廃タイヤをめぐる混乱

廃タイヤのみに限られた話ですが、地味に影響が大きくなりつつあります。

環境省 自動車用ゴムタイヤが産業廃棄物となったものの取扱いについて

従来、廃タイヤは、広域再生利用指定制度に基づき、タイヤメーカーなどが主体となって処理が進められてきました。
しかし、「広域再生利用指定」制度が平成15年に廃止され、「広域認定」制度に変わったことを受け、平成23年4月1日からはタイヤメーカーと言えど、産業廃棄物処理業の許可なしに、廃タイヤを処理することができなくなりました。

言わば、特例が廃止され、通常の産業廃棄物処理と同じ手順が必要になっただけなのですが、
特例が適用されていた期間が長すぎたため、タイヤ販売店やタイヤメーカーでは混乱しているのも事実です。

特例が廃止された以上、廃タイヤを処理するときは、必ず以下の2つの方法のどちからで行う必要があります。

その1 廃タイヤの排出事業者が、収集運搬業者と中間処理業者と個別に処理委託契約を結ぶ

「何を今さら」という感じがいたしますが、実態として、初めてそのような契約を結ぶ必要が生じたということで、タイヤ販売店では小さくない混乱が生じているそうです。

廃タイヤは、タイヤ販売店で廃棄されることが圧倒的に多いため、元々のタイヤユーザーがその段階で個別に処理業者と契約をすることが難しいためです。

もっとも、難しいといっても、法律で決められた義務である以上、すべての排出事業者は処理委託契約を締結する必要があるのですが、

問題は、廃棄物処理に不慣れなタイヤユーザーの無知につけこみ、違法な契約を進めて安値で廃タイヤをかき集める処理業者があることです。

私が実際に見たチラシとしては、次のような違法なものがありました。

    積替え保管の許可しか持っていないのに、中間処理も可能とうたっている
    処理業者は再委託を自由にできるので、収集運搬業者との契約だけでOKとうたっている

どれも違法な委託契約ですが、チラシにもっともらしく書かれてしまうと、合法であるかのように見えることがありますので、タイヤユーザーの事業者は十分注意してください。

その2 タイヤ販売店が新品のタイヤと引き換えに廃タイヤを無料で引取り(下取り)

この場合は、廃タイヤは、下取りをしたタイヤ販売店の廃棄物となりますので、廃止された特例措置と同様、販売店と処理業者との契約でOKとなります。

逆に言うと、タイヤ販売店が合法的に処理業者と契約を結ぶためには、この方法を取るしかありません。

「契約を代行します」という名目でタイヤユーザーから処理費を受け取る場合は、タイヤ販売店は産業廃棄物処理業の許可を取得する必要があるからです。

タイヤ販売店が無償で下取りをする限りにおいては、処理費をユーザーから徴していない以上、産業廃棄物処理業の許可は不要となります。

その2の方が、タイヤ処理の実態に合っていると思いますが、販売店が無償で回収しなければならない点がネックと言えばネックです。

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コメント

  1. リサイクル料 より:

    処理費用を払ってお願いした古タイヤが、別の店で中古販売されています。違法ですか?

  2. 尾上雅典 より:

    委託契約の内容によっては、タイヤを転売しても一概には違法と言えませんが、タイヤの破砕を頼んだのに、すべてのタイヤが転売されているという場合は、産業廃棄物の再委託になりますので違法となります。

  3. リサイクル料 より:

    曖昧ですね~
    すべてのタイヤとなると、確認できなでしょうから・・・

    有難う御座いました。

  4. 責任と義務 より:

    タイヤ購入の際、廃タイヤの処理委託費用として料金を支払い、販売店からタイヤを引取ってもらっていました。その販売店は産廃の収集運搬・処理の許可は両方共持っていません。今後は、廃タイヤの処理は今まで通りその販売店で行ってくれるということですが、処理委託費用を廃止し、タイヤ交換工賃に処理料金を含める(処理委託料金を上乗せする)、という事を言ってきました。これは、違法になるのでしょうか?

