目のみ。比較的大きな家電や多くの種類を回収するためには現在の人員・保管場所では足りないという。担当者は「量を増やそうとするとコストがかかり赤字になりかねない」と苦慮する。

336kgの廃棄物を回収して、売り上げが約20万円ということであれば、おそらく利益はゼロか、若干の赤字ではないかと思われます。

しかも、回収対象を「小型で、有用な金属を多く含む」廃棄物に限っての話ですので、
普通に回収、リサイクルをするだけでは赤字になるのを避けられない、という実証事例になってしまっています。

丸亀市の担当者は「意義ある取り組みだが、展望はまだ見えない。国や県は事業が経済的に成り立つ仕組みを示してほしい」と訴える。

このような状況下であるため、担当者として疑問に思っているというよりは、国に対する皮肉という意味のコメントではないでしょうか。

自治体担当者の実感としては、おそらく「展望はもう見えている」はずです。

結局「小型家電リサイクル法」って

日本は既に少子高齢社会の入口に立っているわけですが、
小型家電リサイクル法は右肩上がりの回収量増加をそもそもの制度存立条件としています。

法律の成り立ちからして、所与の社会条件を無視した、理想有りきの法律でしかないのかもしれません。

高齢者が増えると、家電製品を頻繁に買い換えることはなくなり、一つの製品を長く(多くは所有者が天寿を全うするまで)使い続ける傾向になります。

また、高齢者になるほど、個人情報の扱いに注意が必要な電子機器の所有率が低くなりますので、行政サイドが欲しがる“お宝”が年々出回りにくくなることでしょう。

環境省としては鼻高々な法律なのかもしれませんが、日本の人口動態予測を完全に無視して作った法律とも言えそうです。

上記の個人的な懸念が現実化しないことを望んでいます。

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