昭和48年3月23日環整14号 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行における当面対処すべき問題点について

廃棄物処理法施行後2年を経過した昭和48年に発出された通知です。

当時、高度経済成長による経済発展の真っただ中であり、法制定時(昭和46年)からの2年間で廃棄物の発生量が60%も増えたという、すさまじい社会情勢の変化がありました。

不法投棄や不適正保管など、現代にも通じる廃棄物問題の萌芽を、この通知の根底に見ることができます。

昭和48年当時に指摘されていた問題の多くが、現代でも未解決のまま発生し続けています・・・

こういった根強い廃棄物問題を解決するためには、「不法投棄を撲滅してやろう」というアプローチではなく、取引市場の透明性確保や有価取引市場の活性化など、今までに試みられていない取り組みを試すべき時期なのかもしれません。


【 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行における当面対処すべき問題点について 】

公布日:昭和48年3月23日
環整14号

(都道府県廃棄物処理主管部(局)長あて厚生省環境衛生局環境整備課長通知)
廃棄物の処理及び清掃に関する法律の施行以来、廃棄物の適正な処理をはかるため、いろいろ卸配慮を煩わしているところであるが、産業廃棄物の処理にあつては、産業廃棄物の適正な処理体制の整備等に関し、また一般廃棄物の処理にあつては、市町村におけるし尿の処理計画と下水道整備計画との調整等に関し、左記事項について関係市町村及び関係者と十分卸協議の上、遺漏のないよう指導されたい。

一 産業廃棄物の適正な処理の強化について
産業廃棄物は、昭和四六年度末日量約百万トンが排出され、昭和五〇年度末には日量約百六〇万トンに達するものと推計されている。このように産業廃棄物は経済活動、都市活動の推進に伴つて増大の一途をたどつており、またその処理技術の開発と導入が遅れているために、その適正な処理が益々困難となつているところである。廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「法」という。)の制定によつて、産業廃棄物についての事業者の責務を明定し、あらたに産業廃棄物の処理体系の確立をはかつているところであるが、近年、産業廃棄物の保管不備、不法投棄等産業廃棄物の不適正な処理により生活環境の保全に著しい悪影響を与えるのみならず、人の生命、健康に危害を加える事例が頻発の傾向にあり重大な社会問題となつているところである。したがつてこれらの問題解決のために、産業廃棄物処理体系の整備が一層要求されているところであり当面の施策として次の事項について関係各位と緊密な連絡を保つとともに、十分な指導をされ、その徹底を期されたい。
(1) 産業廃棄物の適正な保管について
産業廃棄物の保管については、特に事業者が自らの敷地内に保管している場合に、例えば滲出液による公共用水域の汚染等による、生活環境の汚染という問題が発生していることにかんがみ、必要に応じて法第一八条の規定に基づく報告の徴収又は法第一九条の規定に基づく立入検査を行なう等により産業廃棄物の適正な保管について事業者に対して法第一二条第四項の規定に基づく指導等を十分に行なわれたいこと。
(2) 産業廃棄物の適法な処理委託について
事業者の産業廃棄物の処理のあり方としては、環整第四三号環境衛生局長通知(昭和四六年一〇月一六日)において指示したところであるが、近年事業者から、法第一四条第一項の規定に基づく許可を受けていないいわゆる無許可業者に産業廃棄物の処理を委託する事例が出ており、その結果、山林、海洋等への不法投棄が行なわれ、生活環境の汚染という問題が発生している。そこで事業者がその産業廃棄物の処理を業者に委託する場合には、その業者が法第一四条第一項の規定に基づく許可を受けているものであることを確認したうえで、委託するよう関係者に対して十分指導されたいこと。
(3) 産業廃棄物処理業許可申請にかかわる業務の促進について
昭和四七年一二月一日現在において、法第一四条第一項の規定に基づいて許可を受けた産業廃棄物処理業者数は八七三件(内訳 収集運搬にかかる許可業者数六七六件、中間処理にかかる許可業者数六件、最終処分にかかわる許可業者数二三件、収集・運搬・中間処理にかかわる許可業者数三八年、収集・運搬・最終処分にかかわる許可業者数二〇件、中間処理・最終処分にかかわる許可業者数三件、収集・運搬・中間処理・最終処分にかかわる許可業者数一〇七件)であり審査中の件数は一一〇七件である。
産業廃棄物処理業の許可にあたつては、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則第一〇条の規定に基づく技術上の基準等資格要件を十分審査のうえ、速やかに処置されるよう配慮されたいこと。
(4) 最終処分地の確保について
産業廃棄物の不法投棄等の事例が頻発の傾向にあるが、これらの生活環境の汚染の事態を防止し、産業廃棄物の適正に処理する体制整備をはかるためには、産業廃棄物の最終処分の場所となる最終処分地の確保が不可欠である。最終処分地の確保にあたつては、わが国の国土事情及び住民の生活環境の保全上の問題等からして、その確保は相当に困難なところであると思料されるが、産業廃棄物の適正な処理体制が整備されよう、一層の努力と配慮を払われるよう願いたいこと。

