びわ湖岸に漂着した廃棄物の処理責任は誰にある?

毎日.jpから「台風18号:琵琶湖岸につめ跡 大量の水草、どう処分 撤去費用は数百万円 /滋賀」を転載します。

◇水質向上で湖底に光、繁殖進む?
列島を縦断した台風18号。県内の人的被害は軽傷1人だったが、大津市などの琵琶湖岸には大量の水草が打ち寄せ、漂流物の扱いの難しさを浮き彫りにした。湖面に浮いた水草は県が集めて肥料化できるが、陸上に打ち上がったものは市の管轄。水分が多すぎて焼却処分できず、湖岸には市がかき集めた水草の山が並んだまま。処分費用は数百万円かかる見通しだ。【稲生陽】
◇熊手手に大津市職員恨み節
「たったこれだけでも300キロはある。きりがないって」
クレーンでつり上げた水草の束を指差し、作業員はあきれたような顔を見せた。市職員ら約220人のほか、県職員約100人、造園協会のボランティアらが除去作業をした14日朝。石造りの湖岸には、みるみる畑のあぜのような深緑の山ができた。「今後大きな台風が来るたびに駆り出されると思うと気が重い。こんな大量のごみが自然発生するなんて」。着慣れない作業着姿の市職員の1人は、熊手を手に恨み節を口にした。
今回は、夏が終わって水草が大きくなり切ったところに北東からの風が直撃。かつてない量の水草が同市の湖岸約3キロにわたって打ち寄せ、腐りかけて悪臭を放っている。湖面も潮だまりには茶色く変色した水草がぎっしりと浮かび、まるで沼地のよう。市は9日と14日に延べ約400人態勢で計約260トンを除去したが、残りは業者に委託する方針という。
県や市によると、琵琶湖の水草はここ15年で急増。浅瀬の多い南湖では湖底の7割を水草が覆い、現在では南湖だけで10万トンが繁茂しているという。渇水で水位が下がったり、水質向上で湖底に光が届くほど透明度が上がったことなどから繁殖が進んだとみられる。下水道普及率が低く、水質の悪かった1960年代には逆に水草は少なかったといい、環境浄化の思わぬ影響が出た格好だ。
一方、問題となっているのが水草の処分方法。湖面を管理する県は、船で刈り取った水草約25トンを草津市の専用空き地で乾燥させて肥料化する予定。しかし、大津市が草津市にごみを持ち込むと廃棄物処理法違反になるため、市内の最終処分場に不燃物として埋めるしかないという。同市の松井繁夫・公園緑地課長は「全部埋めるのは無理。湖岸にはまだ300トンくらいはありそうだが、処分も含めて業者に委託するしかない」と話す。市は昨年、県内の市町で設立した漂着物回収のための基金(残高約4590万円)の初適用を申請する予定だ。

廃棄物処理法では、「産業廃棄物でない廃棄物はすべて一般廃棄物」と規定しているため、湖岸の自治体に漂着した廃棄物は、排出事業者が特定できるものを除き、すべて一般廃棄物になります。
日本海沿岸の市町村には、中国・台湾・韓国などから漂着する廃棄物の処理に頭を悩ませているところがたくさんあります。
外国から流れてきた廃棄物であっても、それが日本に漂着した以上は、漂着場所の市町村に一般廃棄物としての処理責任が発生してしまうからです。
漂着する廃棄物の中には、「注射針」や「薬品」など、非常に危険な廃棄物が混じっていることもあります。
琵琶湖沿岸の場合は、藻や木などの漂着が大半であるため、有害な廃棄物はほとんど無いことが救いですが、それでも、関係する自治体にとっては、大きな負担であることは間違いありません。
市と県の職員が中心となって、琵琶湖岸の漂着廃棄物の回収を進めるのは大変立派な行動ですが、「琵琶湖クリーンアップ作戦」などと題して、関西各地からボランティアを募る工夫もできたはずです。
廃棄物が琵琶湖岸に漂着したのは、行政が悪いわけではなく、台風という自然気象の結果ですので、清掃活動を好意的に受け止めるボランティアが多いのではないでしょうか?

ただ、結局のところ、回収した廃棄物を処理するのは自治体の負担となってしまいます。
これは法律上仕方がないことであり、すべての行政が当然と思っていることでしょう。
肝心なのは、上記の記事の赤字の部分のように、間違った法律知識にとらわれ、適切、かつ効率的な廃棄物処理方法を不可能と思いこんでしまわないことです。
現行の廃棄物処理法では、大津市が、大津市の廃棄物を草津市に持ち込んでも、違法でもなんでもありません。
もっとも、草津市が、「草津市では大津市で発生した廃棄物を処理しない」と断ることも可能ですので、草津市の受け入れ態勢に依存することになります。
藻は、元々自然界にふんだんに存在する物体ですので、焼却などのエネルギーを浪費する廃棄物処理ではなく、極力資源効率的、かつ環境負荷を与えない手法で処理するのが最善です。
その観点から考えると、草津市で堆肥化するのが最善の方策に思えます。
もしくは、大津市内で広い空地を見つけ、そこで天日乾燥をさせるなどの対策もできるでしょう。(その場合、大津市長から滋賀県知事に対して、大津市内に一般廃棄物処理施設を設置したという届出が必要ですが)
行政官には頭がよい人が多いのですが、ともすれば自分の専門分野のみに固執し、全体最適ではなく、部分最適の答えを見つけて満足してしまいがちです。
琵琶湖の水質浄化が進めば、今後も水草の繁茂は避けられませんので、一時しのぎの手段ではなく、今後対策をどう進めていくべきかを、「オール滋賀県の自治体」として協議していただければと思います。

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