    又、環境省HPのQ&Aにある「無償」という表現は、処分費用にさらに手数料の上乗せ収受をしないことだ、という情報をある公的機関から入手しました。この情報は正しいのでしょうか?
    正しいのであれば、代理店や販売店に、処分費に手数料を上乗せして処分を依頼しない限りは廃棄物処理法に触れない、ということでしょうか?
    処分費用の一部として適正な金額であれば、販売店に処分費用としてお金を支払い、今までと同じ方法で処分してもらう事が出来る、という事でしょうか?

    質問が多くて申し訳ありません・・。

  5. 尾上雅典 より:

    >タイヤ購入の際、廃タイヤの処理委託費用として料金を支払い、販売店からタイヤを引取ってもらっていました。その販売店は産廃の収集運搬・処理の許可は両方共持っていません。今後は、廃タイヤの処理は今まで通りその販売店で行ってくれるということですが、処理委託費用を廃止し、タイヤ交換工賃に処理料金を含める(処理委託料金を上乗せする)、という事を言ってきました。これは、違法になるのでしょうか?

    販売価格に処理料金を上乗せしたことが明白にわかる状態であれば、違法であると言えますが、
    販売店側が急に値上げをし、処理料金を上乗せしたとは外部からわからない場合は、行政機関がそれを違法とは断定できないことになります。

    でも、脱法に近い行為ですので、個人的にはまったくお奨めできない販売形態です。

    >又、環境省HPのQ&Aにある「無償」という表現は、処分費用にさらに手数料の上乗せ収受をしないことだ、という情報をある公的機関から入手しました。この情報は正しいのでしょうか?

    その通りだと思います。ただ、上記のように、販売価格の中に上乗せされてしまうと、外部からその内訳をうかがい知ることはできませんので、そこを悪用する企業が出るかもしれません。

    >正しいのであれば、代理店や販売店に、処分費に手数料を上乗せして処分を依頼しない限りは廃棄物処理法に触れない、ということでしょうか?
    処分費用の一部として適正な金額であれば、販売店に処分費用としてお金を支払い、今までと同じ方法で処分してもらう事が出来る、という事でしょうか?

    委託者が、販売価格の上乗せ分を、明確に処分費用として認識している場合は、
    無許可業者に処理委託をしているのと同様ですので、そのような方法では委託処理をできないと解釈しております。

  6. 責任と義務 より:

    御回答いただき、ありがとうございます。

    タイヤ交換時又は購入時、収集運搬の許可を持っていなくてもタイヤ販売店に無償で廃タイヤを引取ってもらう事は可能ですよね。下取りとして。

    ただ、「無償」が「処分費用にさらに手数料の上乗せ収受をしないこと」であるならば、『収集運搬業の許可を持たないタイヤ販売店よりタイヤを購入した時、下取りとして「無償で」廃タイヤを引取ってもらう事』は、『収集運搬業の許可を持たないタイヤ販売店よりタイヤを購入した時、「手数料は上乗せしないけれど処分費用を払って」廃タイヤを引き取ってもらう事』と同じ意味になるとしか解釈できません。

    これでは、今までとなんら変わるところがありません。
    どう解釈すれば良いのでしょうか?

    重ねての質問で申し訳ありません。

  7. 尾上雅典 より:

    >タイヤ交換時又は購入時、収集運搬の許可を持っていなくてもタイヤ販売店に無償で廃タイヤを引取ってもらう事は可能ですよね。下取りとして。

    そのとおりです。環境省もHP上でそれを認めています。

    >ただ、「無償」が「処分費用にさらに手数料の上乗せ収受をしないこと」であるならば、『収集運搬業の許可を持たないタイヤ販売店よりタイヤを購入した時、下取りとして「無償で」廃タイヤを引取ってもらう事』は、『収集運搬業の許可を持たないタイヤ販売店よりタイヤを購入した時、「手数料は上乗せしないけれど処分費用を払って」廃タイヤを引き取ってもらう事』と同じ意味になるとしか解釈できません。

    これでは、今までとなんら変わるところがありません。
    どう解釈すれば良いのでしょうか?

