FRP船のリサイクルが停滞
河北新報 FRP船のリサイクル停滞 09年度わずか37隻 東北 より、冒頭部分を抜粋の上、転載します。
プレジャーボートや漁船など繊維強化プラスチック(FRP)製の船のリサイクル処理が、東北で進んでいない。船の所有者の間にリサイクル意識が高まっておらず、処理費用も高額なのが理由だ。処理推進に向けて専門家は「国はリサイクルのPRや処理コストの低減にもっと力を入れるべきだ」と指摘している。
記事の論調としては、
FRP製の船のリサイクルが進まない背景として、
「船の所有者のリサイクル意識が低い」ことと「処理費用が高額」なためだと結論付けています。
最後には、「専門家」に、「リサイクルが進まないのは国の責任だ!もっと国が責任を持ってコスト削減をさせろ」と言わせ、責任の所在を第三者に押し付けることで満足してしまっています。
もしこれが学生のレポートなら、落第点をつけざるを得ない陳腐な論理構成です(笑)。
何でも国の責任にしてしまい、自分には関係ないというスタンスは真の民主主義とは思えません。
が、当ブログは廃棄物管理に関するブログですので、これ以上マスコミの偏向報道について触れるのは止めておきます。
その代わりに、「なぜFRP船のリサイクルが進まないのか」と、「リサイクルを推進するためにはどうすれば良いのか」を一刀両断します。
まず、「なぜFRPのリサイクルが進まないのか」についてですが、
これは記事にも書いてあるとおり、「リサイクル費用が高額」というのが大きな要因の一つですが、
そこからさらに一歩踏み込んで、「なぜ、リサイクル費用が高額になるのか」を考えてみましょう。
その答えは簡単で、「他の廃棄物と比べて、FRPの処理・リサイクルが困難だから」です。
FRPとは、「繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics)」のことで、
軽量性と丈夫さを兼ね備えた材質ですが、廃棄をするときには、丈夫であることがネックとなり、簡単に分離や切断ができない欠点があります。
FRPを、セメントの原燃料に再利用しているのは事実ですが、セメント製造では、幅広い廃棄物を利活用できるため、FRPよりも安価で簡易に活用できる廃棄物が、FRPの前の列にずらっと並んで順番待ちをしています。
苦労してFRPをわざわざ集めるよりも、他の廃棄物を効率よく集める方が、セメント業界にとっても合理的な選択になります。
このような状況下で、FRPのリサイクルが進むはずがありません!
セメントの原燃料に加工することよりも、もっと簡単なリサイクル手法が開発されない限り、FRPのリサイクルコストが下がることはないでしょう。
「国の責任でリサイクルせよ」という次元の話ではないのです。
次に、「FRPのリサイクルを進めるためにはどうすれば良いのか」についてですが、
これも答えは簡単。
自動車と同様、購入者にリサイクル料金を前払いさせ、FRPを原材料として使用している製造事業者にFRPのリサイクルを義務付ければ良いのです。
FRPの利用によって利益を受けるのは、FRP船の所有者やFRPを使用した製造事業者です。
普通の廃棄物処理では処理できない困難物である以上、廃棄物処理法の原則に基づき、排出事業者と製造事業者に処理責任を科していくのが、本来の筋です。
ただ、FRPは船に使われているだけではなく、ユニットバスなど住宅設備機器にも広く使われているため、
FRPリサイクル費用の拠出が義務付けられると、ほとんどの国民にも相応の負担が求められることになります。
しかし、ユニットバス程度なら、一般的な廃棄物処理事業者でも破砕処理できそうですので、船のように大変な話にはなりませんので、「FRPリサイクル法」などができたとしても、それほど大きな負担にはなりそうにありません。
なんでも国のせいにして安心してしまうという姿勢は、非常に不健全なものだと思います。
マスコミの報道を無批判に受け入れ続けると、自然にそのような不健全な思考が身についてしまいますので、報道や専門家の意見は冷静に受け止めたいものです。
もちろん、当ブログに対しても、そのように冷静な姿勢で接することが必要なのは言うまでもありません!(笑)。
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2010年7月26日 | コメント/トラックバック(5) | トラックバックURL |
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コメント
初めてコメントさせていただきます。
いつも拝見させていただき勉強させていただいております。
FRP船のリサイクルについて勉強していたのですが
ふと疑問に思い調べてもなかなか分からなかったので
こちらで質問させていただきます。
FRP船を処分するときは産業廃棄物になるのでしょうか?
そうではなく、個人が所有しているものは一般廃棄物で
事業用のものが産業廃棄物になるのでしょうか?
ぜひ、ご教示のほどよろしくお願いいたします。
ユウジ様
個人で所有していた場合でも、個人事業たとえば漁業で使用していた船舶などの場合は、廃棄する際には産業廃棄物として処分する必要があります。
事業ではなく、純然たる個人的趣味として所有していたFRP船は、一般廃棄物になりますが、市町村の清掃工場では間違いなく処分できませんので、リサイクル事業者は一般廃棄物広域認定などを取得する必要がありますね。
ご教示ありがとうございます。
では個人的趣味の船を処分するときに業者に頼むなら、一般廃棄物処理業の許可を持っている業者に頼まないと違法ってことですね。
でもこの趣味の船を産廃処理業の許可持ってる業者に知らずに処理を頼んで処分してもらったらどちらも罰せられるんですか?
ユウジ様
法律的な観点からすると、一般廃棄物を産業廃棄物処理業者に委託すると、委託者と処理業者の両方が刑罰の対象となります。
ただ、FRP船のように、市町村の清掃工場で処分できないものの場合、市町村に相談をしたうえで、産業廃棄物処理業者に委託しているケースが多いと思われます。
違法か合法かでは割り切れない面があるので、各自で市町村と最善の解決方法を見つけていくしかないと思われます。
法律的に全部をクリアするためには、先述したように、製造業者などが一般廃棄物の広域認定を取得するしかないと思います。
廃棄物には違法か合法かでは割り切れない問題が多いですね。
ご教示ありがとうございました。