二 市町村におけるし尿処理計画の指導について
し尿の処理に関する全国レベルでの目標は、さきに制定・施行された廃棄物処理施設整備緊急措置法(昭和四七年法律第九五号)に基づき下水道整備五箇年計画との相互調整の上に策定する廃棄物処理施設整備計画(現在、閣議了解段階)によつて、昭和五〇年度末において計画処理区域人口の一〇〇パーセントに対して衛生的に処理することとしており、そのうち汲取し尿については、し尿処理施設による処理および下水道終末処理場への投入処理によつてその全量を処理することとしている。
今後本計画にそつて各市町村のし尿処理施設の緊急かつ計画的な整備が進められることとなるが、特に貴管下市町村(一部事務組合を含む。)の個別的施設整備計画について、その状況を把握するとともに、し尿処理施設の効率的な設置・運用ならびに下水道終末処理場の利用について、長期的展望に立つて適正な指導をされるようお願いする。

(資料一参照)
なお、下水道法第三七条の二に規定する厚生大臣の勧告権(終末処理場の維持管理および終末処理場による汲取し尿の処理に関するもの。)は、同法施行令の改正により、都道府県が管理するものを除き、都道府県知事に委任されており、また終末処理場におけるくみ取し尿の処理について厚生省環境衛生局長および建設省都市局長の連名の通知(環整第三八号、建設省都下事発第三二号、昭和四七年八月七日|資料二参照〔略〕)が発せられているので、念のため申し添える。

三 一般廃棄物処理施設の維持管理の強化等について
し尿処理施設およびごみ処理施設、過去三次にわたる長期計画に基づいてその整備を推進してきたところであり、昭和四六年三月末現在の統計によれば、汲取し尿(し尿浄化槽汚でいを含む)については、全国の計画収集量約九万一〇〇〇キロリツトル/日のうち六万キロリツトル/日余(六六パーセント)が九五六箇所のし尿処理施設(し尿浄化槽を除く。以下同じ。)で処理され、またごみについては、全国の計画収集量約七万七〇〇〇トン/日のうち四万二〇〇〇トン/日余(五五パーセント)が一二九三箇所のごみ処理施設で処理されるに至つている。
これらの処理施設は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則に規定する基準に従つて維持管理しなければならないことはいうまでもないが、同時にこれらの処理施設を特定施設として規制する各種の法令による排出基準や排出基準を遵守しなければならないものである。
しかしながら、昨今これらの処理施設による処理の不備に起因すると考えられる環境保全上の問題がひん発していることにかんがみ、貴管下市町村におけるし尿処理施設及びごみ処理施設の維持管理状況を終点検するところにより管理者に対し必要な指導を行なうとともに、他の法令による規制の状況等に照らし必要な施設の改善を行なわせるようお願いする。

資料 略

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