    下取り行為につきましては、タイヤの販売店よりは、電気製品を納入してもらった時に、古い電気製品を無償で回収してもらう場面を想像していただく方が良いかと思います。

    家電を回収してもらう際、処理を徴収せずにサービスとして無料で販売店に引き取ることを、環境省は下取りと言っています。

    この例をタイヤの販売にあてはめると
    タイヤを交換した際、タイヤ販売店が、「うちの方で処理しておきますから、そのまま置いて帰ってください」と、
    処理費を徴収しない場合は、無償の下取りとなります。

    しかし、「うちの方で処理しておきますから、タイヤ1本あたり500円ください」という場合は、
    無償の下取りではないので、業の許可が必要となります。

    あと、このブログの記事は、産業廃棄物となるタイヤを前提とした内容ですので、
    一般廃棄物となるタイヤ、我々が事業とは無関係に個人的に出す廃タイヤの場合は、
    従来どおり一般廃棄物の処理困難物として、タイヤ販売店が処理費を徴して
    受け取ることが可能となっています。

    ややこしいと思いますので、後日ブログの記事にする予定です。

  8. 山口雄一郎 より:

    尾上雅典 様

    大変お急がし所、恐れ入ります。
    廃タイヤの処分料について教えてください。

    環境省のHP内の、廃棄物・リサイクル対策のところに、
    ——————————————————————————
    産業廃棄物収集運搬業の許可を有しないタイヤ販売店は、廃ゴムタイヤを引き取ることはできません。
     ただし、タイヤ交換というタイヤ販売店の事業活動に伴って排出された廃ゴムタイヤや、新しい製品を販売する際に商慣習として同種の製品で使用済みのものを無償で引き取り、収集運搬する下取り行為の場合については、産業廃棄物収集運搬業の許可を有しないタイヤ販売店でも引き取ることができます。この場合において、タイヤ販売店が排出事業者(廃ゴムタイヤを排出しようとする者)になりますので、下記Q2をご参照ください。
    ——————————————————————————
    とありますが、産業廃棄物収集運搬業の許可を持ったタイヤ販売店ならば、
    廃タイヤ料金を徴収する事ができる。また逆に、産業廃棄物収集運搬業の許可を持たないタイヤ販売店は、廃タイヤ料金を徴収する事ができないと解釈してよいのでしょうか?

    どこの小さな販売店も、廃タイヤ料金を取りますが、感覚的に産業廃棄物収集運搬業の許可を持っていない所が多いように感じます。許可証の提示を頼んでも、提示義務はないと言われそうですし。

    結局、販売業者は、新品のタイヤを販売した際に、交換で発生した廃タイヤを無償で引き取る義務はないのでしょうか?

  9. 尾上雅典 より:

    山口 雄一郎 様

    コメントいただき、ありがとうございました。

    ご指摘のとおり、タイヤ交換作業に伴って無償で引き取るのではなく、タイヤ処理料金を徴収する場合は産業廃棄物処理業の許可が必要となります。

    また、法的には、タイヤ販売店に無償でタイヤを下取りする義務はありませんね。

    よろしくお願いします。

  10. マサヤマ より:

    近くにタイヤ(使用済み)が野積されています。
    大型ダンプカー等の使用済みタイヤのようです。
    まわりに囲いもなく、3~4メートル位積み上げてあり倒れそうで怖いです。
    これは、合法なのですか?

  11. 尾上雅典 より:

    放置されたタイヤが一般廃棄物由来なのか産業廃棄物由来なのかはわかりませんが、
    放っておくと火災や蚊の発生源ともなり得ますので、一般廃棄物由来なら最寄りの市町村、産業廃棄物由来なら都道府県に相談されることをお勧めします。

  12. マサヤマ より:

    ありがとうございます。
    入り口にも看板等の周辺への告知がないのでわかりませんが、それなりの役所に相談してみます。
    また、コメント致します。


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