廃棄物処理企業の生き残り戦略

ある企業の研修のご依頼で、廃棄物処理業界の現状とチャンスをどこに見出すべきかをまとめています。

そのために、(積読だった)色々な業界誌を読んで一挙に情報をインプットしています。

記事や広告を読むと色々な生き残り戦略が見えますが、大別すると、そのパターンは3つに絞れます。

パターン1 処理能力増強志向

数でいうと、このパターンが一番多いと思います。

行政書士として(細々と)いただく依頼がなくならないことも、それを裏付けているように思います。

売上を伸ばそうというときに、まっさきに思い浮かぶのが、
「受託料金を増やすためには、受託できる量を増やさねば!」というもの。

それがそのまま、中間処理場の拡張や、異業種からの参入という流れにつながっています。

ただし、このパターンの危険な点は、
処理能力を一生懸命増強しても、廃棄物自体の発生量は、これから減少傾向に入るということ。

よほど資金力のある企業でなければ、投資資金を回収するのもままならないと思われます。

解体工事の増加で発生量が増すと予想される石膏ボードなど特定の廃棄物に限定した能力増強なら、成功する確率は少しだけ高まりますが、競合の増加や最終処分先の確保対策を入念に行う必要があるのは同じです。

廃棄物の発生量は減る
それを受ける業界全体の処理能力は増える

言い換えると、少なくなっていく廃棄物を、日々増え続けるライバルと奪い合うということです。

この図式の中では、処理能力の増強に要する資金負担が大きな重荷となってしまいます。

能力増強を図るのであれば、現在有している処理技術と相乗効果を期待できるものや、発生量の増加が見込まれ、顧客ニーズも高い廃棄物のみに限定するべきだと思います。

パターン2 新規事業の模索

「汚染土壌処理」や「公共処理場の維持管理」などの既存の業態をそのまま生かせる新規事業や
「農業」や「遺品整理」などのまったくの新規事業に取り組む場合の2種類がありますが、
やはり本業の廃棄物処理事業の先細りが明らかである以上、これは不可欠の取組と言えるでしょう。

まったくの新規事業の場合、すぐには成果が出ないことがほとんどなので、
数年間不採算が続いても辛抱できる体力や、取組む従業員の粘り強さなどが必要となります。

これも、資金と人材が豊富にある企業の場合は、ある程度の実験的な投資も可能となりますが、
特に資金に余裕がない企業の場合は、慎重かつ大胆に見切りをつけることが必要です。

そのため、既存の事業とまったく無関係の事業ではなく、ある程度本業の強みを生かせられ、また相乗効果も生みそうな事業に集中するべきです。

パターン3 情報発信の強化

これは非常に良い傾向だと思っていますが、優良事業者認定との関連から、自社の処理フローなどを外部に公開する企業が増えています。

現状では、情報公開の内容よりも、処理料金の安さが優先される傾向の方が強いわけですが、
顧客との安定した関係を構築するためには、情報公開のみならず、相手に情報を届ける情報発信が不可欠です。

私の見るところ、情報公開面では、先進的な廃棄物処理企業の間でだいぶ進んだ印象がありますが、
情報発信をしている企業となると、かなり少ないのが実情だろうと思います。

情報発信をするためには、自社から伝えたい情報を整理し、それを伝わる形に再構成する必要があります。
その過程で、新たな顧客ニーズや、見逃していた自社の本当の強みが見つかることも多々あります。

それをせずに、安易にパターン1の「処理能力増強路線」に踏み込んでも、顧客が能力増強の価値を認めてくれないことには、低価格競争に陥るだけとなってしまいます。

一番理想的なのは、パターン1から3をすべて網羅した戦略体系ですが、
まずはパターン3の「情報発信」から始め、自社の強みや顧客ニーズを再整理したうえで、パターン2の「新規事業の模索」に進むと、一番失敗が少ないだろうと考えています。

もちろん、売上増といった攻めの戦略のみならず、コンプライアンスといった守りの戦略も同様に重要となります。

今年以降、廃棄物処理企業の経営者の方が考え、行動しなければならないことが矢継ぎばやにやってきそうです。

お困りの方はご遠慮なくご相談ください。
攻めと守りの両方でお役にたてるかと思います。

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